2005年にISO/TMB(技術管理評議会)の下に設置されたISO/TMB/WG on Risk Management(リスクマネジメントに関する技術管理評議会直下の作業グループ)において、リスクマネジメント規格であるISO 31000の開発とリスクマネジメント用語規格であるISOガイド73の改正が行われ、二つの規格は、2009年11月に国際規格として発行されました。
その後、WGは解散されましたが、2010年にISO 31000実施の指針であるISO 31004の作成のため、PC262が設置されました。2012年にはTC262への昇格が決まり、作成していた規格はISO/TR 31004として2013年10月に発行されました。また、ISO 31000及びISOガイド73は、2013年に定期見直しを行いました。この見直しは当初、現行規格の技術的内容は変更しない“Limited Revision”としていましたが、2015年に規格原案に対する各国コメントを考慮して、全面改訂を行う“Full Technical Revision”にすることが投票で可決されました。
最近のトピックス(2022年5月)
-
ISO 31073(リスクマネジメント用語集)が2022年2月に発行されました。なお、このISO 31073は2段階改定を行うことになっており、第1段階ではISO 31000に関する用語を収録し、第2段階で、ISO/TC262から発行されている他の用語の定義を収録する予定にしています。
ISO31073とISOガイド73との差異は、ISO 31073はISO/TC 262で作成されている規格に関する用語と定義を掲載しています。一方、ISOガイド73はISO/TMBが管理することとなり、ISOで作成される規格におけるリスク及びリスクマネジメント関連用語を定義するものです。 - 上述のように、ISOでは、ISO及びIECで開発発行された”リスク“及び”リスク関連用語“の定義概念の調整を行うために、ISO及びIECにおいて、“リスク”に関する各専門委員会の代表者から構成される“リスク及びリスク関連用語の概念に関するジョイントタスクフォース(JTF)”を設置しました。このJTFでは、リスクとその関連概念の定義、使用、解釈の違いに対する解決策などを検討します。
1. ISO 31000の改訂経緯
年月 | 経緯 |
---|---|
2020年11月 | 次期ISO31000検討グループを設置。 |
2018年2月 | ISO 31000発行 |
2017年10月 | ISO/FDIS 31000回付 |
2017年2月 | ISO/DIS 31000回付 |
2016年6月 | ISO/CD 31000を投票のため回付 |
2015年7月 | ISO 31000のDesign Specification(Full Technical Revisionの仕様書)を作成 |
2015年6月 | “Limited Revision”を“Full Technical Revision”に変更することを決定 |
2013年9月 | 定期見直しを行い、その結果を会議で議論した結果、“ Limited Revision"の実施を決定 |
2009年11月 | ISO 31000発行 |
2009年5月~7月 | 2ヶ月間、FDISに対する投票とコメント募集 |
2008年11月 | 第6回会議(シンガポール): DISに対するコメント審議し、最終国際規格案(以下FDIS)として投票とコメントを求めることを決定 |
2007年12月 | 第5回会議(中国): CDに対するコメントを審議し、国際規格案(以下DIS)として投票とコメントを求めることを決定 |
2007年6月 | 委員会原案(以下、CDという)作成及びCDに対するコメントの募集及び投票のためにWGメンバーへCD回付 |
2007年4月 | 第4回会議開催(オタワ): 第3次作業文書審議。規格番号が「25700」から「31000」に変更された。マネジメントシステムの要素が取り入れられた。 |
2006年10月 | 第3次作業文書作成及びWGメンバーへ回付 |
2006年9月 | 第3回会議開催(ウイーン): 第2次作業文書審議 |
2006年6月 | 第2次作業文書作成及びWGメンバーへ回付 |
2006年2月 | 第2回会議開催(シドニー): 第1次作業文書審議 |
2005年12月 | 第1次作業文書作成及びWGメンバーへ回付 |
2005年9月 | 第1回会議開催(東京): 第1次素案の審議 |
2005年6月 | リスクマネジメントの規格化がISO/TMBで承認され(米国とドイツは反対)、ISO 25700の開発を行うためにISO/TMB/WG on Risk Managementが設置された。〔議長: 豪州、事務局: 日本(JISC/JSA)〕 |
2005年1月 | 日本と豪州から、リスクマネジメントの規格化をISO/TMBに新規作業項目(NWIP)として提案した。 |
2004年6月 | 豪州/ニュージーランドが、迅速法(ファーストトラック)によって、自国の規格であるAS/NZS 4360(リスクマネジメント)の国際規格化提案を行った。しかし、各国にあるリスクマネジメントに関する幾つかの規格を整理し、その共通プロセス要素を整理して規格の骨格とすることが望ましいという理由でISO/TMB(技術管理評議会)において却下された。 |
2. ISOガイド73の改訂経緯
年月 | 経緯 |
---|---|
2022年2月 | ISO 31073発行 |
2021年10月 |
ISO/DIS 31050を投票のために回付。 投票結果:可決 |
2021年5月 |
ISO/DIS 31073を投票のために回付。 投票結果:可決 |
2020年11月 | ISO31073のCDスキップを承認 |
2020年10月 | ISO31073に関して2段階のプロセスを経ることを提案。 第1段階:現行のISO ガイド73をレビューし、ISO 31000:2018とは矛盾する用語を削除し、DISから始める(新規用語は追加しない)。 第2段階:第1段階でISO 31073発行後に、全体見直しを行い、ISO 31073:20XXの改定を行う。 |
2020年9月 | ISO 31073を開発するためのWG8を設置 |
2019年9月 | リスクマネジメント用語規格(ISO 31073)の新業務項目提案を回付(投票の結果可決・承認) |
2019年6月 | 提案されたISO 31073を、ISO 31073(リスクマネジメント用語)と、ISO 31070(リスクマネジメントのコアコンセプト)に分割することを提案 |
2018年9月 | ISO 31073の新規案件を回付 |
2018年8月 | 「リスクマネジメント用語規格」をISO 31073として開発することを決定 |
2014年11月 | ISO/CD ガイド73回付 |
2009年11月 | ISOガイド73発行 |
2009年5月~9月 | ドラフトISOガイド73に対する投票とコメント募集 |
2008年11月 | 第6回会議(シンガポール): CD2に対するコメントを審議し、ドラフトガイド(DISに相当)として投票とコメントを求めることを決定 なお、IEC/SMB(標準管理評議会)の決定によりIECロゴが外れISO単独ロゴとなることになった。 |
2007年12月 | 第5回会議(中国): CDに対するコメントを審議し、CD2として投票とコメントを求めることを決定 |
2007年6月 | 委員会原案(以下、CDという)作成及びCDに対するコメント募集のためにWGメンバーにCDを回付 |
2007年4月 | 第4回会議(オタワ)において第1次作業文書審議 |
2006年10月 | 第1次作業文書作成及びWGメンバーへの回付 |
2006年6月 | ISO/TMB決議 ISO/TMB/WG on Risk Management がISO/IEC ガイド 73:2002の改訂作業を行うこと提案を承認する。 |
2006年2月 | 第2回会議(シドニー)において次のような議論がなされた。 ISO / IEC ガ イド 73:2002 発行以降、リスクの概念が変化しているため用語の定義を変更することが必要との意見。 事務局は、“|SO/IEC ガ イド 73:2002の順守は、NWIPにおける決定事項であり、変更提案を行うべきではない”と主張。議長から、“NWIPにとらわれず ISO/IEC ガイド 73:2002の改訂を行い、より良い定義を盛り込むべきである”との発言があった。 議長から、“ISO 25700をより良い規格にするためにも、NWIPにとらわれずISO/IEC ガイド73:2002の改訂を行い、より良い定義を盛り込むべきである”との発言があった。 ISO/IEC ガイド73:2002の改訂の是非をISO/TMBに判断してもらうこととした。 |