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withコロナにおける観光

観光業の現状
観光業は、様々な分野の産業の発展に貢献しています。
旅行者が観光地を訪れることで、宿泊施設だけでなく、その地域の土産物店や飲食店、観光施設、交通機関等も活用されることから、観光業が地域経済の活性化や文化保護等において、重要なカギとなることは明確です。

しかし新型コロナウイルス感染症(以降、COVID-19)の感染拡大によって、観光業は深刻な打撃を受けています。

国土交通省の「旅行・観光消費動向調査 2021年1-3月期(速報)」(*1)によると、日本人国内旅行消費額は1兆6458億円(前年同期比50.1%減)となっています。また訪日外国人消費動向は、2020年1-3月期では7071億円(前年同期比61.4%減)となっており、それ以降の調査は行われておらず、2020年4月以降の訪日外国人による消費額は実質0円であることが示唆されます。また帝国データバンクの「宿泊業者の倒産動向調査 (2020年度)」(*2)によると、2020年度の宿泊業者の倒産件数は125件(前年度比66.7%増)となっており、そのうち新型コロナウイルスの影響による倒産は72件(全体の57.6%)に上りました。

COVID-19の収束は2022年以降になると予測される(*3)現状において、観光業界にはCOVID-19と共存しつつ、旅行客に対して安全な旅行を提供することが求められています。

(*1) 国土交通省 観光庁、「旅行・観光消費動向調査 2021年1-3月期(速報)」、
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000445.html(2021年6月30日参照)
(*2) 帝国データバンク、「宿泊業者の倒産動向調査 (2020年度)」、
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210405.pdf(2021年6月30日参照)
(*3) 株式会社メンタルヘルステクノロジーズ(所在地:東京都港区、代表取締役:刀禰真之介、https://mh-tec.co.jp/、以下メンタルヘルステクノロジーズ)による医師1,394人を対象とした新型コロナウイルスの収束時期に関する調査(2021年7月30日参照)


安心・安全な観光を提供するためのガイドライン
我が国においては、感染拡大予防と社会経済活動の両立を図るため、専門家の意見を参考に、業種ごとにガイドラインを作成しており、観光分野では、宿泊業界及び旅行業界において、2020年5月14日付けでガイドラインが作成・公表されました(*4)。また、観光関連事業者によって、旅行者視点での感染防止のための留意点をまとめたガイドラインとして「新しい旅のエチケット」が示されています(*5)。

このような取組みは、世界各地で行われています。
こうした中、どの国でも共通して使用できるガイドラインとしてISO/PAS 5643「観光及び関連サービス−観光業界におけるCovid−19の蔓延を減らすための要求事項及び指針」が、ISO(国際標準化機構)によって開発されました。

ISO/PAS 5643は、ISOの専門委員会の一つであるISO/TC 228(観光及び関連サービス)において開発された公開仕様書(PAS)です。このPASは、スペインからの提案によって、世界各国で作成されているCOVID-19の感染拡大リスクを低減するための取組みを統一化し、感染拡大の危険性が高い期間中に考慮すべき最低限の要求事項と推奨事項を各国に提供することを目的として作成されました。

このPASを、世界各国の観光業界が迅速かつ慎重に活用することで、同業界関連の従業者の健康を守り、観光客や住民に対して、より安心・安全な観光サービスや商品を提供することが可能となり、最終的には観光業界の信頼を回復することに繋がります。

(*4) 国土交通省 観光庁、「新型コロナウイルス感染症関連情報」、
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page01_000624.html(2021年6月30日参照)
(*5) 国土交通省 観光庁、「旅行者向け『新しい旅のエチケット』について」、
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000332.html(2021年6月30日参照)



観光業界の信頼を取り戻すISO/PAS 5643とは

ISO/PAS 5643の適用対象
このPASでは、全ての観光関連業界がより安全なサービスを確保し、ウイルスの蔓延を防止するため、規格を適用できる対象(適用範囲)が幅広く設定されており、具体的には、以下の20の観光産業を含む観光バリューチェーン全体に適用することが可能です。

①宿泊施設、②アドベンチャーツーリズム及びエコツーリズム、③ビーチ、④ケータリングサービス、⑤ゴルフサービス、⑥医療及び健康スパ、⑦MICE (会議,研修,学会,イベント用)観光、⑧美術館、博物館及び遺産、⑨自然保護区域(NPAs)、⑩ナイトレジャー、⑪スキューバダイビング、⑫スキー場、⑬テーマパーク及びレジャーパーク、⑭観光輸送、⑮観光ガイド、⑯観光客の訪問、⑰観光案内所、⑱旅行代理店、⑲独自の公的スペース、⑳ヨットハーバー及び海洋アクティビティ

ISO/PAS 5643の概要
このPASは、規模を問わず全ての観光関連事業者が適応できるよう観光組織に対して、次のようなことを規定しています(一部抜粋)。
従業員や観光客、観光地の住民等、観光に関わる全ての人の健康と安全を守るため、自分たちにできることをこの規格から見つけ、ご活用いただければ幸いです。

【COVID-19のリスクマネジメントに関する要求事項(箇条4)】
ここでは、COVID-19への感染に関するリスクマネジメントを行い、リスクを最小限に抑えるための対策に体系的に取組むことを求めています。具体的には、リスクマネジメントグループの設置、リスクアセスメント(リスクの特定、分析等)の実施、緊急時対応計画の策定等について規定しています。また、以下に示すような、観光関連事業者に共通する一般的な対策や、従業員が取るべき対策等についても規定しています。

従業員や顧客への情報提供 訪問者に対してCOVID-19に適合する症状がある場合、又は過去14日間に感染者と濃厚接触した場合は、施設への入場やサービスの利用を控えることを観光組織は訪問者に伝えなければならない。
清掃・消毒について 接触の特に多い部分(ドアノブやエレベータ等)の清掃、拭き取り、消毒の頻度を増やす。また用いる消毒剤や洗浄剤は、海岸や自然保護区域等を考慮し、可能な限り環境に優しいものでなければならない。
利用者の安全容量 ビーチ等、施設やサービスにおいて安全性を保つことができる人の最大容量及びアクティビティやサービスが行われるスペースの推定を行わなければならない。

【観光サブセクターごとの特定の要求事項(箇条5)】
ここでは、20の観光サブセクターに焦点を当て、それぞれの観光サブセクターの特定の要求事項について規定しています。
例えば、宿泊施設の場合、受付及びチェックインサービス・客室・ホリデーパーク及びキャンプ場・ホステル・ホテル・共用エリア・清掃及び消毒といったそれぞれの項目ごとに、観光関連事業者が実施すべき事項が書かれています。
その他、アドベンチャーツーリズムやゴルフ等のアクティビティにおいては、開始前、途中、終了後、各タイミングでの感染リスクを低減するための対策を行うことを要求事項としています。また自然保護地区(NPA)を管理する組織が適用すべきガイドラインと勧告も定めています。

【全てのサブセクターに対する補助的なサービス及び施設に関する要求事項(箇条6)】
ここでは、共用トイレやジム、プール、ショッピングエリア等8つのサービス及び施設に関する規定が記載されています。どのサービス・施設においても、共通して行わなければならないのは、利用者が安全な距離を保てるような対策や、定期的な清掃、消毒、換気です。
その他、共用トイレでは、ペーパータオルやハンドドライヤ、手指消毒剤、石けん等を用意することや、ごみ箱は非手動のものを置くこと等を規定しています。ジムでは、グループレッスンがある場合は、指導者との距離を保つことや、なるべく屋外で実施することを推奨しており、子供の遊び場やショッピングエリアでは取り扱うアイテム(玩具やゲーム、商品等)は定期的に消毒するよう指示しています。

ISO/PAS 5643:2021(原文)のご購入はこちらから


ISO/PAS 5643の活用事例 “European Tourism COVID-19 Safety Seal”
欧州では、欧州の旅行及びホスピタリティ分野における健康・安全対策の改善と調和を目的として“European Tourism COVID-19 Safety Seal”が発表されました。


European Tourism COVID-19 Safety Seal

“European Tourism COVID-19 Safety Seal”は、欧州標準化委員会(CEN)によって作成されたCWA 5643(CEN Workshop Agreement)を満たしていることが管轄当局によって確認された欧州の観光関連事業者が表示することができるラベルです。
CWA 5643は、ヨーロッパの国々の現在の健康と安全のプロトコルに密接に対応しています。(*6)

CWA 5643は2つのパートで構成されており、その第1部(CWA 5643-1)にはISOと協力して、ISO/PAS 5643が採用されており、安全に事業を再開・運営したいと考える観光団体に対する要求事項と推奨事項が記載されています。第2部(CWA 5643-2)では、COVID-19に対する欧州の観光施設やサービスにおける、健康と安全のためのビジュアル・アイデンティティとして“European Tourism COVID-19 Safety Seal”を規定し、これの使用に関する要求事項と指針について記載されています。

(*6) euronews.next, “What you need to know about the New European Tourism Covid-19 Safety Seal”, https://www.euronews.com/next/2021/07/16/what-you-need-to-know-about-the-new-european-tourism-covid-19-safety-seal(2021年7月30日参照)
(*7) European Commission,“New European Tourism Covid-19 Safety Seal available”,https://ec.europa.eu/growth/content/new-european-tourism-covid-19-safety-seal-available_en(2021年7月30日参照)
(*8) European Committee for Standardization,” CEN published the new European Tourism Covid-19 Safety Seal”,https://www.cen.eu/news/brief-news/Pages/NEWS-2021-015.aspx(2021年7月30日参照)



関連情報

ISO発行記事「TOURISM IN A COVID-19 WORLD(コロナ禍の観光業)」
関連規格

その他、観光に関する規格はこちらから

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