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ニューノーマル × ESG

ESGとはESGに関連する標準化の歴史
ESG関連の注目規格の動向ISOにおけるその他の環境関連の取組み

ESGとは

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。環境や人権といった世界的な社会課題が顕在する中で、企業は目先の利益や財務価値だけでなく、長期的に環境保全や社会倫理、適切な企業統治に配慮した取り組みを行っているかということが重視されるようになってきており、国連持続可能な開発目標(SDGs)と併せて注目されています。ESG投資と言われるように、投資家からも、企業がこれらのESGの観点を配慮し積極的に取り組むことが企業の長期的成長を支え経営基盤の強化につながると考えられており、いわゆる非財務情報として企業価値の重要な判断基準となっています。
ESGのそれぞれの課題には、主に次のようなこと*があります。


*UNPRI Webサイト(https://www.unpri.org/an-introduction-to-responsible-investment/what-is-responsible-investment/4780.article)参照

ESGに関連する標準化の歴史

ISOでは、1996年に初版が発行されたISO 14001(環境マネジメントシステム)をはじめとして、環境問題を含む様々な社会課題に対応すべく幅広い分野の規格開発が行われてきました。近年、ESGに関連する標準化も活発で、TC207(環境マネジメント)を中心にグリーン/サステイナブルファイナンスに関する規格開発や、新たなTCの設置も行われており、組織のESGへの取組みに役立つ規格が多数発行されています。
以下に、ISOにおける環境及びESG関連の標準化の動向をまとめました。

欧州/世界
の動向
ISOの動向
TC設置(ESGとの関係) 規格開発
1947 ・ISO TC34(食品)(E、S)
1971 ・ISO TC147(水質)(E)
1972 ・ISO TC68(金融サービス)(G)
1992 ・リオ宣言
1993 ・生物多様性条約 ・ISO TC207 (環境管理)(E)
1996 ISO 14001(環境MS)発行⇒2004年、2015年改訂
2006 ・責任投資原則(PRI) ISO 14064(温室効果ガス)発行⇒2018~2019年改訂
2010 ・愛知目標 ・ISO TC251(アセットマネジメント)(G) ISO 26000(社会的責任)発行
・ISO 14001全面改訂スタート
2011 ・ISO TC260(ヒューマンリソースマネジメント)(S、G)
・ISO TC262(リスクマネジメント)(G)
・ISO TC265(CO2回収・輸送・ 地中貯留)(E)
ISO 14006(エコデザイン)発行⇒2020年改訂
ISO 50001(エネルギーマネジメント)発行⇒2018年改訂
2012 ・ISO TC268(スマートシティ)(E)
2013 ・ISO TC282(水の再利用)(E)
・ISO TC283(労働安全衛生マネジメント)(S)
ISO/TS 14067(カーボンフットプリント)発行⇒2018年にIS化
2014 ・ISO TC292(セキュリティ及びレジリエンス)(G) ISO 14046(ウォーターフットプリント)発行
2015 ・国連「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
・「パリ協定」
・EU “Circular Economy Package”採択
・GRIFがPRIに署名
ISO 14001改訂版発行
2016 ・ISO TC301(エネルギーマネジメント及び省エネルギー量)(E)
・ISO TC308(加工・流通過程の品質管理)(S)
・ISO TC309(組織のガバナンス)(G)
2017 ・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)最終報告 ・ISO TC314(高齢社会)(S) ISO 14097(気候変動ファイナンス)提案 ⇒2021年発行
ISO 14030シリーズ(グリーンボンド)提案 ⇒2021年発行(1、2、4部)
2018 ・EU サステイナブルファイナンス行動計画
・「持続可能な投資を促進するための枠組み確立に係る規則案(タクソノミー規則案)」を提出
・G7で「海洋プラスチック憲章」を採択
・欧州プラスチック戦略
・ISO TC322 (サステイナブルファイナンス )(E、S、G)
・ISO TC323 (サーキュラーエコノミー)(E、S、G)
・ISO 14100(グリーンファイナンス)提案⇒2022年発行予定
ISO 22000発行(食品安全MS)
2019 ・「欧州グリーン・ディール」 ・ISO TC324 (シェアリングエコノミー) (E、S) ・海洋生分解性プラスチック(海プラ)に関するISO提案(日本)
2020 ・EU 「新循環型経済行動計画」
・Major Circular Economy Networks In Europe
・ECOS: STANDARDS IN THE TIME OF THE EUROPEAN GREEN DEAL
・Farm to fork strategy
・EU Biodiversity Strategy for 2030
・ISO TC331 (生物多様性)(E) ISO 22766発行(海プラの崩壊度の測定)
ISO 22403発行(海プラの生分解性の評価)
2021 ・COP26開催 ・ISO TC315(コールドチェーン物流)(E) ISO 30415発行(ヒューマンリソースマネジメント-多様性及び包括性)
ISO 37000発行(組織のガバナンス-ガイダンス)

ESG関連の注目規格の動向

●ISO 14064(温室効果ガス)シリーズ【E(環境)】
大気中の温室効果ガス(GHG)削減に向けた取組の基礎となる規格として、ISO 14064シリーズが開発されています。
この規格は、GHG排出量のモニタリング(算定)、報告、検証等について規定した国際規格で、2018年及び2019年に近年の状況を反映した形で大幅に改訂され、現在JIS化に向けた活動を進めています。
この規格を活用することで、組織の気候変動と持続可能性への取組みの証明に役立てることができます。

●ISO 14030(グリーンボンド)シリーズ【E(環境)】
グリーン債務商品の規格としてISO 14030シリーズの開発が進められており、すでにISO 14030-1(グリーンボンド)、14030-2(グリーンローン)、14030-4(検証)の3規格が2021年9月に発行されています。
これらの規格はグリーンボンドを発行し、グリーンローンを組成するための国際的に合意されたロードマップを提供するものであり、この規格を活用することで、グリーン債務商品に透明性と信頼性を付与することが期待されます。

●サステイナブルファイナンス(ISO/TC 322)【E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)】
ISO/TC 322では、英国と中国が中心となり、サステイナブルファイナンスの規格を開発しています。
この規格によって、環境、社会、ガバナンスの慣行を含む持続可能性の考慮事項を、経済活動のファイナンス(資金供給・調達)に統合し、サステイナブルな組織やプロジェクトへのお金の流れを促進することを目指しています。
2021年8月に用語に関する文書であるISO/TR 32220が発行され、他にもフレームワークの規格を開発中です。

●サーキュラーエコノミー:循環型経済(ISO/TC 323)【E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)】
ISO/TC 323では、循環型経済の組織活動の原則、フレームワーク、実際的なガイダンス、支援ツール等の国際規格開発を進めています。SDGsへの貢献の最大化を目指し、地域や規模等を限らないすべての組織の包含や、経済・社会・環境の各側面(例:経済成長、社会全体の関与、エコデザイン等)を考慮しています。
生産→消費→廃棄の直線型の経済システムから、資源・製品等を循環させる新たな経済システムへの移行の取組みへ、規格の活用が期待されます。

●生物多様性(ISO/TC 331)【E(環境)】
ISO/TC 331は2020年に新たに設置されたTCです。生物多様性の分野において、関連するすべての組織のための全体的かつグローバルなアプローチでの、原則、フレームワーク、要件、ガイダンス及び支援ツール等の国際規格開発に着手していくところです。共通的な概念を定義する用語規格からの開発が予定されています。
将来的に開発される種々の規格を活用することで、すべての組織が、各々の立場から、生物多様性の保全等に寄与することが期待されます。

●ヒューマンリソースマネジメント(ISO/TC 260)【S(社会)、G(ガバナンス)】
近年、投資家は企業の人的投資に興味を示しており、情報開示が進みつつあります。米国では昨年、証券取引委員会が上場企業に対し人的資本の情報開示を義務付けました。
開示の推奨基準は4つあり、その一つがISO/TC 260(ヒューマンリソースマネジメント)で開発されたISO 30414「ヒューマンリソースマネジメント-内部及び外部人的資本報告の指針」です。
ISO 30414は、人的資本に関する報告の指針を提供するもので、多様性、生産性、サクセッションプランなどの12の領域における基準を示しており、対象は大企業、中小企業と企業規模を問いません。日本でもESG投資の高まりと共にこの規格への注目度が高まっています。

●組織のガバナンス(ISO/TC 309)【G(ガバナンス)】
ESGやSDGsの取組みにおいて、各組織におけるガバナンスの重要性は、国内外の組織で認知されている事項です。ISO 26000(社会的責任)においても、SR(社会的責任)の7つの中核事項としてガバナンスが位置付けられ、ガバナンスの重要性はますます高まっています。
組織が、その目標を達成するためには、その組織の全体的な方向性及び意思決定、監視機能、アカウンタビリティが重要であり、これらにおいて重要な役割を果たすのが各組織のガバナンスボディ(日本では取締役会)です。同様に、組織がESG及びSDGsの課題に取り組み、その目標を達成するためには、組織のガバナンスが重要な役割を果たします。
ISO/TC 309では、組織がより良いガバナンスを実践し、その目標を達成するために、組織及びガバナンスボディはどうあるべきかに関しての各種ベストプラクティスを基に標準化を進めており、2021年9月にはISO 37000(組織のガバナンスの指針)を発行しました。ISO 37000は、組織のガバナスの構築実践に関わる取組み、原則を規定した規格で、組織の規模、活動、業種などに関わらず適用されることを意図しています。また、組織におけるガバナンス体制を構築又は見直すときには、既存のガバナンスコードのほか、この規格をも参照して、効果的なガバンス体制を構築・運営し、組織のパフォーマンスの向上に役立てることが期待されます。
なお、ISO/TC 309では、ガバナンス自体の標準化だけでなく、ISO 37001(反贈収賄マネジメントシステム)、ISO 37301(コンプライアンスマネジメントシステム)などの規格も開発・発行しています。組織におけるコンプライアンスは、適切なガバナスの実施の結果と言ってもよいでしょう。

●加工流通過程の品質管理(ISO/TC 308)【G(ガバナンス)】
ISO/TC 308では、製品において、材料から製造販売までの流通加工の過程(サプライチェーン)で、要求された特性が維持管理されていることを保証する仕組みの標準化に取り組んでいます。既に一部の材料や製品に対する加工流通過程の品質管理に関する基準や認証のためのスキーム(仕組み)が存在し、材料や製品に対する認証が与えられていますが、これらの基準や認証のためのスキームを使用することによって、サステイナブルな製品・材料の購入・消費が拡大・安定化し、材料などの生産地における雇用の確保、賃金の安定化も図られ、生活の向上にも繋がります。
一方、これらの基準やスキームでは、用いられている用語の定義や加工流通過程の品質管理モデルは、必ずしも一貫性・整合性がないがために、市場やサプライチェーンを構成する組織において混乱や負担が生じるという問題がありました。そこで、これらのスキームで用いられている用語・定義及び使用されるモデルを標準化することによって、市場及びサプライチェーンを構成する組織の混乱・負担を軽減する目的で作成されたのが、ISO 22095(Chain of custody — General terminology and models:加工流通過程の品質管理-一般的用語及びモデル)です。SDGsの達成,ESGの実施というニーズに基づき、消費者が購入する製品のサスティナビリティを保証し、消費者の信頼性をより高めるという効果も期待されます。また、今後、既存の加工流通過程の品質管理のスキームに用いられる基準を改定する際に、ISO 22095を採用することで、用語やモデルの整合性を図ることをも意図しています。

>ISO/TC 308の活動の詳細はこちら

ISOにおけるその他の環境関連の取組み

・ISOロンドン宣言(ISO London Declaration)
2021年9月のISOウィークにおいて、ISOは、気候変動の課題の支援におけるISOのコミットメントを定めた「ロンドン宣言(London Declaration)」を採択しました。詳細は、こちら(ISOホームページ:英文)をご覧ください。

・2021年11月に開催されたCOP26で、ISO/TC 207で開発している気候変動に関する規格の活用について、プレゼンテーションが行われました。詳細はこちら(UNFCCウェブサイト:英文)をご覧ください。

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