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ニューノーマル×防災

防災ISOとは国際標準化動向関連情報SDGsへの貢献

防災ISOとは

 「防災ISO」とは、「コミュニティインフラを活用した防災」を国際標準化する活動です。この防災の標準化では、先進国及び発展途上国の異なる状況、現インフラの補強及び新インフラの導入、一つの地域及び複数の連携した地域、を考慮して、コミュニティインフラの活用による防災の基本枠組み、及び関連する個別の防災技術・サービスを検討しています。
 最近は「持続可能性」という言葉が当たり前に聞かれるようになりました。持続可能性は私たちの生活において重要なキーワードであり、現在、世界の様々な地域で都市開発が行われる中、ICT等のインフラの先進技術を活用して、より安全で健康的な暮らしを支える持続可能な都市「スマートシティ」が注目されています。都市開発において持続可能性を考慮して先進技術の活用を考えるとき、平常時の安全性や利便性と同時に、災害時の電気・水・交通・通信・廃棄物処理等の必須サービスの維持継続を図り、住民への被害発生を最小限に抑えることを考慮に入れることが重要です。
 また、2015年に開催された第3回国連防災世界会議の成果文書として採択された「仙台防災枠組2015-2030」では、国家、地域機関、国際機関、その他関係のあるステークホルダーの取組みの指針として、次の4つの優先行動が挙げられており、これらの行動を具体的に推進することも重要です。
1. 災害リスクの理解
2. 災害リスク管理のためのリスクガバナンスの強化
3. レジリエンス向上のための災害リスク削減への投資
4. 効果的な応急対応のための災害への備えの強化と、復旧・再建・復興におけるより良い復興(Build Back Better)
 このような状況を踏まえ、インフラ投資や備蓄、防災訓練などを通じてコミュニティのレジリエンス強化を図ろうとする自治体やインフラサービス提供者などを支援するため、コミュニティインフラを活用した防災の基本枠組みを示した、防災に役立つインフラの原則と基本要件を国際標準化する動きが進んでいます。更に、その枠組みを支援する我が国の各種の防災技術・サービスの国際標準化を目指す取り組みも進んでいます。
 地震や台風などの災害の経験の多い日本主導で、「コミュニティインフラを活用した防災」「関連する個別の防災技術・サービス」を国際標準化することによって、世界に日本の防災の経験や知識を共有し、世界のあらゆるコミュニティの防災・減災力を高めることに貢献します。

国際標準化動向

●防災に役立つコミュニティインフラの技術報告
ISO/TR 6030 Smart community infrastructures – Disaster risk reduction – Survey results and gap analysis
注記 ISO/DTRは2022年3月時点では、TR原案(DTR)が承認されて、発行に向けた準備の段階です。

 ISO/TR 6030は、「コミュニティインフラを活用した防災」の観点から、防災に役立つコミュニティインフラに関する文献調査と分析、世界の各地域で防災のために活用されているコミュニティインフラの事例調査を行い、文献や事例に現れた災害の種類、防災に活用されているインフラの種類、活用の対象分野や機能をまとめた技術報告書です。ISO/TR 6030の目次と概要を以下に示します。

目次 概要
1.適用範囲 ・防災を強化する既存のコミュニティインフラを特定し、事例の目的、対象範囲のギャップ、標準化の必要性を明確化する
・防災に役立つコミュニティインフラの標準化の基礎となることを意図する
2.引用規格 引用規格はなし
3.用語及び定義 コミュニティ、コミュニティインフラ、重要なインフラ、災害、ハザード、レジリエンス、スマートコミュニティインフラ、都市のレジリエンスを定義
4.防災の基本的考え方及び目的 防災に役立つスマートコミュニティインフラの成功実例を特定する調査の指針となる仙台防災枠組に記載の主要テーマ20項目
5.防災に関連する既存の実践と文書 ・関連の文書検索結果、事例調査の設計及び調査結果のまとめ
・インフラの目的と関連するSDG、ISO 37123の指標、既存のISO規格等
・インフラの解決策について災害の種類と災害段階別の整理
6.ギャップの分析 ・インフラの目的及びインフラの機能を扱うISO委員会及びWG
・ハザードの種類及びインフラで提供される防災機能に関連するISO委員会、既存の規格、調査結果
・インフラの種類及びインフラで提供される防災機能に関連するISO委員会、既存の規格、調査結果
・標準化機関による対処の可能性のある分野の特定
附属書A 防災のためのコミュニティインフラの50の例

 ISO/TR 6030によって、防災のためのコミュニティインフラの事例が整理され、特定された標準化の可能性のある分野について、ニーズや期待を検討することで、今後、防災のためのコミュニティインフラの規格テーマを検討するための基礎となることが期待されます。

●地震計の標準化
ISO 37174 Smart community infrastructures — Disaster risk reduction— Guidelines for implementing seismometer systems
注記 ISO 37174は2022年3月時点では、作業原案(WD)の段階です。

 地震発生国では、目的に応じた適切な地震計を設置し、得られたデータを有効に活用することで、地震による被害を軽減しています。このデータは、土地の利用管理、建物の構造設計、緊急時の対応、避難のガイダンス、組織の対応、回復、事業再開のための事業継続計画の作成にも利用できます。
 一方で、世界では、知識の体系的な共有が不足しているため、地震計システムの有効性について世界的に認識が低いという実態があります。特に、アジアや中南米など、地震のリスクが高い新興国や発展途上国では急速な都市開発が行われていますが、知識が不足しているため、地震計システムが十分に活用されていません。
 そこで、様々なレベルの政府、都市計画立案者、開発者、新興国及び発展途上国のコミュニティの運営者などの関係者が、都市の開発投資を最適化するのを助けるために、地震計システムの開発や導入、維持管理のためのガイドラインとなる規格を開発しています。
 この文書では、ISO/TR 6030に記載されているコミュニティインフラの一部として、地震による災害リスクを軽減するための地震計システムの目的の分類及び目的を満たすための地震計システムの仕様について規定しており、2023年の発行を目指して開発が行われています。

>ISO/TC 268/SC 1(スマート都市インフラ)のその他情報はこちら

●リスクファイナンスの標準化
 「仙台防災枠組2015-2030」において、"レジリエンス向上のための災害リスク削減への投資"が優先行動の一つに挙げられています。しかしながら、日本も含め世界各国では、市場機能を活用した予防投資が普及しておらず、また、災害に関するファイナンスは罹災後の損失補填が主となっている現状があります。
 このため、"レジリエンス向上のための災害リスク削減への投資"の仕組みの社会的な実装に向けて、防災関連の予防投資、事後補償、復興のためのリスクファイナンスを定義し、金融機関をはじめとする有事における資金供給者に対して、リスクファイナンスにおける必要な原則、フレームワーク等を開発し、それらを国際標準化することを目指しています。
 現在、国際標準化に向けての活動を進めており、防災、金融及び国際標準の専門家を中心に民間企業、保険会社、国際組織、中央省庁等からご参加いただいています。検討委員会の事務局は株式会社日本経済研究所にご担当いただき、災害リスク削減に向けた投資を促進させるためのリスクファイナンスのあるべき姿について様々な視点から情報や課題の共有と議論を行い、国際標準の骨子案等を検討しました。引き続きISOへの提案を目指しての活動を進めていく予定です。

関連情報

標準化 知ってもらい隊 エピソード1 地震計の標準化
標準化について、多くの方に知っていただくために、YouTube企画「標準化 知ってもらい隊」を実施しています。エピソード1のテーマは「地震計の標準化」です。
地震計を国際標準化する意義を紹介しています。

標準化 知ってもらい隊 エピソード5 災害食の標準化
YouTube企画「標準化 知ってもらい隊」のエピソード5は「災害食の標準化」です。
災害時に栄養のある美味しい食事が必要な人のもとに届くようにするため、どのような標準化をしているのか紹介します。

社団法人防災プラットフォーム ホームページ
UNDRR(国連防災機関)仙台防災枠組みウェブページ

SDGsへの貢献

防災を含むスマート都市インフラに関する標準化は、国連の持続可能な開発目標(UNSDGs)の1、3、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17に貢献しています。

  • Goal 1:貧困をなくそう
  • Goal 3: すべての人に健康と福祉を
  • Goal 6:安全な水とトイレを世界中に
  • Goal 7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • Goal 8: 働きがいも経済成長も
  • Goal 9: 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • Goal 10:人や国の不平等をなくそう
  • Goal 11:住み続けられるまちづくりを
  • Goal 12:つくる責任つかう責任
  • Goal 13:気候変動に具体的な対策を
  • Goal 14:海の豊かさをまもろう
  • Goal 15:陸の豊かさもまもろう
  • Goal 17:パートナーシップで目標を達成しよう