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第3回:ISO/PAS 45005の概要とポイント

第3回:ISO/PAS 45005の概要とポイント

イ:
先ほど、マネジメントシステムの考え方が基本にあると伺いました。具体的にPASの内容はどのようなことが規定されているのでしょうか?ポイントなど教えてください。
事:
この文書は、既にISO 45001を活用している組織が、各箇条を、計画-実行-評価-改善のPDCA(Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善))サイクルに関連付けることによって、自組織の労働安全マネジメントシステムの中で、新型コロナウイルス感染症から生じるリスクを管理するために役立つように配慮して構成されています。但し、各箇条の推奨事項を順番に実施していくのではなく、どの箇条の規定も常に実施しつつパンデミックの段階の変化に伴って、継続的に改善をできるように、PDCAサイクルを繰り返すことを意識しておく必要があります。この文書の構成と概要は、以下の表をご覧ください。
箇条番号 箇条タイトル ポイント
序文
1 適用範囲
  • 新型コロナウイルス感染症から生じるリスクを管理し、あらゆる種類の労働者の労働関連の健康、安全及びウェルビーイングを保護する方法に関する手引を提供すると記載されている。
  • この規格は、介護職や救急隊員といった、他の人と社会的距離をとることが困難な種類の仕事に従事する人も含めた労働者の保護に関して手引きを提供する。
2 引用規格
  • ISO 45001は記載されておらず、この規格のみでも利用ができるように配慮されている。
3 用語及び定義
  • 共有エリア(common area)が定義され、例として、食堂、エレベーター、会議室、トイレ、庭、倉庫などが含まれるとしている。
4 計画及びリスクの評価
  • 組織の状況、リーダーシップと労働者の参加、一般的な計画、職場、緊急事態ヘの準備及び対応、変更に対する計画などの項目を記載する。
  • 職場は、物理的な職場、自宅、介護職などが働く他人の家、配達業などのモバイル職場を考慮し、特に、感染リスクを管理する効果的な方法の一つである在宅勤務の手引きを提供する。
4.1 組織の状況の理解
4.2 リーダーシップ及び労働者の参加
4.3 一般的な計画
4.4 職場
4.5 役割
4.6 活動
4.7 緊急事態ヘの準備及び対応
4.8 規制の変更に対する計画
5 COVID-19への感染が疑わしい症例又は確認された症例
  • 新型コロナウイルスの感染が職場や自宅で確認された場合に、報告・自己隔離・仕事復帰に関するプロセス、管理職及び労働者が実施すべき事項、復帰後の労働者の支援などについて手引きを提供する。
5.1 一般
5.2 物理的な職場での病気の管理
5.3 自宅又は移動環境での働く人の病気の管理
5.4 検査、接触追跡及び隔離
6 メンタルヘルス及びウェルビーイング
  • 労働者のメンタルヘルス及びウェルビーイングに影響を与え得る新型コロナウイルス感染症による心理社会的リスク(例えば、契約や給与の不確実性、仕事量、仕事のペース、勤務時間の変動)を挙げ、組織が取り組むべき推奨事項が示される。
7 包含性
  • リスクを管理する措置が、在宅勤務希望者、障害者、ぜい弱な人など、多様な労働者のいる職場で、異なる労働者グループへ与える影響を考慮に入れるための手引きを提供する。
8 資源
  • リスクの管理に必要な資源を決め、管理者を特定し、資源のニーズに関して労働者と継続的に対話するプロセスを維持し、不可欠な活動を再開する際、人的資源、財源、消毒用剤、コミュニケーション手法、専門知識や訓練の必要性などを考慮することが推奨されている。
9 コミュニケーション
  • トップマネジメントからあらゆる階層の労働者へパンデミック時の方針や合意された働き方を示すための定期的なコミュニケーションを行うことを推奨している。
  • 労働者に対して様々な勤務形態に関する手引きを提供し、感染対策のための最新情報を周知し、メンタルヘルス及びウェルビーイングに配慮したコミュニケーションを行うことを推奨している。
9.1 一般
9.2 職場への最初の復帰のため
9.3 継続的なコミュニケーション
10 衛生
  • 職場を衛生的に保つために組織が実施すべきことを規定し、労働者に手洗いの重要性を伝え、共用エリアで手指消毒設備を利用できるようにし、共有機器の消毒をするといったプロセスの実施を推奨している。
11 個人用保護具及、マスク及びフェイスカバーの使用
  • 個人用保護具(PPE)、マスク等の取り扱い方について考慮すべき事項を示している。特別な場合として、マスクを取り外して作業する必要がある場合は社会的距離を確保し、読唇を用いる人には透明のフェイスシールドを使用することを推奨している。
12 運用
  • 職場への復帰及び職場間の移動、共用エリアの使用などの際に感染を防ぐための、頻繁な清掃、人数の制限、滞在時間の制限、社会的距離の確保などの管理策を示している。
12.1 一般
12.2 職場への最初の復帰
12.3 職場への出入り
12.4 職場内及び職場間の移動
12.5 作業区域及び仕事場
12.6 共用エリアの使用
12.7 会議及び職場への訪問
12.8 公衆と関わる仕事
12.9 仕事関連の移動
12.10 配達
13 パフォーマンス評価
  • リスクの管理策に対して監視、評価及び報告の推奨事項をまとめる。特定された課題は労働者及びその他の関係する利害関係者と共有し、労働者の感染が確認されたときは、労働関連のばく露起因か判断し、保健当局などに報告することを推奨している。
13.1 モニタリング及び評価
13.2 マネジメントレビュー、インシデント及び報告
14 改善
  • リスクの管理方法の妥当性を判断するために、監視、評価及びレビューの結果を踏まえて、管理策を改善するために考慮すべき事項をまとめる。
附属書A(参考) 安全保障上の考慮事項
  • 感染症パンデミック下で、セキュリティ管理において検討すべき考慮事項をまとめる。
附属書B(参考) アクセシビリティ及びインクルージョンの考慮事項
  • 感染症対策を実施するに当たって、アクセシビリティとインクルージョンに関する考慮事項をまとめる。


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