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SUSHIBOYSと考える、文化保存装置としての音楽・規格(後編)

SUSHIBOYSと考える、文化保存装置としての音楽・規格(後編)

2023/02/16

前編では、SUSHIBOYSの音楽と規格の類似点などについてお話しました。後編では、表現や数字について伺います。

共通のピント

S:
自分はもともと海外のアーティストがやる形(フロウ≒リズム)がカッコいいと思ってたところがあったんで、日本語をどれだけそっちに寄せられるかを、無理やりやろうとしたところもあったんですけど、最近は日本語がしっかり聞こえて更にその日本語のアクセントが上手くはまってる上でカッコいいラップって何だろうと考えています。

先ほどの話に通じるか分からないですけど、英語っぽい表現に向かうのはラップの技術の形としては面白いけど、日本語は日本の良さだから、日本を表現するにはそれじゃダメなのかもって思い始めてますね。
海外の側から見た時も面白くないんじゃないかという気もしますしね。サムライの格好してる外国人じゃないですけど、なんかそういう感じで。
J:
なるほど。海外へのリーチを考えた場合でも、海外の方が知りたいのは案外日本の日常のことだったりしますから、そういうアプローチは良さそうですね。ところで、題材の見つけ方には何か工夫などあるのでしょうか?
S:
意外となんかもう結構ノリというか、その時生活していて自分が目にしたものとかが多かったりしますし、そこから派生していくパターンもありますし。または抽象的に自分の中にある感情をみんなと同じ「共通のピント」で見れるものがあるかを探すパターンもあります。
J:
「共通のピント」っていうのはまさに標準のような感じがして興味深いです。どのような意味なのでしょうか?
S:
そうですね、自分の中ではよりナチュラルというか自然というか、「地球上にもともとあったもの」で表現すると、時代とか時間に左右されないものができるんじゃないかって思っています。空とか雲とか光とか闇とか、そういうめちゃくちゃ大きな形のものってDNAにスッと入ってくるじゃないですか。そういうものを扱えば扱うほどテーマが大きくはなるけど、全員で見れる「共通のもの」を表現できる感じがしています。
自分たちの曲で言えば、「SANAGI」とかですね。あれは「つぼみ」のことでもあって、簡単に言ったら階段の「踊り場」みたいなことも表現しています。
J:
成長の過程で誰しも経験するような、人生の踊り場という感じでもありますね。

面白さを入れる

J:
逆に、楽曲制作の中でコアとして変わらない点はあるのでしょうか?
S:
歌ってる内容はもちろんその時々だけど、「面白さ」みたいなところは意外と変わってないかもしれないですね。自分の興味を引くものっていうか。
J:
楽曲の中に「面白さ」が入るということでしょうか?
S:
そうですね。この「面白さ」っていうのは、人が聴いたときに「そこ?」みたいになる感じのポイントです。例えば「軽自動(車)」って言ったら、「なんかおかしいな」って思うじゃないですか。だけどこれはカッコいいんだよっていうことを伝えたくて。ギャップですね。
J:
実はドゥーさんも同じことを仰ってました。面白さを大事にしていると。これはものづくりをする上でも重要な要素なのではないかと感じます。「面白さが入った方が、良いものができる」というお話はよく聞きます。

多くの人に表現を

S:
自分たちはアーティストとして、表現を行っていますが、もうちょっと一般の人とかも表現することをやった方がいいんじゃないかと思います。
僕らは埼玉県の越生町の出身なんですが、周りに何も無かったら、何でも自分たちで作るしかなかったんです。
自分の生活に表現活動が取り入れられたら、より豊かになるかもしれません。
J:
そうですね。大人になるにつれて表現することをやらなくなってきますよね。子供の頃は何も考えずに出来ていたことなのですが。
S:
そうなんです。しかもやりたくなくなってくることありません?歌詞とか書くのも本当に「裸のままの、素の状態で書くのとか恥ずかしい」ってなってくる気がするんですよね。
あと、数字付けられちゃいますしね。成績とかで。それで「あ、俺やっぱそんな上手くないんだ」みたいになっちゃうとか。

数字について

J:
数字のお話が出ましたが、お二人は学生時代、美術や音楽は得意だったのでしょうか?
S:
(FARMHOUSE)全然得意じゃないですよ。サンテナはヤマハ音楽教室でピアノをやってましたけど。
(サンテナ)自分が好きで通ってたわけじゃないです。親のエゴです(笑)
J:
点数を付けるというのは、いいような悪いような難しいところがありますよね。ただ、アーティストであれば、数字は避けられない部分もあると思います。
S:
そうなんですよね。難しいとこありますね。ここから先は、点数付けみたいな形は時代に合わない可能性ありますね。でも、気になりますけどね。やっぱり作ってる側としては。それが結果的に収入に反映されちゃうから、どうしてもね。
J:
我々もビジネスとして数字を追っていく必要はあるので、よく分かります。
もちろん数字は大事ですが、そこを見過ぎない(気にし過ぎない)態度が必要なのかもしれないですね。思い切って「作りたいものを作る」という考えも必要なのでしょうか?
S:
(サンテナ)その通りだと思います。自分は中学生ぐらいの時から既にそういう考えがあって。美術の時間の話なんですが、「作りなさい」って言われたものを作れば作るほど教師からの評価、成績表の評価って高い数字になる訳ですよね。成績って数字じゃないですか。
僕は「ある題材」を描くのが凄い好きで、それに関しては本当に譲らなかったんですけど、でも指定されたものから外れることはやっぱり許されないし、教える側がそれを求めてない訳ですよね。
だから最低評価を付けられました。「何やってんだ、こんなものを描けとは言ってない。ちゃんと●●を作れ、●●を描けと言ったものをしっかりやれ」って言われて。
自分はここにすごい疑問を持ちました。それこそ芸術じゃないですか。美術って。
学校の教育みたいなところから僕は見直すべきだと思ってて。そこはやっぱり標準化しないほうがいいところだと僕は思うんですよね。

J:
そんなことがあったのですね。
S:
(サンテナ)自分が間違ってるのかなと思ったこともありましたが、やっぱり間違ってないよなと思って。本当に本気で描いてたんですよ。だからなおさらショックでした。国語とか数学とか、答えがあるものはしょうがないと思うんですけど、音楽とか美術とかで、規則で縛っちゃうっていうのはその人の可能性を無くしちゃうと思うんですよね。せっかくその人にしかない世界観があっても、それが万人には受け入れられないからという理由で潰されちゃうようなことは、本当に良くないです。
J:
作るのが好きであっても、評価として成績が1だったら落ち込みますよね。それにめげずにやっていくにはどうしたらよいでしょうか?
S:
どうですかね。今はそれこそネットが発達してて、自分が中学生の時よりも自分と感性の近い人と繋がれる時代になってると思います。
そもそも俺らもネット世代で、SNSの恩恵を受けた世代なんですよね。Skypeでサイファーとかしてましたし。ラップ始めたのもYouTubeの影響ですし。
J:
最後にお二人にとってのスタンダードについて教えてください。
S:
(サンテナ)まぁ、自然豊かなところに住んでるからっていうのもあるんですけど、車ですかね。基本どこ行くにしても、音楽聞くにしても、何するにしても自分は車(車内空間)が好ですね。最近は車にいる家にいるかのどちらかという感じです。
(FARMHOUSE)私は言うなれば「純粋なチキンナゲットになりたい、バーベキューソースの付いちゃってるチキンナゲット」です。
J:
と言いますと?
S:
(FARMHOUSE)つまりですね、私は自分の感情から生まれてきて、何か行動する時にそのままのチキンナゲットが一番いいってことを知ってるんですよ。そうなんですけど、その途中で人の目とか、評価とかをディップしちゃうんですよ。カッコつけてよく見られたいとか、こっちの方が数字が伸びるんじゃないかとか、新しいんじゃないかとか。そういう色んなものを身にまとって外の世界に出ちゃうんですよ。ありのままでいたいけど、ちょっと汚れちゃっている感じ。これが今のスタンダードになっちゃってるんです。でも俺は分かってるんですよ。そのままのチキンナゲットが一番いいってことを。だけど何かを恐れてるというか。
これからは「そのままのチキンナゲット」に向かって、その状態をスタンダードにしたいと思っています。
J:
汚れている状態、何かにディップした状態の方が逆に社会から評価されるということもありますよね。
S:
そうなんですよ。その方が行くんですよ。数字とかも。みんなからもいいって思われるし。でもやっぱり自分の中に乖離はあるんですよ。
だから作品にする時は考えて作れるところもあるのでそういうものは極力取り除いています。
一つ音を選ぶときでも一つ言葉を選ぶ時にもどこか行く時も常に考えて。まぁ、考えすぎなんですけどね。



SUSHIBOYS

埼玉県越生町に突如現れた国民の最後の希望。
映画マトリックスの世界観に衝撃を受け、2016年にグループ結成。
自身たちが作成した楽曲は国民に真実を気付かせてしまうため、再生回数が伸びないよう政府によって厳重に管理されている。
メンバーはFARMHOUSE、サンテナ、DJ兼カメラマン兼マネージャー兼運転手兼スーパーバイザーのneoyosikawaで構成される。
アヒルの形をしたゴムボートのようなものを客席に投げるLIVEに定評がある。