
シェアリングエコノミーの未来を議論!ISO国際会議がオスロで開催
2025/07/15
2025年6月17日から21日まで、ノルウェーのオスロで、シェアリングエコノミーに関する国際標準化の議論をリードする「ISO/TC 324」の第13回総会がStandards Norway(オスロ)で開催されました。日本が幹事国を務めるこの会議には、8カ国から41名が参加(オンライン参加含む)。日本からは、議長の持丸正明氏(産業技術総合研究所)をはじめとする5名が出席し、国際的な議論をリードしました。
今回の総会では、多岐にわたるテーマが議論されましたが、特に注目されたのは、日本が主導するISO 42501(デジタルプラットフォームの信頼性と安全性に関する要求事項)の改訂と、シェアリングエコノミーの影響度を測る新たな国際標準の開発です。

◆シェアリングエコノミー国際標準の「羅針盤」となる新戦略を策定
会議初日には、ISO/TC 324の運営を支えるタスクグループが開催されました。その中でも、日本規格協会 遠藤がコンビーナを務めるTG 1(戦略事業プラン)では、今後の委員会の方向性について活発なブレーンストーミングが行われました。
ノルウェーからは「シェアリングエコノミーは循環経済の一部であり、連携を強化すべき」という意見が、マレーシアからは「国家規格として採用され、実装が進んでいる」といった情報が共有されました。日本国内でもすでに認証が始まっている事例もあり、こうした世界の動向も踏まえ、今後、シェアリングエコノミー国際標準化の新たな戦略の策定を進めていきます。
◆シェアリングエコノミーの「貢献度」を数値化する新標準へ
また、AHG 2(計測及び評価)では、シェアリングエコノミーが経済や環境などに与える影響を測るための標準について議論されました。これまで、シェアリングエコノミーが環境負荷の軽減に貢献することは多くの文献で指摘されてきましたが、その影響力を統一的に計測する指標は存在しませんでした。
今回、マレーシアがこの計測のための国際標準案を提出することで合意しました。国際的に注目される重要な規格となる可能性を秘めています。
◆デジタルプラットフォームの安全性を高めるISO 42501改訂の動き
2日目には、各ワーキンググループ(WG)が開催され、渡辺健太郎氏(産業技術総合研究所)がコンビーナを務めるWG 2(プラットフォームの運用)では,日本提案のISO 42501(デジタルプラットフォームの一般的な信頼性と安全性の要件)の改訂作業が議論されました。この規格は、シェアリングエコノミーのデジタルプラットフォームを運用する際に必要な要求事項を定めていますが、2022年の制定当時と比べ、各国の規制環境は変化しています。
特に欧州では、デジタルサービス法やEU AI Actなど、プラットフォームの運用に関わる新たな規制が施行されており、ノルウェーからはEU AI Actに関する発表もありました。シェアリングエコノミープラットフォームでは、AIが活用されるケースも多いため、AI利用に関わるリスクへの注意が提言されました。今後、規格原案の修正を進め、来年にはCD段階(委員会原案段階)への移行を目指します。
◆新たな標準化テーマも続々登場
4日目の総会では、各WGからの報告に加え、中国からの「スキルシェアリング」に関する新規提案や、「短期宿泊型施設」に関する提案が予備段階に登録されるなど、新たな標準化のテーマが次々と決定しました。

次回会議は、今年の11月から12月にオンラインで開催され、来年6月から7月には対面会議が予定されています。シェアリングエコノミーが社会に浸透し、その形態も多様化する中で、国際標準化の重要性はますます高まっています。日本が引き続きリードしていくISO/TC 324の活動に、今後もご注目ください。
[ISO/TC 324国内委員会事務局]
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