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ISO/TC 69総会(成都会議)報告:統計的方法の国際標準化

ISO/TC 69総会(成都会議)報告:統計的方法の国際標準化

2025/07/07

会場の様子


◆ 開催概要

2025年6月23日から27日にかけて、中国の成都においてISO/TC 69総会が開催され、統計的方法に関する国際標準化活動が進められました。今回の会議は、専門委員会(TC)の幹事国である米国規格協会(ANSI)の主導のもと中国国家標準化管理委員会(SAC)がホストとなって開催され、日本からは4名が現地参加し、委員会活動に貢献しました。

TC 69総会は7月にオンライン開催として予定が変更されたため、成都では各分科委員会(SC)の総会および傘下の作業グループ(WG))会議、ならびにデータ科学に関するワークショップが開催されました。全体では約30名が現地参加し、例年よりもオンライン参加の比率が高い様子でした。SC6には日本、中国、ドイツ、フランスが現地参加し、その他オンライン参加を含め6カ国から最大16名が参加しました。SC 8には日本および中国が現地参加し、その他数カ国からオンラインでの参加がありました。

SC 6/WG会議の様子

◆ 主な決定事項

今回の会議では、統計的方法に関する複数の国際規格の開発・改訂が進められ、以下の主要な事項が合意されました。

測定方法および測定結果の精確さに関する規格(ISO 5725シリーズ)の進捗:
SC 6/WG 1では、ISO/DIS 5725-2(標準測定方法の併行精度および再現精度を求めるための基本的方法)およびISO/DIS 5725-5(標準測定方法の精度を求めるための代替法)のコメント審議を終え、それぞれ最終国際規格案(FDIS)投票および発行へ進めることが推奨されました。近年取り組んでいる本シリーズ全体の改訂作業は、DIS投票中であるPart 6(精確さに関する値の実用的な使い方)の改訂を残すのみとなりました 。

測定方法の検出能力に関する規格(ISO 11843シリーズ)の進捗:
SC 6/WG 5では、日本からの提案に基づくISO 11843-1(用語及び定義)およびISO 11843-6(測定値がポアソン分布に従う場合の限界値及び検出可能な最小値を正規分布近似によって求める方法)の小改訂が進み、それぞれ委員会原案の(CD)コンサルテーションおよび発行へ進めることが推奨事項として合意されました。

不確かさ評価を支援する統計的方法に関する規格の進捗:
SC 6/WG 7では、ISO/TS 17503(2因子交差設計を用いる不確かさの評価の手引)の技術仕様書(TS)から国際規格(IS)への移行、および"Use of repeatability and single laboratory precision data"について、予備業務項目(PWI)を登録しTSの開発可能性を探る方向でのドラフト素案の準備の開始を推奨事項としました。

技能試験に使用する統計的方法に関する規格(ISO 13528)の進捗:
SC 6/WG 10では、ISO 13528:2022の追補プロジェクトにおいて、投票への追補案(DAM)が準備されました。また、将来的な全面改訂の可能性についても議論が進められました。

メッシュ統計およびその適用に関する規格(ISO 24108シリーズ)の進捗:
SC 8/WG 3では、日本提案のISO/DIS 24108-1(基本原則)のコメント審議を終え、発行に進めることが推奨されました。また、ISO 24108-2(手法的側面)については、新たなPWIの登録が推奨事項として合意されました。

各SC総会での決議:
SC 6総会では、WGからの推奨事項に基づき、進行中の規格開発プロジェクトの次のステージへの進行やPWIの新規登録など、7件が決議されました。SC 8総会では、技術報告書原案(DTR)投票の実施やPWI登録など、6件が決議されました。

データ科学に関するワークショップの開催:
会議最終日には、TC 69の開発規格とAIの接点や今後の展望などをテーマにしたワークショップが開催され、SC議長からの活動紹介や中国企業の事例紹介、パネル討議などが行われました。統計学がAIにおける仮定の保証に貢献できることや、品質管理のデジタル化におけるリアルタイムデータ分析の重要性などが議論されました。

◆ まとめ

日本が幹事国を務めるSC 6およびSC 8では、日本が提案・主導するプロジェクトを中心に、国際規格の開発が順調に進んでおり、統計的手法の更なる活用に向けた新たな作業項目の計画も立てることができました。各参加国からは、日本が安定的に委員会を運営し、適切なプロジェクトマネジメントを行っていることに対して高い信頼が寄せられています。

ワークショップでのSC 8の活動紹介

[日本規格協会]


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