
ISO/TC 312(サービスエクセレンス)第12回総会及び各WG会合(バルバドス開催)レポート
2025/04/07
■開催概要
サービスエクセレンスの国際規格を開発するISOの専門委員会TC 312(サービスエクセレンス)において、第12回総会及び各WG会合が2025年2月10日~13日にバルバドスにて開催されました。
2月10日(月) | ISO/TC 312総会(開会) |
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ISO/TC 312/WG 1(原則、モデル及び計測) | |
2月11日(火) | ISO/TC 312/WG 2(エクセレントサービスの設計) |
バルバドス規格協会(BNSI)主催ワークショップ | |
2月12日(水) | ISO/TC 312/WG 4(公共サービス) |
ISO/TC 312/WG 5(デジタルサービスエクセレンス) | |
2月13日(木) | ISO/TC 312/TG 1(コミュニケーション) |
ISO/TC312総会(閉会) |
バルバドス会議スケジュール
※現地時間


■総会の進捗
今回のTC 312総会には、ドイツ、インド、キプロス、スペイン、バルバドス、ロシア、日本、中国、韓国、リエゾン代表など約20名が参加しました。
総会では、TC312参加国(英国がPメンバーからOメンバーに変更等)の進捗について報告がありました。
また、リエゾンについては、ISO/IEC JTC 1/SC 42(人工知能)が、ISO/TC 312/WG 5(デジタルアプローチ)と関連性があることから、リエゾンを組むことが提案され、承諾されました。
■WG 1(ドイツ:原則、モデル及び測定)会合の進捗
今回のWG 1会合では、ISO/TS 19387(サービスエクセレンス-成熟度モデル)のドラフトについて、議論を行いました。今後の予定について、WG 1コンビーナより、本会合の議論を基に修正したドラフトをDTSレベルにすることが提案され、合意されました。
また、2026年4月に実施予定のISO 23592:2021 (サービスエクセレンス―原則及びモデル)の定期見直しに向けて、意見交換が行われました。参加者からは、ISO 23592は他TC 312規格の原則規格であるため、今の形態を維持しつつ改訂するべきという意見が多く集まりました。その結果、今後は、ISO 23592は改訂を行う方向で、具体的な改訂方針を検討することとなりました。
■WG 2(日本:エクセレントサービスの設計)会合の進捗
WG 2では、日本主導で、エクセレントサービスの設計規格(ISO/TS 24082:2021 、サービスエクセレンス-卓越した顧客体験を実現するためのエクセレントサービスの設計)を開発しており、2021年に発行いたしました。今回のWG 2会合では、ISO/TS 24082を改訂するべく、改訂方針について議論が行われました。議論の結果、本規格はISへの変換を目指して、改訂することで合意されました。
■WG 4(キプロス:公共サービス)会合の進捗
キプロス主導で開発を進めていた、公共サービス組織のための規格、ISO 11367:2025 (サービスエクセレンス-公共サービス組織の原則とモデル)が2025年2月11日に発行されました。ISO 11367は、インドなどの日本企業が海外展開する際に関わることが多く、経済的に急成長中な国が関心を示しており、開発にも積極的に携わっていました。
WG 4会合では、ISO 11367の普及戦略について議論が行われました。その結果、キプロスよりISO 11367の実装に関するガイダンスの提案があったほか、インドよりISO 11367:2025の実装に関する評価および測定に関するガイドラインの提案があり、両提案とも開発に進めることで合意されました。
■WG 5(中国:デジタルアプローチ)会合の進捗
中国主導で開発を進めている、デジタルアプローチに関する規格(ISO/TS 19384、サービスエクセレンス-サービスエクセレンスを達成するためのデジタルアプローチ適用のガイドライン)のドラフトについて議論が行われました。今後の予定について、WG 5コンビーナより、本会合の議論を基に修正したドラフトをTCレベルでの意見照会にかけることが提案され、合意されました。またWG 5コンビーナより、デジタルアプローチにおけるサービスエクセレンスを実施している事例をまとめた技術仕様書(TR)を開発することも計画する旨の説明があり、合意されました。
■TG 1、TG 2会合の進捗
TG 1では、TC 312マイクロサイト の活用方法及び活動の情報発信方法について、議論を進めました。サービスエクセレンスに関する各国の動向を積極的に発信すべく、TG 1コンビーナより、各国エキスパートに対して情報提供依頼がありました。
■今後の予定
- 次回総会及び各WG会合は、2026年2月にドイツにて開催予定です。
■決議
決議について下記の内容が、合意された。
- 決議 111:議題案の採択
ISO/TC 312は、議題案N 328を修正することなく採択する。 - 決議 112: 起草委員会の任命
小林、St. Hill(BNSI)、Gouthier(DIN)、Düzyurt(セクレタリー)が任命。 - 決議 113: 前回会議の報告書の承認
ISO/TC 312は、N 297で提示された前回の会議の報告書を承認する。 - 決議 114: 他TCとのリエゾン設置の承認
ISO/TC 312は、ISO/IEC JTC 1/SC 42(人工知能)との内部リエゾンを確立し、その文書にアクセスすることを決議する(両委員会にリエゾンへの相互対応を要請する)。ISO/TC 312は、連絡担当官2名を指名する。 - 決議 115: WG 1レコメンデーションの承認
ISO/TC 312は、
- ISO/TS 19387を修正後にDTS投票に提出すること
- ISO 23592:2021の認証の可能性について、ISO TPMに連絡し、ISO CASCOおよび国際認定機関フォーラム(IAF)と協議すること
- 決議 116: WG 2レコメンデーションの承認
ISO/TC 312は、ISO/TS 24082:2021の定期見直し投票のコメントと投票結果を記録し、以下のことを決議する。
- ISO/TS 24082を改訂すること
- ISO/TS 24082 を ISO 技術仕様書から ISO 規格に変更すること
改訂に関する詳細は以下の通り- 目標期日:3 年
- 適用範囲は拡大しない
- コンビーナ、プロジェクトリーダー:水流聡子氏、原辰徳氏
- 持続可能な開発目標:目標3、目標8、目標9
- ISO/TS 24082のタイトルを「サービスエクセレンス — 優れた顧客体験を実現するための優れたサービスの設計」から「サービスエクセレンス — 優れた顧客体験を実現するための優れたサービスの設計 — 要求事項及び指針」に改訂する
- 決議 117: WG 4レコメンデーションの承認
ISO/TC 312は、以下のことを決議する。
- WG 4がISO 11367:2025の実施に関するガイドラインの開発を目的とした新規プロジェクト用にForm 4を作成し、その付属書にケーススタディを含める。Form 4はCYSが作成する。
- WG 4は、ISO 11367:2025の実施に関する評価および測定に関するガイドラインの策定を目的とした新規プロジェクトのForm 4を作成する。Form 4は、BISが作成する。
- これらのプロジェクトは、その重要性が同等であるため、並行して進められる。
- 決議 118: WG 5レコメンデーションの承認
ISO/TC 312は、ISO/TC 312/WG 5のレコメンデーションを承認し、ISO/TS 19384を修正後にTCレベルでのコンサルテーションに向けて提出することを決定した。 - 決議 119: 次回会議
ISO/TC 312は、第13回ISO/TC 312総会を2026年2月9日から2026年2月12日までの日程で開催することを承認する。
ISO/TC 312は、ドイツ代表団の提案を感謝とともに受け入れ、ドイツのベルリンでDINが会議を主催することに同意した。
■水流聡子氏によるコメント(ISO/TC 312国内委員会委員長、ISO/TC 312/WG 2コンビーナ)
日本が主査を務めるWG2で提案したISO/TS 24082は、本TCの初期活動時には、ISとしての開発は認められず、TSとしての規格開発となりました。その後、WG2会議での日本の関係者(エキスパート・プロジェクトリーダー・事務局)の準備・会議運営・発言・その後の対応などが評価され、本TCの中で信頼を得てきていることを感じていました。また、ISO/TR 7179、ISO/TS 19390の開発を次々とこなしてきた実績もありました。今回の総会で、ISO/TS 24082についてISとなる改訂提案を、本総会出席者に賛同していただけたことは、日本チームのこれまでの活動の重要な成果といえます。あらためて、国内審議委員会・エキスパート・事務局の皆様に、心から感謝申し上げます。
ISO/TC 312が開発した規格は、ISO 23592(基本規格)を中心として展開開発されています。企業・組織にとって、組織を変革させたいときに、参考になる有用なモデルとして使えると思われますので、まずは日本国内での活用を推進していければと考えています。
■その他
2月11日に、バルバドス規格協会(BNSI)主催で、サービスエクセレンスに関するワークショップが開催されました。本ワークショップには、ISO/TC 312エキスパートのほか、バルバドス国内のサービス関連事業者が参加しました。
バルバドスは、観光業が主要な産業であり、安全で質の高いサービスの提供が重要視されていることもあり、参加者からは、バルバドス国内でサービスエクセレンスを実装する方法に関する質問が多くありました。
内容 | 講演者 |
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挨拶 | Hadyn Rhynd氏(BNSIディレクター) |
サービスエクセレンスの概要 | Matthias Gouthier氏(ISO/TC 312議長、ドイツ) |
ISO/TS 24082:2021の概要 | 水流聡子氏(ISO/TC 312国内委員会委員長、ISO/TC 312/WG 2コンビーナ) 原辰徳氏(ISO/TS 24082プロジェクトリーダー) |
ISO/TS19384(中国提案、デジタルアプローチ)の概要 | Juaner Zheng氏(ISO/TC 312/WG 5コンビーナ) |


以上
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