
【JIS Q 15001登録組織インタビュー】株式会社 斎藤英次商店 様の取り組み
2025/06/18
2021年7月にJIS Q 15001:2017 個人情報保護マネジメントシステムの登録をされ、毎年の審査を受けつつ規格に沿った運用と継続的な改善に取り組んでいらっしゃる「株式会社斎藤英次商店」様に、個人情報保護マネジメントシステムの取り組みやその効果についてお話を伺いました。
(以下、日本規格協会→JSA 斎藤英次商店様→斎)
■インタビュー
PMS登録の動機やきっかけ
JSA:個人情報保護マネジメントシステム(以下、PMS)登録の動機やきっかけは何でしたか?
斎:元々はプライバシーマーク(以下、Pマーク)を取得していたのですが、社内の業務体制見直しなどを踏まえて一度返上しました。
しかし、弊社において「ハコメル」(注1)という機密文書溶解処理サービスをずっと続けており、個人情報保護の重要性を認識していましたし、顧客の信頼向上や社内の業務体制整備というところで、やはり個人情報保護に対して何か取り組みたいという想いがありました。
基本的にマネジメントシステムはPDCAのサイクルですから、それを社内でルール化すれば、ハコメル事業や顧客からの信頼向上の部分に、ある一定以上の成果を得られるのではないかと考え、日本規格協会ソリューションズ株式会社が実施しているJIS Q 15001認証の取得に向けて取り組むこととなりました。
(注1:履歴書や顧客情報などの外部に漏らしたくない情報が記載された紙類を、段ボールに入れて箱ごと渡せば、そのまま回収・溶解し、処理できるというサービス)
認証取得に向けた取り組み
JSA:やはり個人情報を扱うというお仕事の内容から、その重要性を改めて認識されたのですね。そのようなきっかけを踏まえ、認証取得に向けて、どのようなことから着手されましたか?PMSへの取り組みについて教えてください。
斎:PMSに取り組むにあたり、以前別の会社でデジタル推進を担当し、PMSにも詳しかった方を中心に動きました。その方は60歳を過ぎて当社に来ていただき、社内のデジタル化を推進しつつ、個人情報の洗い出しやJIS Q 15001に沿った体制構築の中心的な役割を担ってくれました。この方と相談することで、社内で自主的に整備を進めることができました。元々Pマーク取得時の規程があったことも、スムーズな導入に繋がりました。
個人情報保護委員会の取り組み
JSA:推進する中心人物の存在が大きかったのですね。「個人情報保護委員会」を設けていらっしゃるようですが、そこではどのような取り組みをされていますか?
斎:四半期ごとに定例会を開き、そこで各部署の課題を共有しています。個人情報の測定結果(新規取得件数など)も報告され、委員会はPDCAサイクルの一部として機能しています。また、内部監査も実施しています。内部監査は指定の外部講習を受講した者が内部監査員となり、他の部署を監査することで、計画通りに業務が実施されているかを確認しています。
個人情報保護への意識は、当初、業務内容によって部署間で差がありました。例えば、機密文書の持ち込み受付において、現場と本社での業務プロセス分担について衝突することもありました。ただ、意識をすり合わせていく過程の中で、現場では最少の人数で最大のアウトプットを出したいため直接業務に集中し、事務処理などの間接業務は本社が担うようにプロセスを整備しました。この取り組みの過程では、現場から「大変だ」という声もありましたが, 本社と現場が協力して、時に意識の衝突を乗り越えながら、体制を構築してきました。

インタビュー風景
PMSとEMSの運用関係性
JSA:斎藤英次商店様はPMSのほかに、環境マネジメントシステム(以下、EMS)も取得されていますよね。両方の運用において重複する事項などの関係性はございますか。
斎:当社では、PMSとEMSを別のものとして運用しています。特にEMSについては、審査員の方が「環境活動は単なる電気代削減や燃料抑制だけでなく、事業内容そのものが持続可能性に貢献すべき」という考えを持っていたため、その影響を強く受けています。
そのため、当社のEMSは、リサイクル事業と一体化しており、燃料使用量の計測などを通じて環境貢献を可視化し、顧客への情報発信にも繋げています。このようにEMSは事業と密接に結びつき、PMSはその中で個人情報に特化し、それぞれ運用しています。
JIS Q 15001登録の効果
JSA:環境の側面から考えた場合に、御社の事業を伸ばすことそのものが、地球環境の負荷低減に繋がるかと思いますので、EMSと事業が密着した形はとても望ましい運用形態ですね。それでは、JIS Q 15001登録の効果について教えてください。
斎:PMSの導入によって、従業員の個人情報に対する意識が大きく向上しました。例えば、現場の営業担当者や回収担当者も含め、「これも個人情報なのか?」といった会話が各拠点で活発に交わされるようになり、個人情報保護の意識が浸透したことは大きな成果だと感じています。
また、JIS Q 15001の登録は、会社経営における透明性確保に非常に有効だと考えています。規格に基づいた計画と外部審査は、自主的な取り組みだけでは難しい個人情報保護体制の構築と実行を可能にしました。年に一度の外部審査は、従業員の意識を高め、組織として継続的に改善していく良いきっかけとなっています。
PMSに取り組む上での苦労
JSA:PMSに取り組む中で、どのような点に苦労されていますか?
斎:現在、当社ではJIS Q 15001の2017年版を運用していますが、来年1月の外部審査に向けて2023年版への移行準備を進めています。この移行作業において、まずはマニュアルや文書の更新・整備に注力しているのですが、少々時間がかかっています。2023年版で変更・追加された点については、既存の内部監査に加えて重点的に確認し、対応を進めていく予定です。
日本規格協会への期待
JSA:今後もPMSへの取り組みを継続するにあたり、JSAに期待することはありますか。
斎:セミナーについて、PMSに関する基礎知識がない人でも理解できるような内容を求めています。例えば、実際の事例を交えながら、どのようなリスクがあり、それに対してどう対処すべきか、個人情報漏えいを防ぐための実践的な方法などがより多く含まれていると嬉しいです。
現在JSAにて受講している「JIS Q 15001要求事項解釈コース」は、マネジメントシステム事務局として体系的な教育を受けられる点が良いですが、もう少し現場に即した内容にも期待しています。
JSA:貴重なご意見をありがとうございます。弊会の研修は公平性を保ちながらお客様のご期待に添えるよう、今後もより良いコンテンツ提供に向け改善してまいります。組織様のオーダーメイドの内容で社内研修も承っておりますので、ぜひご相談ください。本日はありがとうございました。
(取材日:2025年5月29日)
■組織紹介
株式会社 斎藤英次商店は、使用済み資源物や廃棄物の回収・リサイクルを主要事業の一つとしており、機密文書溶解処理サービス「ハコメル」や、内職業務における個人情報取り扱いを通じて、個人情報保護の重要性を認識しています。
規格情報
個人情報保護マネジメントシステム―要求事項
Personal information protection management systems -- Requirements
(和文)税込価格: 5,390円 A4判 94頁
(英文)税込価格:21,560円 A4判 95頁
※規格類は価格が変更される場合がございます。ご了承ください。
関連書籍
PマークにおけるPMS構築・運用指針対応
発売年月日:2024年2月29日
税込価格 :4,950円
イラストとワークブックで個人情報保護マネジメントシステムの要点を理解
発売年月日:2023年12月15日
税込価格 :1,430円
関連セミナー
マネジメントシステム審査登録のご案内
日本規格協会ソリューションズ株式会社では、長年の品質管理の普及に努めてきた経験と、マネジメントシステム認証制度の確立から実施の過程で蓄積された審査技術のノウハウ等を活かし、公平性を重視した組織認証事業を行っています。マネジメントシステム認証に関してお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください!
(担当部門:審査登録事業部 認証営業チーム E-MAIL:msed@jsa.or.jp)