
『ムー』編集長、三上丈晴氏に聞く「未知なるものをはかるための基準」(後編)
2022/05/06
後編では、霊と魂の定義を発端に規格との共通点を探ります。
※記事中に登場する漢字の解釈等には諸説ありますが、ここでは一例としてお話しをいただいています。
霊と魂の違いとは?
- J:
- 未知のものを見る・はかる際、人に説明するに当たって説得力を持たせるためには、やはりエビデンスが必要だと思うのですが、UFO以外で何か事例はあるでしょうか?例えば「霊」などはいかがでしょうか?
- 三:
- あえて「幽霊現象」という言い方をするんですけど、「幽霊があるのか無いのか」と言う前に、言葉をきっちり定義して欲しい、と思いますね。
では、「霊」と「魂」の違いって分かりますか? - J:
- 何でしょうか…??
- 三:
- 文字が違うので、当然概念も違うんです。でも「霊魂」と言ってしまったり、しばしば両者は混同され、霊能者や宗教家もこの違いを分かってない方が多いんです。
例えば、「一球入魂」って言いますよね。ボールに魂を込める。でも「一球入霊」とは言わないですよね。「心霊写真」とは言うけれど、「心魂写真」とは言わないですよね。
この2つは違うんですよ。概念的なことを言うと深くなるんですが、一言で言うならば「霊には形がある」のです。魂には形がない。 - J:
- なるほど。
- 三:
- 霊というのは曲がりなりにも形があるんですよ。「霊体」って言うでしょ。体なんですよ。霊体が映っているから心霊写真。魂は写真に写りません。
では魂とは何かと言うと、自我、エゴです。
霊体とは、肉体じゃないもう一つの形あるボディがあって、肉体はそれと重なり合っていて、霊体だけが抜けたりする。肉体が滅んでも霊体は存続する、という「思想」なんです。
じゃあ「幽霊って何なんだ?」と言ったときに、なぜ死んだ人の霊だとか生霊もそうだけど、一般の人には見えないじゃないですか。でも特定の人に限って言うと人の姿が見えたりする訳ですよ。例えば、脳神経学の先生なんかは、「あれは全部脳が起こしている現象だ」と言います。
つまり「幽霊は脳の中にいる」ということです。ある種の幻覚ですが、それを本人がリアルに実在していると認識するということです。だから周りの人には「あそこにいる人がいる」とは見えない訳です。
これは精神疾患から来る場合もあるし、いずれにしろ特殊な状態になっている。そうすると見えないものが見える。特に脳の側頭部の溝に電磁波などを当てると、幽体離脱だとかもう一つの体があるように見えたりして、こうした現象を再現できます。これはある種の臨死体験ですが、体外離脱に関してもこの神経学の先生たちはそのように言いますね。
- J:
- 先ほどのUFOではないですが、複数人に同じものが見えるというケースもありますよね。
- 三:
- そのとおりです。例えば、そこに女性の霊が見えたとして、その服装などについて「見える人」同士の会話がされるときってありますよね。これは明らかに同じものを見ている訳です。このように、「同じもの・情報を共有している」ってどういうことなんだと。
一つは実際に霊がいてそれを見ている、っていう古典的な解釈があります。
もう一つは、個人が持っている脳の情報はひょっとしたら他人にも共有できるんじゃないか?というものです。
IT社会と霊
- J:
- ネットワークというか、アカシックレコード1)的というか…。
- 三:
- 似たような話で「生まれ変わり」ってありますよね。
古典的宗教的な考え方で言うと、魂が輪廻して別の子供として生まれてくる、ということです。
子供が言葉を話せるようになると、「実は前世があって、どこに住んでいて、こうやって死んだ」などと語る話がありますよね。これはまさに、前世から引き継がれた「記憶」なんですよ。 - J:
- つまり、魂は記憶だと。
- 三:
- 記憶って「データ」なんですよ。データはダウンロードできるじゃないですか。
また、コピーができます。本当かどうか分かりませんが「前世がマリーアントワネットだった」って言う人っていっぱいいるじゃないですか。もう殆ど妄想だと思うんだけど(笑)。ただ、一応この理屈からすると複数いても不自然ではないのかな、と思いますよね。 - J:
- ソフトとハードという捉え方ですね。
- 三:
- そうです。今ITが進んで大分理解しやすくなりましたね。ちなみに一個人が一生の間に見聞きしたものは、データ量で言うと大体100TBだそうです。100TBは今の技術であればもうできますよね。SDカード何枚かの世界になるかもしれません。
- J:
- メタバース的な世界ですね。
- 三:
- SDカードは酸化鉄ですが、今はケイ素も記憶装置として注目されていますよね。人間の体は滅んでしまうけれども、記憶が別のところに担保されている。クラウドに記憶を置いておく、という発想ですが、そう考えれば、全然別な他人が赤ん坊として生まれてくる時にデータがなぜかダウンロードされて、別人格の前世があるという風に本人が思いこむことは、一つの仮説ではありますが、考えられるんじゃないかと。
このように考えれば、超常現象についても、全部では無いですが、一部は説明が付くんじゃないでしょうか。まぁ説明したからって本当かどうかは分からないので、そこはきちんと実証していかなければなりませんが。
いずれにしろ、幽霊現象は霊と魂を違うものだと認識することによって、いわゆる宗教的な、フワっとした話ではなく、論理的な話として俎上に上げることができるんですよ。
規格における用語の定義
- J:
- 実は我々の世界も同じでして、先程UFOの言葉の定義もありましたが、新しい分野で規格を作る際に最初に行うのは、「用語の定義」を決めることなんです。
特に国際規格の場合、各国の人が議論を行うので、用語についてそれぞれが異なる意味の理解をしていたら困るんですね。 - 三:
- 同じですよね。スピリチュアルな世界やオカルトもそうなのですが、根本的には哲学の話になってくるんですよね。「人間とは何か」です。では、「この世は一体何なんだ?」と言うと三つの要素になるんです。
- J:
- その三つとは?
- 三:
- 言と字と数です(図3)。
それぞれ組み合わせると「数字」、「文字」、「音波(周波数)」になりますよね。
言と字を一緒にしてしまうことが多いのですが、字を持たない人たちっていますからね。でも言葉はある。

- この三つで形成される最も重要なものが「名前」なんですよ。
名前を付けないと何も始まらない。データも名前を付けないと保存できないですよね。名前を付けないとどんなソフトだって動かないですよ。
恐らく規格を決める上でも無意識のうちにこの三つを作業としてきっちり抑えているはずです。オカルトも皆コレですよ。
AIと名前
- J:
- 非常に共通点がありますね。
- 三:
- 科学も一つの思想ですが、「人間とは何か?」という問いがなぜ重要かというと、シンギュラリティっていう言い方がありますが、これからAIや量子コンピュータが進展してきて、生身の人間と対面して会話しても、それがAIとは分からない、計算能力も圧倒的にすごい超AIが出てきたら、いよいよ直面するんです。「AIは人間なのか?」という問いに。「ドラえもんが人間なの?生物なの?何が違うのか?」が問われるんですよ。だから早くこの問いを解明しなければならない。
「名前」って付けるじゃないですか。では一切の名前の究極の「名付けもと」を、一つの名前で示すと何になりますか? - J:
- 何でしょうか…神とかですか?
- 三:
- 神も名前ですよね。これが、究極の命題と言って、AIに聞いたら答えられないんですよ。はぐらかしたり、分かりませんと答える。問い自体も自己矛盾しているのですが、でも名前はある。それがこの「人間とは何か?」に来るんですよ。
例えば旧約聖書でも、神がアダムを作って、最初に何をやったかって言うと周りのものに名前を付けていきましたよね。
旧約聖書にはモーセが出てきますが、モーセが最初に神に対面したときに、名前を聞かれる訳ですよ。モーセも神に名前を聞くわけですが、その神は「ありてあるものだ」と答えたんです。要ははぐらかしたんです。
漢字から考える
- 三:
- 漢字の成り立ちは諸説ありますが、「命」という字は、分解すると、「人」、「一(数)」、「口(言葉)」それから「卩(印)」、つまりこれは「数」、「言」、「字」なんです。
- J:
- 先ほどの三角形(図3)ですね。
- 三:
- ちなみに、命の反対の言葉とは何でしょうか?
- J:
- 死じゃないですよね。その対だと生ですから。
- 三:
- そのとおりです。普通「死」と言ってしまうんですが、命には反対の言葉がないんですよ。
- J:
- なるほど。
- 三:
- じゃあ命がつく言葉って何がありますか?
- J:
- 命日とかですかね。
- 三:
- 命日は人が死んだ日ですよね。どういうことでしょう?
生まれた日は「生日」ですが、皆「誕」を付けて、「誕生日」と言いますね。
この「誕」という字は、「デタラメ」という意味なんです。 - J:
- 生まれてきた日がデタラメとはどういう意味なんでしょうか?
- 三:
- 例えば、1969年5月1日に生まれた「太郎さん」は、「太郎さん」ではなく、生まれてきたのは赤ん坊です。
- J:
- なるほど。最初から太郎として生まれてきた訳ではないと。
- 三:
- ですから、「亡命」も実際は生きていますよね。では最初に戻って、命とは何でしょうか?命を規格で定義してみると?
- J:
- 難しいですね…。「名前」ですか?
- 三:
- そうです。「命名」といいますよね。命とは、「名前を付ける働き」なんですよ。常に名前に付随する概念なんです。さきほどの「命日」は戒名を付ける、という意味です。
神秘主義も宗教も根本は全部、生命の樹です。神道でいう榊、仏教では菩提樹、キリスト教では十字架、ユダヤ教ではセフィロトの樹。全部共通している訳です。
是非、「名前の規格」を作ってください(笑) - J:
- ムー的世界と規格における定義の重要性・共通点が良く分かりました。名前の規格は…考えてみます(笑)
1)アメリカの心霊診断家であるエドガー・ケイシ―により一般的となった世界記憶の概念。
三上丈晴(みかみ たけはる)
1968年生まれ、青森県弘前市出身。 筑波大学自然学類卒業。
1991年、学習研究社(学研)入社。『歴史群像』編集部に配属されたのち、入社半年目から「ムー」編集部。2005年に5代目編集長就任。CS放送エンタメ~テレ「超ムーの世界R」などメディア出演多数。趣味は翡翠採集と家庭菜園。
1968年生まれ、青森県弘前市出身。 筑波大学自然学類卒業。
1991年、学習研究社(学研)入社。『歴史群像』編集部に配属されたのち、入社半年目から「ムー」編集部。2005年に5代目編集長就任。CS放送エンタメ~テレ「超ムーの世界R」などメディア出演多数。趣味は翡翠採集と家庭菜園。
【価格】¥1,540(本体¥1,400)
【発売日】2022年6月2日(木)
【発売元】学研プラス
【書籍内容】
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