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キックボクシングチャンピオン駿太に学ぶプロセス改善(前編)

2023/08/04

★アンコール掲載(初掲:2020/01/10)★

組織において目的を果たすための活動、特に改善に関わる活動はそのプロセスの定め方(標準化)やマインドの維持などが重要となります。
改善活動は組織のみならずプロのスポーツ選手も日々のトレーニングなどに取り入れているケースが多くあります。
そこで、プロのキックボクサーとして様々なトレーニング・食事法を実践され、YouTubeチャンネルで情報発信をされている駿太選手に、自身のご経験に基づく目標管理、改善の方法、マインド維持の秘訣についてお話を伺いました。

PDCA、「勝ち」と「価値」
JSA(以下、J):プロスポーツ選手の日常は企業活動にも通じるものがあるんじゃないかと思ったことが、このインタビューのきっかけなんです。例えば、PDCAを回している点です。

駿太(以下、駿):なるほど。 たしかに、目標を設定して、それを達成するために努力し、試合の結果を反省して、改善する、という流れは同じかもしれませんね。

J:駿太選手の目標は試合に勝つことですよね?

駿:もちろんそうですが、勝ち方というか、試合の質も重要です。軽いジャブをコツコツ当ててポイントを取り、判定で勝つやり方もありますが、自分はそれを良しとはしていません。KO決着でなければとは言いませんが、いかにお客さんに満足して帰ってもらうか。安くないチケットを買ってきてくれているわけですから、プロとして、試合はビジネスであり、エンターテインメントでもあるので、そこは考えなければいけないと思っています。

J:顧客満足の思考ですね。顧客にきちんと価値提供のできる勝ち方へのこだわりを感じます。

駿:はい。ただ、お客さんの満足の前に、自己満足があることも否定できないんですよね。一般の人にはなかなか理解してもらえないかもしれませんが、対戦相手と拳で語り合う、みたいな感覚はあります。いずれにせよ、お客さんと自分の満足が目標として大きくあり、そのためにフィジカル・テクニック・戦術・気持ちを融合させ、目標に向けてトレーニングをすることが重要だと考えています。

J:では、その目標を達成するために、どのような取組みをされていますか?

駿:強くなるための流れというようなものがあるんです。まず、身体にストレスをかける。これは、筋肉をいじめる肉体的なトレーニングだったり、対戦相手をイメージした脳トレだったりです。当然、身体は疲弊しますよね。だから、質の高い栄養と睡眠を取って、回復させる。そうすることで少しだけ強くなるんです。基本的にはこのサイクルをぐるぐる回すイメージですが、試合が決まっているときといないときとではトレーニングの内容は変わりますね。

J:なるほど。

駿:試合が決まっていないときは、テクニックの幅を広げたり、脱力の仕方を追及したり、自分の基礎的な能力を高めることに重きを置きますが、試合が決まれば、対戦相手の研究や試合展開をイメージすることも必要になります。

習慣化
J:毎日トレーニングを続けるのは、大変なことのように思います。

駿:重要なのは習慣化させることですよね。自分も、何か始めるとき、習慣になるまではキツイんです。でも、継続することで自分にプラスになると言い聞かせてやり続けます。

J:それができるのがプロのアスリートですよね。ダイエットしたいと思っていて、その方法もある程度わかっているのに、実際できる人はなかなかいないというか。

駿:無理せず習慣化できるものからやってみればいいと思いますよ。食事に関して言うと、自分は糖質制限と脂質制限をしています。どちらも振り切ってやれば、比較的すぐに効果は出るんですが、その分、反動も大きいんです。

J:リバウンドしてしまうということですね。

駿:はい。でも、例えば、一か月後の結婚式でドレスを着たいという目標であれば、極端な話、リバウンドしたっていいわけじゃないですか。ようは目標とか目的だと思うんです。長期的に健康的な身体を作りたいという話なら、そのためのやり方があるので。

J:食事面も相当研究されているのですね。

駿:それにはきっかけがありまして、自分は昔、腹筋が割れていなかったんです。コンプレックスだったんですが、体質だと思い込んで諦めていたんですね。でも、あるときそれは違うと気づいて、食事の勉強を始めました。最初はボディビルダーの食事法を真似ることから始め、試行錯誤しながら格闘家である自分に合った方法に変えていきました。

J:まさに守破離ですね。また、本当はできることが、思い込みで阻害されているケースは、どんな人にもあるように思います。PDCAに話を戻しますが、計画通り目標に向けたトレーニングを続けて、いざ試合を迎えたとき、残念ながら負けてしまうこともあると思います。

駿:落ち込みますよね。自分はネガティブ思考が根本にあるので、昔は本当にひどかったです。今はマインドコントロールが多少できるようになってきたのですが、それでも一日はひどく塞ぎこんでしまいます。

J:そこからどのように立ち直り、次の試合に向けて動き始めるのでしょう?

駿:まず試合の映像を見ますね。何度も見直して、なぜ自分が負けたのか原因を探します。幸い自分が所属している谷山ジムでは、試合の二、三日後には、会長やトレーナー、プロ選手が試合のフィードバックをしてくれるんです。自分では気づけない問題点が必ずあると思うので、これは本当に助かっていますね。信用できる人の意見は非常に参考になりますから。

原因分析とカイゼン
J:信用できる人というのがポイントなのですね。

駿:はい。SNSなんかでは色んな人が色んなことを言ってくるんです。中には的を得た意見もありますが、やっぱり会長やジムの仲間の言葉は違いますね。ただ、難しいのは、結局のところ、自分たちが突き詰めた原因が本当に正しいのかはわからないんですよ。

J:どういうことでしょう?

駿:試合は対戦相手がいる話なので、自分のここが足りなかったと当たりをつけることはできても、本当にそうなのかはわからないんです。

J:100%の原因究明はできないと。

駿:そう思います。

J:たしかにメーカーが不良品の発生原因を突き止めるのとは少し違いますね。もちろん企業活動においても100%は非常に難しいと思いますが。

駿:可能な限りは原因を調査して、次の試合に向けた改善策を練ります。キックボクシングのテクニックだったり、食事や睡眠だったり、体調管理だったり、考えることは山ほどあって、継続的な改善を続けていかなければなりません。

後編へ続く...



駿太
キックボクサー


谷山ジム所属。第15代マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟フェザー級王者、第2代WMAF世界フェザー級王者。プロキックボクサーとして活動する傍ら、Youtuberとしても活動し、自身のトレーニング経験を基にした栄養や健康に関する情報を発信している。