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マスバランスとブックアンドクレーム、国際標準化が間近に迫る!

マスバランスとブックアンドクレーム、国際標準化が間近に迫る!

2025/07/15

環境配慮型素材の利用を促進する上で重要な役割を果たす「マスバランス」と「ブックアンドクレーム」。これらの国際標準化に向けた動きが最終段階に入っています。2025年5月にオーストリアのウィーンで開催されたISO(国際標準化機構)の会議では、世界各国の専門家が集結し、議論が大きく進展しました。

◆ウィーン会議での進展

2025年5月19日から22日にかけ、オーストリアのウィーンでISO/TC 308/WG 2(加工・流通過程の管理-マスバランス及びブックアンドクレーム)会議が開催されました。この会議は、ISO 13662(マスバランス – 要件とガイドライン)とISO 13659(ブックアンドクレーム - 要件とガイドライン)という2つの重要な国際規格の策定を話し合う場です。日本、オーストリア、アメリカ、ドイツ、オランダ、中国など、約40名の専門家が、現地またはオンラインで参加し、活発な議論が交わされました。

会議の様子
ISO/TC 308/WG 2ウィーン会議

◆マスバランスモデル(Mass Balance Model)とは?

マスバランスモデルとは、特定特性(例:バイオマス由来、リサイクル素材など)を持つ原材料と、その特性を持たない原材料を混合して製品を製造する場合、「特定特性」を持つ原材料の投入量に応じて、クレジットなどを用いて最終製品に一部にその特性の割り当てを行う管理手法です。マスバランスには、クレジットを使用する方法とローリングアベレージ百分率を用いる方法があります。
例えば、工場で再生可能な原料と従来の原料を混合して製品を製造する場合、投入した再生可能原料の量に応じて、最終製品の一部を「再生可能」とみなすことができます。これにより、既存の設備を活かしつつ、バイオ原料やリサイクルプラスチックの利用促進など環境配慮型素材の導入を段階的に進めることが可能になります。




◆ブックアンドクレームモデル(Book and Claim Model)とは?

ブックアンドクレームモデルとは、ある特性(例えば、環境に優しいといった価値)を持つ製品の物理的な流れとは別に、その特性に関するクレジット*1を取引する仕組みです。
*1:ブックアンドクレームでは、TIEC(Transferrable Instrument with Entitlement to Claim)と呼ぶ。
これは、「物理的な製品は手に入らなくても、その環境価値だけを購入・主張できる」という考え方です。例えば、再生可能エネルギーの電力のように、物理的に区別が難しい場合でも、「再生可能エネルギーを使った」という価値を証書として購入し、自社の環境貢献として主張できるため、環境配慮への参加の幅を広げます。




◆注目の審議内容:DIS(国際規格案)へのコメント検討

今回の会議の主な議題は、すでに作成されているDIS(国際規格案)に対する各国からのコメント審議でした。ISO 13662(マスバランス)には約500件、ISO 13659(ブック&クレーム)には約210件ものコメントが寄せられ、事前にトピックごとに分類された上で慎重に検討されました。それぞれの国際規格案は、特に重要なコメントについて、さらに議論を深めるためタスクグループが個別に設置され、継続して検討が進められることになりました。

◆今後の動き:FDIS(最終国際規格案)への進展に向けて

その後、7月8日にISO/TC 308/WG 2のオンライン会議で、引き続きDISの議論が行われ、FDIS(最終国際規格案)へ進むことが決定しました。これは、国際規格として発行が間近に迫っていることを意味します。 これらの国際規格の発行は、企業のサプライチェーンにおける環境配慮の取り組みを、より明確で信頼性のあるものにし、持続可能な社会及び循環型社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。

ISO/TC 308/WG 2のメンバー
ISO/TC 308/WG 2のメンバー

[日本規格協会]


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