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新たな国際標準戦略を読み解く ~標準人材育成編~

新たな国際標準戦略を読み解く ~標準人材育成編~

2025/06/18

標準化人材の育成

内閣府知的財産戦略本部の「新たな国際標準戦略」では、企業内の経営戦略に対して標準の活用を推進する人、規格開発や国際会議での交渉を行う人、規格の普及に取り組む人、また標準技術にかかる研究を行う人などのいわゆる「標準化人材」の育成についてもポイントの一つになっています(図1)

標準(規格)は制定をして終わりではなく、それを事業に利活用して初めて意味を持ちます。~重要・戦略領域編~で触れたように、たとえば「量子」や「デジタル・AI」を中心に、科学技術・イノベーション政策の一環として、社会課題解決に直結する重要分野として国際標準化が推進されます。

「量子」については、高セキュリティの量子ネットワークなどに応用されることや、医療や材料、金融、エネルギー、交通など様々な分野での発展が期待されます(国際標準化においては、IEC/ISO JTC 3が発足し、今後ますます国際標準化が加速していくことが予想されます)。

また「デジタル・AI」について、今や「AI」は我々の日常生活や企業活動において欠かすことができなくなっている一方、我が国におけるAI技術の利用は他の先進国と比べると低いことが示されています(※1)。国際標準化においては、ISO/IEC JTC1 SC42で「ISO/IEC 42001(情報技術-人工知能-マネジメントシステム)」といった規格に代表される、AI関連規格が発行されてきており、「AI」の利活用に際して国際標準は無視できない状況であるといえます。

このように、まさに、「企業内の経営戦略に対して標準の活用を推進する人」は、企業活動にイノベーションを起こすというという視点においても重要な存在であるといえます。そうした中、「最高標準化責任者(CSO)」設置による企業内における標準化活用体制強化の必要性が経済産業省を中心に訴えられています。

また、重要・戦略領域として積極的に国際標準化を推進していくことを提唱しても、実際に国際会議の場で我が国の主張を説得できなければ、他国に有利な国際標準が成立してしまうことになります。それにより、我が国の強みを生かした技術や製品が海外で通用しなくなり、他国の技術・製品がスタンダードとなることで国際競争力の低下を招くことに繋がりかねません。そこで、交渉に参画するエキスパート等が国際会議の場でしっかりと我が国の主張をおこない、コンセンサスを得られるようにしていくことが、今後国際標準において大変重要になってきます。

「新たな国際標準戦略」においても、このような「標準化人材」の育成について、経済産業省の施策として、「セミナーの開催、標準化人材育成のための研修の開催」に触れられています。日本規格協会では、経済産業省からの委託を受け、「 ルール形成戦略研修」や「ISO/IEC国際標準化人材育成講座(ヤンプロ)」といった研修を実施し、「標準化人材」の育成につなげています。

(※1) 令和6年版情報通信白書 第5章デジタルテクノロジーの浸透 第1節 国民・企業における利用状況(pdf)

日本規格協会グループは、総合的標準化機関として「新たな国際標準戦略」実施に関わる各種活動・サポートを行って参ります。

参照元:
内閣官房 知的財産戦略本部ウェブサイト
内閣官房 知的財産戦略本部「新たな国際標準戦略」
内閣官房 知的財産戦略本部「新たな国際標準戦略」の概要
内閣官房 知的財産戦略本部「新たな国際標準戦略」のポイント

[日本規格協会]

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