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荒金雅子氏に聞く「ダイバーシティ経営って何だ?」

2020/06/09

日本規格協会は、標準化・規格・品質管理をテーマにした書籍を多く出版しております。
しかし、これらのテーマだけではなく、組織の成長や活性化、企業価値の向上に役立つ書籍を広く発刊したいという思いで、『ダイバーシティ&インクルージョン経営』という書籍を発刊いたしました。

今回、著者の荒金雅子さんにインタビューを行い、率直な疑問をぶつけてみました。

目次

ダイバーシティ経営って何だ?

取材陣:「ダイバーシティ経営」とは一言でいうと何でしょうか?

荒金先生:一言で表現するのは難しいのですが、「人の多様性を受け入れ、活かすことで、組織の成長や活性化、企業価値の向上を図ること」を指します。

「企業価値の向上を図る」と仰いましたが、ダイバーシティに配慮しすぎると、コストがかかったり、逆差別になったりしそうな気がします。

ダイバーシティを、ジェンダー(女性活躍)、エイジ(年齢)、グローバル(国際化)など、「属性」のみに限定してしまうと、法令遵守やハラスメント防止、働き方改革など、どうしても表面的な取り組みになり、ダイバーシティを解決すべき「問題」として考えてしまうのです。

ダイバーシティは解決すべき「問題」ではないのですね。

ダイバーシティには、オピニオンダイバーシティ(意見の多様性)やタスクダイバーシティ(能力や経験の多様性)など幅広い概念が含まれ、活かされるべき「強み」なのです。このような、「目には見えないちがい」も含め、組織の「知のシナジー」をどう活かしていくか?がポイントなのです。

法令遵守やハラスメント防止、働き方改革は多様性を活かす大前提であって、「攻め」の姿勢でダイバーシティ経営に取り組むのが大事なのですね。



意見の多様性もダイバーシティ?

取材陣:「意見の多様性」までダイバーシティに含まれると大変な気がします・・・。

荒金先生:同質性が高く調和を重んじる日本では、「コンフリクト(対立・衝突・葛藤)をできるだけ起こさない」という考え方が根強いですが、対立を乗り越えた先にこそ、新しい価値や創造があるのです。ダイバーシティはイノベーションの源泉です。

「ダイバーシティ」と聞くと取り組むのが大変なものというイメージですが、改めないといけないですね。



「インクルージョン」って何だ?

取材陣:「インクルージョン」という言葉も出てきますね。

荒金先生:「ダイバーシティ」は例えると“フルーツバスケット”で、様々な果物(人)が「個」として存在している状態で、果物(人)との間の相互作用は限定的です。対して「インクルージョン」は、“ミックスジュース”で、多様な果物(人)が持ち味を活かしながら、相互作用し、その組織ならではの味を出しつつ、全体に良い影響を与えている状態です。

「ダイバーシティ」は “フルーツバスケット”。「インクルージョン」は、“ミックスジュース”。とても分かりやすいですね。



中小企業でもダイバーシティ経営は可能?

取材陣:中小企業でも「ダイバーシティ経営」は可能ですか?

荒金先生:中小企業こそ「ダイバーシティ経営」に取り組む価値があります。ダイバーシティ経営に取り組まないと、望む人材が確保できない時代になっていると思います。

何をどこから取り組めばよいのでしょうか?

まずはトップの意識が変わることが不可欠です!また、「ダイバーシティ経営」に取り組むには、コンフリクトマネジメント、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への対処などのスキルも必要です。


まとめ

  • ダイバーシティ経営とは、「人の多様性を受け入れ、活かすことで、組織の成長や活性化、企業価値の向上を図ること」。
  • 意見の多様性もダイバーシティ。ダイバーシティはイノベーションの源泉。
  • インクルージョンとは、多様な人が持ち味を活かしながら、相互作用し、全体に良い影響を与えている状態のこと。
  • 中小企業こそダイバーシティ経営が必要。トップの意識改革が欠かせない。

書籍紹介

今回は限られた時間のインタビューで、とても「ダイバーシティ経営」のすべてを紹介することはできませんでした。詳しい内容は下記書籍で掲載しておりますので是非ご参照いただければ幸いです。

多様性を活かすダイバーシティ経営 基礎編』 2013年発刊
 女性活躍推進を中心に8つの領域における現状と課題を紹介しており、まずは、ダイバーシティについて理解したい、基礎を学びたいという方にお勧めです。

多様性を活かすダイバーシティ経営 実践編』 2014年発刊
 ダイバーシティ経営を実現するためのビジョンやアクションプランの策定方法、実践事例を掲載しています。これからダイバーシティ推進に取り組む企業や中小企業の経営者の方に是非読んでいただきたい一冊です。

ダイバーシティ&インクルージョン経営』 2020年5月29日発刊
 SDGsやESG投資、CSV経営、LGBT・SOGIをめぐる世界の動き、アンコンシャス・バイアスへの対処など、最新の社会情勢とダイバーシティの関係性を深堀し、今後のD&I経営のあり方を解説しています。

著者プロフィール



荒金 雅子(あらかね まさこ)

国際ファシリテーターズ協会認定プロフェッショナルファシリテーター(CPF)
Standing in the fire認定(2015年)ダイバーシティスペシャリスト。
都市計画コンサルタント会社、NPO法人理事、会社経営等を経て、株式会社クオリアを設立、代表取締役に就任。
長年女性の能力開発、キャリア開発、組織開発などのコンサルティングを実践。1996年、米国訪問時にダイバーシティのコンセプトと出会い強く影響を受ける。以降一貫して組織のダイバーシティ推進やワークライフバランスの実現に力を注いでいる。
意識や行動変容を促進するプログラムには定評があり、特にアンコンシャス・バイアストレーニングやインクルージョン推進プログラムは高い評価を得ている。