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欧州委員会、研究とイノベーションにおける標準化ニーズを示す調査報告書(ESPS)を発行

2024/04/18

欧州委員会は、欧州標準化パネル調査(ESPS:European Standardisation Panel Survey)の結果と推奨事項をまとめた最終報告書を公開した。

この調査は、研究・イノベーションにおける標準化ニーズや関連するデータを収集することを目的に実施された。本報告書の内容を一部紹介する。

  • 研究・イノベーションにおける標準化のメリット

    文献レビューの結果、標準は研究成果の利用の促進、更には新製品・サービスの市場参入を加速するメリットがあると示す一方、実際に研究において標準化に取り組む意向を示した事例はごく僅か(全体の10%未満)であると紹介している。またEUの研究プログラム、Horizon Europeによって資金提供された研究プロジェクトの2,000以上が標準化について言及しているものの、CEN CENELECのメンバーがそれらプロジェクトに関与しているケースは殆どないとの結果も示されている。

  • 標準化への関与を促す要因

    報告書では、標準化への関与を促す要因として、政策・規制、知的財産権、認証を挙げているほか、企業や研究機関が標準化に参加することによって、様々なネットワーク効果が生まれることとも挙げている。例えば、研究者が規格開発作業を関係者と行っていく中で生まれた信頼感が別の共通課題に共に取り組むようなケース(共同研究など)に繋がり得ることを紹介している。

  • 標準化への関与を阻む障壁

    標準化への関与を阻む大きな要因として、標準化機関の作業に参加するための会費や、標準化作業に必要なリソース(作業量、人件費)、旅費などの金銭的負担が伴うこと、また規格開発に通常数年要することなどを挙げている。またある文献では、標準は公共財であり、規格開発に貢献していない組織・関係者も規格が提供する知識にアクセスできてしまうことも組織が標準化に積極関与しない点として指摘している。

  • スタンダードの種類別の評価

    標準の種類と影響度の一般的な評価として、欧州で発行されるEN規格が最も重要と評価されている。次いで、国際規格、国家規格が続く。技術的な規則や仕様書(TS)についてもこれら公式規格に続き、市場へのアクセス促進や相互運用性の確保の観点から重要であると評価されている。この一方でコンソーシアム、デファクトスタンダードについては、比較的、重要性が低いとの結果が示されている。

  • 推奨事項

    ・産業界への標準化の提言
    一般的に標準化に参加することのメリットや標準化活動と研究との連携について、企業内の認識を高めることなどが推奨されている

    ・高等教育機関および公的研究機関への提言
    標準化活動への関与に十分な資金が提供されること、論文などと同様に規格開発に関わる成果指標を確立することなどが推奨されている

    ・規格開発組織への提言
    規格のタイムリーな発行を可能にするため、規格化プロセスの機敏性を高めることや一般の参加者を巻き込みながら迅速に文書を開発する欧州ワークショップ協定(CWA:CEN Workshop Agreement)の認知度を高めることなどが推奨されている

    [ジュネーブ事務所]

    https://www.cencenelec.eu/news-and-events/news/2024/brief-news/2024-04-03-european-standardization-panel-survey/