
サービスロボット活用社会への第一歩、JIS Y 1001「サービスの安全マネジメントシステム」 ~ 人とロボットの共生時代を創り出す。
2019/11/05
2019年5月、JIS Y 1001「サービスロボットを活用したロボット-サービスの安全マネジメントシステムに関する要求事項」が新規制定された。この規格は、ロボットを用いてサービスを安全に提供するサービスプロバイダが守るべき安全管理、運用等に関する規格である。また、この規格は、サービス業を対象にしたJISの記念すべき第一号である。従来のJISは鉱工業品だけを対象としてきたが、JIS法の改正によって、対象の範囲がサービス業にも広がった。この規格はその適用を受けたものである。
サービスロボットは、超高齢化や人手不足といった社会課題を解決するための有効な手段として期待されている。しかし、工場などで使われるロボットに比べると、一般利用者と直接接する機会が多いので、人とロボットが安全に共存するための共通の基準が求められていた。この規格では、ハードウェアとサービスの両面から安全性向上を図る枠組を提供している。リスクアセスメントの考え方を取り入れており、サービス事業者が想定されるリスクを分析・評価した上で適切な対策を施すことを、規格の要求事項に規定している。
また、この規格を基に、日本からISOへの国際提案も検討されている。この規格が国際標準となれば、日本国内のみならず、世界中で使われることになり、日本の事業者が海外に進出しやすくなるだけでなく、世界中にサービスロボットが普及することになる。
一方この規格は、サービス業の標準化という点から見ても大きな一歩である。従来「標準化」というと、どうしても製造業の話題が中心であった。ロボット自体に関する規格はあっても、それを利用したサービスに関するJISはなかった。つまり、サービス業における利用は必ずしも進んでいなかったのが現実である。しかし、我が国を含む先進各国では、雇用・GDPともにその70%はサービス業である。そして、サービスの質もニーズもますます多様化・高度化している。従来のように、高性能・高品質な製品を大量に作ればよい時代は終わり、「如何に楽しめるか」「如何に便利になるか」といった製品とサービスが一体化した付加価値を求めるようになりつつある。JISも時代の要請に対応できなければならない。
この規格が、人とロボットとが共生する社会を創造することを願うとともに、更に言えば、サービス業の標準化を上手に活用し、より豊かな未来を実現してゆきたいと改めて認識した次第である。
日本規格協会 標準化総括・支援ユニット所属 同協会において、ISO/TCの国際幹事、標準化に関する調査研究、試験所認定(製品評価技術基盤機構勤務)、JIS原案作成などに従事する。経済産業省技術環境局長表彰を受ける(2012)。
主な著作:
「サービス業の標準化 サービス化する経済にこそ標準化の活用を」
(日本規格協会 2013)
「広がるインフラビジネス~国際標準化で巨大市場に挑む!」
(共著 同 2011)