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ISO規格は「購入」から「ライセンス」へ ~ 規格ユーザーが認識すべき4つのルール

ISO規格は「購入」から「ライセンス」へ ~ 規格ユーザーが認識すべき4つのルール

2026/05/19

<ISOが新たな規格提供モデルを導入>

 ISO(International Organization for Standardization/国際標準化機構)は、各国のISO加盟機関に向けて、2026年6月1日から新しいライセンス条項の実施を求める通知を発出した。これは、「文書の販売(静的な文書の売り切り)」という提供モデルから、「ライセンス(利用許諾)ベースのアプローチ」への移行を進めるための決定であり、ISOのビジネスモデル見直しに向けた最初の具体的な実施ステップとして位置づけられている。

 ライセンス契約とは何かをまず整理しておきたい。規格を使おうとする場合、まず規格を購入する必要がある。ユーザーは、ISOや日本規格協会のウェブストアなどで規格を購入する必要があるが、正確には、これは「購入」ではなく「利用許諾」なのである。ISOが開発する規格はISOが著作権を保持するISOの所有物であり、ユーザーが規格を購入したとしても、所有権がユーザーに移るわけではない。規格という製品が売られているのではなく、規格という製品を、ライセンス契約に示されている条件を守った上で利用することが可能ということなのである。

 この背景には、単なる規格のデジタル化(例:PDFやePubなど)にとどまらず、AIを組み込んだシステムでの利用や新たなデジタルサービスなど、急速に変化する環境下でISOの知的財産を守り、持続可能な収益基盤を確立するという強い狙いがある。

移行スケジュールは非常に迅速であり、各国のISO加盟機関は、2026年6月1日以降、新たに発行されるISO規格や改訂版だけではなく、既に発行されている規格に対しても新しい枠組みの適用を開始することが求められており、これはISO規格を採用した国家規格(日本の場合はJIS)の提供においても適用する必要がある。

<ISO規格の利用者が押さえるべき4つの必須ルール>

 この新たなライセンス枠組みにおいて、ISOは各国加盟機関に対し、ユーザーとの契約に以下の4つの必須ルールを反映させることを義務付けている。

1.「販売」ではなく「ライセンス供与」であること
規格のユーザーは文書の「所有権」を購入するのではなく、「利用権(ライセンス)」を取得するということを明記する。冊子として提供された場合でも、物理的な媒体の所有権は移転するが、コンテンツに関する知的財産権などのすべての権利は引き続きISOが保持する。

2.デジタル・AI時代に対応した使用・開示の制限
現代のテクノロジー環境に対応するため、規格コンテンツの無断での再配布や開示、不正利用を制限する条項を契約に盛り込む。特に、AIの学習データとしての利用や、外部デジタルプラットフォームへの掲示などは、明示的な許可を示す特定のライセンス契約が別途必要になる。

3.コンプライアンス(法令遵守)の確認権利
ユーザーが契約条件を守って規格を使用しているかについて、規格を提供する側(ISO加盟機関等)が確認・検証するための契約上の権利を新たに設ける。

4.ISOの著作権の明確化
各国の法的な枠組みに従うことを前提とした上で、ISO規格やその翻訳版、さらにはISO規格を採用した国家規格(日本の場合はJIS)の著作権がISOに帰属することを契約内で明記する。

 また、必須である上記4つのルールに加え、第5のルールとして「用途別のライセンスモデル」の導入が任意で推奨されている。これは、利用者が規格をどのように使うかによって、適切な権利と制限を設けようとするものであり、想定される用途カテゴリーとして、「社内での実装」「適合性評価(審査、検査、認証など)」「コンサルティング」「トレーニング」「ソフトウェア開発」などが挙げられている。この取り組みは、将来的に「価値ベースの価格設定(value-based pricing)」へと移行するための布石であり、規格が単なるテキストとしてではなく、どのようにビジネスの価値を生み出しているかを詳細に把握することで、より実態に即したサービス展開が可能になると期待されている。

<企業に求められるコンプライアンス対応>

 ISO規格が「購入する文書」ではなく「利用許諾を得るライセンス」となることは、デジタル化やAIの普及が進む現代において、知的財産を保護するための必然的な流れと言える。許諾された範囲を超える使用は法的措置につながるリスクを伴うため、特にデジタルシステムやソフトウェアへの組み込み、AIでの規格活用を検討している企業は、今後のライセンス規約の動向に十分な注意を払う必要がある。企業の知財管理やコンプライアンス担当者は、自社内でのISO規格の利用状況を今一度可視化し、新時代に即した適切な管理体制を構築することが急務と言える。

 引き続き、ISOの動きを注視し、情報発信を継続したい。

[日本規格協会]

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