
【開催レポ】標準化カフェ「ブロックチェーン技術と国際標準化」
2025/10/17
一般財団法人日本規格協会では、新しい標準化の動き、ISO/IECの動向、標準化における課題など、標準化に関わる様々なトピックスを皆様と共有し、自由に議論する場として、標準化カフェを定期的に開催しております。
2025年10月15日に、令和7年度第3回標準化カフェ「ブロックチェーン技術と国際標準化」を開催しました。講師として一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(以下、JIPDEC)の松下 尚史氏、野町 綺乃氏にご登壇いただきました。
◆ブロックチェーンの概要と活用事例
講演では、まず日本政府がWeb3.0やブロックチェーン技術の推進に積極的に取り組んでいる状況が紹介されました。ブロックチェーンが注目される背景として、Web3.0の勃興と、Society 5.0におけるグローバルなデータ共有基盤やトラスト確保に貢献する可能性が示されました。
ブロックチェーンの主な強みとして、以下の4点が解説されました。
- 耐改ざん性に優れている:取引データをブロックにまとめ、直前のブロックのハッシュ値を含む形で鎖状に連結する仕組み(分散台帳技術の一形態)により、改ざんが極めて困難。
- 追跡ができる(トレーサビリティ):取引履歴が時系列順に全て保存されているため、来歴情報を遡って確認可能。
- 透明性が高い:取引履歴がネットワーク参加者に公開・共有されるため、高い透明性を具備。
- システムの耐性が高くダウンしにくい:P2P技術を用いた分散管理により、一部のシステムが停止してもサービス継続が可能です。
これらの強みを活かした活用事例として、デジタルデータに唯一性を付与し真贋性を担保する機能を持つNFT(非代替性トークン)や、自動契約実行プログラムによる手続きの自動化が可能なスマートコントラクトなどが紹介されました。これらの取り組みは、新収益源の創出・デジタルコンテンツの権利保護・ブランド価値向上・顧客エンゲージメント向上等に繋がると、ご説明がありました。
◆国際標準化の意義と規格開発動向
講演の後半では、ブロックチェーン技術が持つ処理速度、セキュリティリスク、規制・法制度の未整備といった課題にも触れられました。
その上で、これらの技術を社会実装し、企業経営に活かすための国際標準化の意義が強調されました。
- 相互運用性の確保とグローバルデータ連携:異なるブロックチェーン間や国境を越えたネットワークで、データ形式やプロトコルを統一し、連携の壁をなくす。
- 分散型システムでの信頼性・可用性の強化:標準化された合意形成の仕組みにより、「落ちない台帳基盤」をグローバルに構築。
- 改ざん耐性・透明性の保証:データの記録・検証方式を標準化することで、グループや企業を超えた信頼性を国際的に得やすくする。
- 新機能・新ビジネス推進基盤:国・業界ごとに異なるルールや技術的障壁を超えて、ブロックチェーン独自の価値創出やグローバルな協働を加速させる。
JIPDECは、ISO/TC 307(ブロックチェーンと分散台帳技術に係る専門委員会)の国内審議団体(事務局)を務めており、国際規格開発動向についてもご紹介いただきました。
本講演は、ブロックチェーン技術が単なる技術論に留まらず、社会課題の解決や新たなビジネス創出に直結する一方で、その普及・活用には国際標準化を通じた信頼性の保証と相互運用性の確保が不可欠であることを再認識させる貴重な機会となりました。
詳細は、標準化カフェに関する様々な情報をまとめた、JSA GROUP Webdeskに講演資料を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

令和7年度第3回標準化カフェの様子
右から、松下氏、野町氏
第4回標準化カフェ(2025年12月18日)のテーマは「量子コンピューティング」です。富士通株式会社の長谷川 一知氏にご登壇いただきます。上記ホームページにて詳細を掲載いたしますので、ご参照の上お申し込みください。
【お問い合わせ】
一般財団法人日本規格協会 システム系・国際規格開発ユニット
〒108-0073 東京都港区三田3丁目11−28 三田 Avanti
E-mail: kokusai@jsa.or.jp
標準化カフェ事務局
[日本規格協会]
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