【前編】ウェルビーイング重視社会への転換を促す国際規格ISO 25554が発行
2024/12/13
【ポイント】
- 課題先進国である日本ならではの視点で構築された健康経営のエッセンスを抽出し、組織におけるウェルビーイングを推進するための枠組みを示すガイドラインを日本主導で開発・発行
- 多様な組織で活用できるウェルビーイング推進方法を体系化
- 国際規格に沿って地域・企業などがウェルビーイングの推進に取り組むことで、ウェルビーイング重視社会の実現へ
さまざまな組織でウェルビーイング(wellbeing)の推進を実践するために推奨される枠組みを示す国際規格ISO 25554:2024 「高齢化社会―地域や企業等でウェルビーイングを推進するためのガイドライン」(以下「本規格」という)が11月12日に発行されました。日本の事例として企業の健康経営®や自治体施策も紹介されています。本規格の発行によって多くの組織で活動が活性化され、人々のウェルビーイングを第一とする「ウェルビーイング重視社会」の実現に向けた第一歩となることが期待されます。
【規格開発の社会的背景】
世界的に高齢化が進むなか、年齢に関わらずウェルビーイングの維持・向上が国際的に重視されるようになりました。それに伴い、GDPなどの経済統計に代わり、人々の生活の質や豊かさを捉え評価するための指標開発の動きも活発化しています。日本でも、地域包括ケアシステムをはじめとする地域共生社会や従業員等への健康投資を行う健康経営などさまざまな施策が実施されてきました。しかし、これらの多様な取り組みに対して、どうやって計画し、評価・改善していくのかという実践方法は共有されず手探りの状況でした。
≪後編に続きます≫
規格情報
ISO 25554:2024
高齢社会―地域や企業等におけるウェルビーイング推進のためのガイドライン
Ageing societies -- Guidelines for promoting wellbeing in communities
税込価格:25,542円 A4判 19頁
※規格類は価格が変更される場合がございます。ご了承ください。
規格の概要
本規格は、地域や企業等あらゆる規模・性質の組織を対象に、組織とそこに属する一人一人のウェルビーイングを推進する取り組みを支援するためのガイドラインです。また、このガイドラインに沿った日本の事例として健康経営や自治体の取り組みの好事例、デジタル技術活用の概要も紹介されています。
本規格では、取り組むべきウェルビーイングの領域を地域や企業等それぞれの組織が明確に定めて活動することを推奨しています。また、その内容は世界保健機関(WHO)におけるヘルシーエイジングの理念やSDGs(持続可能な開発目標)における「誰一人取り残さない」という理念に則したものであることを前提としています。その上で、以下のようにウェルビーイングを推進するための実践方法を示しています。例えば、
- 取り組みを構成する主要な要素(誰を対象とするのか、何を具体的な成果として目指すのか、そのために何をするのかなど)の設定
- 実践するために推奨される工程(計測、評価、改善など)の設定
があげられます。加えて、データマネジメントをはじめとする、組織として留意すべき重要事項等も提示しています。
用語解説
ウェルビーイング(wellbeing)
一般的には「快適かつ健康で幸福な状態」とされているが、本規格では、このウェルビーイングな状態をどのように実現するかを職域や地域など組織単位で検討することを推奨している。[参照元へ戻る]
健康経営®
従業員等の健康保持・増進の取組みが、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること。経済産業省により健康経営に係る各種顕彰制度として、「健康経営銘柄」の選定が行われ、「健康経営優良法人認定制度」が創設されている。[参照元へ戻る]
ヘルシーエイジング
人々が何歳になっても自分の意志でやりたいこと、ありたい姿を実現できるよう、その能力を発揮する機会や環境を整備すること。やりたいこと、ありたい姿を実現する能力としては、日常生活をすごすための基本的能力のほか、学び、成長し、自律的であること、活動的であること、社会的関係を築くこと、そして社会に貢献することも含まれる。WHO が2020 年に “Decade of Healthy Ageing” を宣言し、2021-2030 年をヘルシーエイジング推進の十年と規定している。[参照元へ戻る]
(担当部門:システム系・国際規格開発ユニット 社会システム系規格チーム E-MAIL:cstd@jsa.or.jp)