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JIS C 2541 熱的測定方法がもたらすモータの高効率化!

2024/01/17

標準化×カーボンニュートラル 熱的測定方法がもたらすモータの高効率化!
2023-12-20に新たな規格が発行されました。

JIS C 2541:2023

赤外線カメラによる鉄心表面の損失分布の熱的測定方法
Thermal measurement method of loss distribution on iron core surfaces by means of an infrared camera

この記事では、JIS C 2541:2023が開発された経緯や規格の狙いをわかりやすく説明します。


■なぜJIS C 2541は開発されたのか?

電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車へと電動化が進む自動車において、駆動用モータの高効率化のニーズが高まっています。
駆動用モータの高効率化には、主要構成部品のモータコアの積層鉄心のエネルギー損失(鉄損)を精密に測定する必要がありますが、従来の磁気センサでは精密な測定ができませんでした。

そこで、新たな測定方法が望まれ、今回の赤外線カメラを利用した測定方法により、従来の磁気センサの100倍の分解能で測定でき、かつ、非接触で測定出来ることから被測定物の形状の制約を受けずに、モータコアの積層鉄心部分で生じる損失のひとつである鉄損を熱的に測定し、損失分布画像とする方法の規格が開発されました。

■熱的測定方法でなにが可能となるのか?

熱的測定方法は、真空チャンバに設置したモータを回転させることで生じるモータコアの損失を赤外線カメラの熱画像から温度上昇率を算出し、比熱を乗算することで損失を測定し、モータコア表面の損失分布を表示できます。

測定分解能が従来の磁気センサによる測定の100倍であることから、試料の端部、細部および、非接触で測定することから曲面の測定が可能となります。



■具体的にはなにを測れるようになるのか?

例えば、モータコア等の積層鉄心(積層電磁鋼帯)の高精度の損失測定が可能となります。下図の測定事例では、損失分布図の赤丸部分に積層鉄心の積層を固定する溶接が施してあり、その影響で透磁率が低下し、ティース両脇に磁束が集中し損失が高くなっていることがわかります。


下図の測定事例では、赤丸内に積層コアの固定としてカシメを使用していますが、その部分がカシメによる応力等によって損失が高くなっていることがわかります。



■規格ではなにを規定しているのか?

JIS C 2541では装置構成、測定手順、報告事項を規定して、測定原理、測定事例を説明しています。


■JIS C 2541に期待されること

このように、従来の磁気測定法と比較して、JIS C 2541の測定方法では鉄心表面の損失を測ることで、モータコアの性能評価・比較が容易に精度よく可能となるとともに、損失箇所を特定し、改善することでモータコアの損失を低減し、モータの高効率化へとつなげることができます。この測定方法が広く利用されることで、モータの効率向上による省エネが図られ、カーボンニュートラル社会の実現に寄与することが期待されます。