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社会システム標準化の重要性

2019/08/01

平成は自然災害との戦いに明け暮れ,ほぼ,全国が被災地となったと言っても過言ではない。筆者の地元,広島県福山市も大きな被害に見舞われた昨年の西日本豪雨からも1 年がたとうとしている。
周知のとおり,西日本を中心に200 人を超える死者をはじめとする大惨事となった。
災害対応を通じて顕著になったことは,社会システムの標準化が急務であることだ。中央集権と地方分権という二項対立により,社会システムが分断されており,国民生活,特に緊急事態への対応を阻害している。


例えば,災害時の道路情報は,国のサイトを見ると,国道と高速道のことしか載っていない。県のサイトは県道だけ,市のサイトは市道だけ,といった具合で,それぞれの情報はそれなりに詳しくわかるものの,情報が縦割りになった状態でとにかく使いづらい。情報の更新やサーバーの対応能力も自治体ごとにばらつきがあり,ウェブサイトにアクセスできない自治体すら存在した。一方で,民間の自動車会社が走行データを集めて作成したマップは,全国一括で見ることができる。あとで調べてみると,国土交通省では国道と県道の通行止め情報は一元的に収集できている一方,市町村道の情報は把握できていないことが判明した。


これらの不便は行政がもっている全ての情報を国が一元的に収集し,災害時に道路のデータをオープン化して民間企業が利用しやすくすることで大きく解決したいと考えている。災害時に日頃慣れ親しんだ各企業のサービスを使い,国民がよりスムーズに道路情報を取得でき,避難や支援に活かすことができるはずだ。民間企業にも協力を求め,話合いを始めたところだ。


西日本豪雨からもう一つ,筆者自身も災害ボランティアに参加し,強い問題意識をもったボランティアの運営管理についても標準化が必要だと認識している。ボランティアの受入れは各市町村の社会福祉協議会が主体になっており,自治体ごとに受付の仕組みが異なることから,職員自身も被災している中,煩雑な事務作業をする事態になっている。受付方法一つとっても,オンラインで申し込める自治体,ファックスのみで受付の自治体,はたまた当日受付のみで募集人数に達した時点で打切りというところもある。


何より職員が必要以上に大変なのと,ボランティアの方々も都度違うフォーマットで作業することになり,初動に負担がかかり,ボランティアのやる気にもロスが生じる。
可能であれば,クラウド型の管理システムを全国一律で活用することで管理も楽になり,参加者に了承をとることが前提だが,ボランティア候補者のデータベースも構築が可能になると考えている。


「テクノロジーの社会実装で個人を自由に,社会を前向きに」を政治信条としている筆者は,社会システムの標準化は当選以来の注力課題であり,第3 次第4 次安倍改造内閣で務めた総務大臣政務官時代に,「自治体戦略2040 構想研究会」の中間報告書に,その計画を明記することができた。他にも,PS-LTE(公共安全LTE)という仕組みの整備を開始し,警察や消防などが使う公共無線ネットワークの一元化を進めている。他国でも組織の縦割りによるシステムの分断が長らく悩みで,2001 年9 月の米国同時多発テロの際には,政府・州・市それぞれ管轄の異なる警察組織が全く連絡を取れないという事態に陥った。


2018 年の年明け早々に渡米し,国家電気通信情報管理庁のレドル長官と協力体制を確認し,日本でも近年増加している災害に対応するには,警察,消防,海上保安庁などの通信システムを集約してPS-LTE を構築していくよう計画,まずは2020 年に消防から利用する段階まで内定した。PS-LTEならスマホ型の端末で,動画や写真もやりとりでき,現場からの情報量が格段に増加する。消防がPS-LTE を活用する姿を見れば,警察も海上保安庁も「あれは便利そうだ」と関心を深めることだろう。新しいことをやるには,まず目の前の風景を変えること。これにより疑問や不安,様々な障壁を解消する力を生んでいくものだ。


社会システム分断の弊害は,身近なところにもある。例えば,会社員が保育所を利用する際に勤務先に発行してもらう就労証明書のフォーマットは1,718 市町村全ての自治体ごとに異なる。全国に支社や事業所をもつ企業の場合,本社にいる労務担当者が証明書発行を一手に引き受けているのだが,フォーマットが個別のため全て手書きで対応している。民間企業*のデータによると実際,その作業だけで年間88 時間も費やしている。生産性向上を謳っている政府が,国民,民間企業に非効率なことを強いていることになる。これとて,フォーマットを標準化すれば一気に効率的になる。


しかしながら,なかなか一気にとはいかないものの,2018 年10月に制度改正し,企業担当者がウェブ画面上から必要事項を入力すれば,あとは各自治体のフォーマットに出力できるようになった。
そのまま電子申請できる自治体は現状約3 割にとどまり,別途印刷した上で提出が必要となるなど,まだ解決すべきステップはあるので,引き続き手続きの簡素化に取り組んでいきたい。


さらに,自治体ごとの作業で言えば,財政的なムダも大きい。情報システムを全国自治体でバラバラに調達しているので,総務省の試算**によると毎年合計5,000億円支出しているが,これを全国標準化して調達すれば,毎年1,000 億円以上節約でき,各自治体はその浮いた予算を他のことに使える。


標準化を実際にやろうとすると,「地方分権なのか,中央集権なのか」と問われることがある。しかし,筆者は標準化の問題は二項対立とは別の概念として整理できると考えている。つまり,標準化は,地方分権により本来地域ごとにきめ細やかな行政サービスを行う前提となるインフラであり,みんなでより効率的にやろうという考えで取り組むものなのだ。


これについては,2 月27 日の予算委員会第二分科会で石田真敏総務大臣にも見解をただした。石田大臣からは「標準化は地方分権と齟齬をきたすことは全くない」と答弁をいただいた。分科会はネット中継のみで,テレビ中継こそないものの,政府として答弁したことは「国民との約束」になる意義は決して小さくない。筆者自身も政務官時代に答弁側に立ってわかったことは,自分が答弁しない案件でも,目の前の質疑から問題を具体的に認識した場合,委員会後に担当者に検討を指示することがある。これは与野党の質問を問わずのことで,問題提起をしていくだけでも政策的意義は確かにある。


なお,この質疑でも取り上げた,昨年(2018 年),総務省でまとめた自治体戦略2040 構想研究会の第二次報告「~人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか~」では,「スマート自治体」への転換を打ち出し,人口減少し行政職員が半数となったとしても,担うべき機能が果たされる自治体の体制をつくることを宣言し,その前提として,自治体行政の標準化・共通化を法整備も選択肢として実効的に進めていくべきと報告をまとめている。

現在は党の災害対策特別委員会の小委員会や行政改革推進本部の立場で,関連省庁の職員や民間有識者の方々と議論を積み重ねながら,目指すところの標準化モデルのディテールを詰めている。本稿をお読みの皆様にも引き続きご注目いただき,お気づきの点があれば,ホームページやLINE からご意見をいただきたい。

ホームページ:
https://fumiaki-kobayashi.jp/
LINE:
http://line.me/ti/p/%40cle7949a


*ワークスアプリケーションズ調べ
https://www.worksap.co.jp/news/2018/0823/
**総務省
http://www.soumu.go.jp/main_content/000542618.pdf






小林史明(こばやし ふみあき)

衆議院議員(広島7区)。自由民主党青年局長代理、行政改革推進本部事務局長(前総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官)。

「テクノロジーの社会実装により個人を自由に,社会をフェアに」を政治信条とし,電波・放送・通信関連の規制改革,マイナンバー政策に注力。第3 次・4 次安倍改造内閣において,総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官を務め,楽天の新規参入,携帯キャリアのいわゆる四年縛りの是正など,通信業界の健全な競争を政策面で推進した。
家業の漁網メーカーを通じて,世界と日本の産業としての漁業の違いに問題意識をもち,当選以来,漁業改革を中心に海洋環境問題にも取り組む。昨年(2018 年)70 年ぶりとなる漁業法の改正に貢献。現在は行政改革推進本部事務局長の立場で,省令整備を後押ししている。