双眼鏡・単眼鏡の広がる用途に合わせ、最適な製品選択を!JIS B 7121:2024発行
2024/03/08
2024年1月22日にJIS B 7121:2024(双眼鏡,単眼鏡及びスポッティングスコープの仕様)が発行されました。
近年、双眼鏡や単眼鏡等の使用用途は屋内での美術鑑賞にまで広がっています。その現状に合った製品情報の提供の要望等を鑑み、JIS B 7121は改正されました。
製品の設計・検査での曖昧さがなくなることで、製品品質の明確化、及び取引の円滑化が期待されます。また、製品情報提供時の必須項目が規定されることで、市場の拡大が期待されます。
双眼鏡,単眼鏡及びスポッティングスコープの仕様
Optics and photonics -- Specifications for binoculars, monoculars and spotting scopes
■使用される場面の多様化
望遠鏡・双眼鏡・単眼鏡は、従来より様々な場面で使用されています。漁業において魚や船を見る場面や、海上安全における捜索・救難などの場面、あるいは、バードウォッチング、自然観察、コンサート観賞、スポーツ観戦、天体観察など、日常生活における趣味や娯楽にも役立っています。
遠くを見る際には双眼鏡やスポッティングスコープ(三脚にのせて使う地上用の望遠鏡)、天体望遠鏡が使用されますが、単眼鏡を用いれば、近くにある細かな造りのものに、より接近して観察することが可能です。
以下にある写真の花と蝶も、単眼鏡を用いて観察されたもので、羽の柄や花びらの繊維まで鮮やかに見ることができます。肉眼では見ることのできない細部まで観察を助けてくれる、便利な道具なのです。
このように多様な場面で使用される中、さらに近年では、単眼鏡・双眼鏡が博物館・美術館での近接観察にも使用されるようになってきました。
画像提供:日本望遠鏡工業会
■なぜJIS B 7121:2024は開発されたのか?
双眼鏡、単眼鏡及びスポッティングスコープについて規定したこの規格は、ISO14133-1:2006 及び14133-2:2006を基に2007年に改正され、2013 年には“目幅調整範囲”について追補による改正が行われました。
この規格では、各製品の必要最低限の角分解能限界について、低倍率と高倍率に分けて数値が規定されていましたが、その境目で定義が不連続になるという問題がありました。
また先にも述べたとおり、近年、単眼鏡・双眼鏡は当初想定していなかった屋内での美術鑑賞にも使用されるようになり、製品情報として“最短合焦距離”の提供が、市場から強く要望されていました。
このことから、ISO14133-1及び 14133-2では、これらを踏まえた改訂が2016年に行われました。
このような状況を鑑み、ISOと整合させるとともに、我が国の最近の市場の実態に即し、このJISを改正する必要があったのです。
■角分解能限界とは?【用語】
どれだけ細かいものを分離して見ることができるのか、人間の眼の場合は視力で表しますが、望遠鏡の場合は、視力ではなく角分解能限界で表します。例えば視力1.0の人は角度にして1分(1度の1/60))離れたものを見分けることができます。
望遠鏡を通してみた場合の角分解能限界はレンズの性能で決まりますが、その必要最小限の値について、今回、より合理的な数値の規定の仕方に改正されました。
■最短合焦距離とは?【用語】
最短合焦距離とは、ある物体を双眼鏡等を用いてみる時に、焦点を合わせることが可能な最短の距離のことです。どれだけ物体に近づいてみることができるかの目安になります。対物レンズの最前面から物体面までの距離を測って求めます。
■期待と効果
望遠鏡や双眼鏡、単眼鏡の用途が幅広くなっている現状において、使用者が使用したい場面に最適な製品を選択できるよう、製品に関するより明確な情報の提供が望まれています。
この規格を改正することによって、製品の設計・検査での曖昧さがなくなるとともに、使用者の製品選択時の混乱を防げることから、製品品質の明確化、及び取引の円滑化に寄与することが期待されます。
また、製品情報の提供として、高性能品の“最短合焦距離”が必須となることから、市場の拡大が期待されます。
■改正への思い ~原案作成委員会 委員長によるコメント~
双眼鏡等の望遠鏡は、比較的簡単な構造で、手軽に遠くを観察することのできる身近な光学機器ですが、従来は遠距離観察用が主流でした。
今回の改正によって、最短合焦距離の表示を規定し、より多様な用途に使用可能なことを明示することによって双眼鏡等の光学機器がより一層身近になるようにとの思いで規格改正に取り組みました。
画像提供:日本望遠鏡工業会
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[日本規格協会]