
シェアリングエコノミーによる地域活性化!世界各国の優良事例を含む報告書が発行
2025/02/25
公共部門でのシェアリングエコノミーの使用事例をまとめた技術報告書,ISO/TR 42507:2025(シェアリングエコノミー - 公共部門におけるシェアリングエコノミー・プラットフォームの活用事例)が2025年1月に発行されました。この技術報告書の開発を主導した渡辺 健太郎氏(産業技術総合研究所)に本報告書の開発経緯や意義についてコメントをいただきました。
本報告書の策定は,最初に日本提案で発行されたISO/TS 42501:2022(シェアリングエコノミー-デジタルプラットフォームの一般的な信頼性と安全性の要件)の次の規格案の検討から始まりました。TS 42051は,内閣官房IT総合戦略室のシェアリングエコノミー運営のモデルガイドラインを基とした規格であり,シェアリングエコノミーサービスの安全安心な利活用の環境づくりを目指しています。この規格の発行の後,シェアリングエコノミーの標準化によって解決し得る課題は何か,関係各所にヒアリングを行い,国内メンバーで検討を重ねていました。
当時,未だコロナ禍の最中で,フードドライブ等,民間主導の共助的取り組みとしてのシェアリングサービスに注目が集まっていたこと,また特に地方の産業や公的サービスの維持,活性化を目的としたシェアリングエコノミー活用の実証実験が数多く行われており,海外の優れた実践事例の知見を得たいという期待が本規格開発のきっかけになりました。
また日本の公的セクターにおけるシェアリングエコノミー活用は,都市の持続性向上を目的とした海外のシェアリングシティの事例とも特徴が異なっており,世界の優れた事例を集め,発信することで,各国の事情に即したシェアリングエコノミーの活用促進につながるのではないかと考えました。このアイデアを海外のエキスパートと共有すると,早速賛同の声をいただき,いくつものよい事例を複数の国から共有いただきました。
報告書の策定においては,各事例の取り組みの背景や効果,課題等を構造化して整理しました。更に,対応する社会課題を持続可能な開発目標(SDGs)に関連付け,更に自治体とプラットフォーム事業者等の連携方法を4種類に類型化し,対応付けることで,ユーザーが自身の目的や背景,地域の状況,取り得る連携手段に合わせて,参考となり得る事例を選べる工夫をしました。
少子高齢化を背景に日本の公的サービスの持続性が課題になる中,地域住民や民間事業者等,多様な関係者の連携,協調がますます重要になっており,そのための仕組みとしてのシェアリングエコノミー活用について,ぜひ本レポートをご覧いただきながら検討いただければ幸いです。
最後にこの場を借りて本規格発行にご尽力いただいた日本規格協会,シェアリングエコノミー協会,ISO/TC 324国内委員会をはじめ,国内外の関係者の皆様に改めて御礼を申し上げます。
(渡辺健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所)
国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター サービス価値拡張研究チーム 研究チーム長。工学博士。研究の専門はサービス工学、サービスデザイン、設計工学、製造業のサービス化。主な研究テーマはデジタル技術を活用したサービスシステムの設計方法論で、様々な産業分野で実証的に研究活動に取り組んでいる。標準化活動では、ISO/TC 324(シェアリングエコノミー)/WG 2(プラットフォームの運用)のコンビーナ並びに同TCの日本代表(Head of Delegation)、ISO/TC 159(人間工学)/SC 1/WG 5のエキスパートを務めている。
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