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ISOオープンコンサルテーション~パイロットプロジェクト開始

2024/10/16

 ISOは、去る4月、「ISOオープンコンサルテーション」の開始をアナウンス、パイロットプロジェクトの提案を募集した。今回、同コンサルテーションに2件の提案が採択され、パイロットプロジェクトが開始された。
 ISOオープンコンサルテーションは、標準化に関するステークホルダーの期待をグローバルに捉え、それに応えるためのISOの新しい取り組みである。

 ISO戦略2030*の3つゴールの1つである「世界的なニーズを満たす(Meeting global needs)」を達成するため、ISOは、「国際標準化の将来の機会を捉える(Capture future opportunities for international standardization)」を優先事項の一つとして設定している。

ISOでは、これを達成するために、以下の4つのレベルでプロセスを整備、改善してきた。
*ISO戦略2030(邦訳版)https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/dev/md_5150.pdf

標準化展望フレームワーク
(Standardization Foresight Framework)
トレンドを特定し、標準化にどのような影響があるか、標準化活動の可能性がある分野を特定する。
ISO Foresight Trend Reportを発行。
オープンコンサルテーション 標準化が限定的にしか行われていない分野で、標準化に対しどのような期待があるかを捉える。ISOコミュニティの外のステークホルダーの声も捉える。
戦略的諮問グループ/標準化評価グループ(SAG/SEG*) ISO内の専門家が横断的に集まり、重要なトレンドや相互に関連する事項に取り組む。スマート農業、重要鉱物、ESGなどの議論を行った実績あり。
戦略ビジネスプラン
(SBP: Strategic Business Plan)
TC/SC内でトレンドや市場ニーズをより良くとらえ、作業プログラムに落とし込む。

*Strategic Advisory Group/ Standardization Evaluation Group

 「オープンコンサルテーション」は、これら4つの中で最も新しいものであり、標準化に対する期待を幅広く吸い上げるために設計されたプラットフォームである。SAG/SEGやSBPとの大きな違いは、ISOの外、これまでISOの活動に関わってこなかったステークホルダーも広く議論に巻き込もうとする点にある。

 オープンコンサルテーションのプロセスは大きく以下の3つのステップに分けられる。

 最初の"開始"段階では、提案者からの提案に基づき、対象のトピックの選定が行われる。TC/SCへの新規格提案や新TC提案等は、各国のISOメンバーを通しISOメンバーとして行うが、オープンコンサルテーションへの提案は、ISOメンバー以外も行うことができるのが特徴である。オープンコンサルテーションでは、ISOメンバーによる提案以外にも、政策委員会(CASCO/COPOLCO/DEVCO)や外部の国際機関/コンソーシアムなどの組織からの提案も受け付ける。提出された提案は、ISO中央事務局で適格性を確認の上、理事会で採否が決定される。

 提案が採択されると、"開発"ステップに入り、オープンコンサルテーションを主導するチームが設置され、各国は参加の有無を検討することになる。参加するか否かは各国の判断によるというのは、TC/SCへの参加と同様であるが、各国からのインプットは必ずしもその国のポジション(コンセンサスを得た意見)である必要はなく、その国のステークホルダーから意見という形でもよい。さらに国際的なワークショップを行い、全般的な取りまとめを行う。

 結果は文書にまとめられ、当該トピックに関する標準化への期待を概括し、今後の対応に関する推奨を行う。例えば、当該トピックに関連する白書の作成、SAG/SEGの設置、新TC設置、パートナーシップの構築等々である。

 前述のように、オープンコンサルテーションはISOの新しいプロセスであり、今回は、パイロット運用を通じ、プロセスの改善を図り、ISOメンバーがプロセスに習熟することも狙いとしているが、同時に本来の目的の「標準化が限定的にしか行われていない分野での標準化への期待を捉える」ことも十二分に意識している。

 今回、採択されたテーマは、2件、DIN(ドイツ)提案の「resource-efficient software:資源効率の高いソフトウェア」、KATS(韓国)提案の「Positioning, Navigation and Timing services:測位、ナビゲーション、タイミングサービス」である。標準化に対するどのような示唆が出てくるか、乞うご期待である。