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日本提案による無人航空機の衝突回避に関する技術報告書がISOより公開

2024/05/01

日本提案による無人航空機の衝突回避に関する技術報告書がISOより公開

ISO/TR 23267:2024

無人航空機向け衝突回避システムの試験方法の実証結果
Experiment results on test methods for detection and avoidance (DAA) systems for unmanned aircraft systems

2024年4月15日に,ISO/TR 23267(無人航空機向け衝突回避システムの試験方法の実証結果 )が発行されました。
一般にドローンと呼ばれる小型~中型の無人航空機は、導入・活用拡大が進められる一方で、他の航空機との衝突をどのように回避するかが安全利用における課題となっております。無人航空機の衝突回避技術については、過去数年にわたり研究開発、実証実験が進められてきたところですが、今回、実証実験等の成果を取りまとめ、日本発の技術報告書として発行に至りました。

ISO/TR 23267は,2023年6月よりISO/TC 20/SC 16/WG 5(無人航空機システム-試験と評価)にて審議を行ってきました。この技術報告書の注目すべき点は,関連する規格の要求事項の根拠を示し、早期開発を進めるために日本から提案した報告書であるということです。

現在、衝突回避技術については、レーダー、光学センサー(カメラ)などを無人航空機に搭載した衝突回避システムに関してISO 15964 という規格の開発が進められています(日本および中国の共同提案)。ISO 15964の議論において、カナダ等の国より「衝突回避システムの要求事項を記載しているが、設定根拠が明確でない」という指摘があり、その設定根拠を示すために技術報告書において実証結果を記載して根拠を示すこととなりました。技術報告書の新規提案にあたっては、ISO/TC 20/SC 16プレナリー会議の場において各国エキスパートに対して提案の経緯や概要の説明を行い、その後ドラフト作成および各国との調整、議論、および投票を経て今回ISO/TR 23267が発行されることとなりました。今回の発行により今後ISO 15964の国際標準発行に向けた議論がスムーズに進むと期待されます。

ISO/TR 23267およびISO 15964の発行により、世界各国の無人航空機に関するステークホルダーが、個別に開発を進めてきた衝突回避システムに対して共通概念を提供することが可能となるとともに、国際的な無人航空機の安全利用・社会実装への貢献が期待されます。

[執筆者]
株式会社三菱総合研究所 桑島 功
ISO/TC 20/SC 16エキスパート、ISO/TR23267 プロジェクトリーダー。
ドローン関連の様々な国際規格開発に従事。