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標準化インテリジェンス-規格動向と予言の共通性(後編)

2023/06/08

後編では、周期説や予言と予測の共通性などについて伺います。

答えは自分の中にある

J:
シュワルツ氏のプロジェクトの結果を信じるならば、2050年までは地球は大丈夫だと。
角:
はい。大丈夫なんですけど、2050年まででも核戦争は起きないが、2040年辺りで、世界が一変することが起きるという結果が出てきました。
J:
その内容は分からないのでしょうか?
角:
内容は分からないんです。ただ、ものすごく変わると言っていましたね。
J:
未来を想像して議論するというのは、50年後の技術とその社会実装、標準化について考えるワークショップで私も実際に体験したことがあります。ワークショップではそれこそバックグラウンドも年齢もバラバラな人たちがそれぞれにイメージをしたので、「自分達素人のイメージで真っ当な予測などできるのだろうか」と思っていましたが、案外正しかったのかもしれないな、とお話を聞いて感じました。
角:
同じかもしれないですね。シュワルツ氏も一般人に聞いていますからね。人が潜在的に持っている能力なんだと思います。
そのほかのシュワルツ氏の2050年の予言は以下のとおりです。
  • 人々が移動しなくなる。
    角:これはメタバースのことなんじゃないかと言われています。
  • アメリカという国家は存続するが、各州が力を持つようになる。自律分散型組織で中央集権的なリーダーは居ない。
    J:DAO※1ですかね。米国CIAの戦略アナリストであるバーバラ―・ウォルターの『アメリカは内戦に向かうのか』も頭に浮かびます。
    角:そうですね。2050年までにはDAOになっているのかもしれません。
  • 人々はもう都市にいる必要は無いと考えていて住みたい場所ならどこでも住むことができ、それぞれの地域は5000人から1万人程度の小さい街になる。
  • エネルギー問題は解決していて、高さ3フィート幅3フィートぐらいの箱が一家に一台できている。
    角:常温核融合機が一家に一台ある、と私は解釈しています。
    J:スチュアート・ブランド※2が『地球の論点』で書いていた「マイクロ原子炉」みたいなものかもしれませんね。
  • 2050年までに気候変動で大変なことが起きるので、幾つかの地域では天候を制御できるように、ドーム型の施設ができている。
  • サンタモニカ、ベニス、マンハッタンビーチなどが水没する。
    角:衝撃的な予測です。
  • アメリカは大規模な民族移動が起きる。
    角:色んなところが水没してしまうので、住めないところがでてくるのでしょう。
  • 2040年から2045年までの間にとても大きなことが起きる。しかし何が起きるか分からない。そのため2050年代はショック状態にある。
    角:私は気候変動ではないかと読んでいます。
  • アジアから人間ではない人種が誕生する。
    角:これはもうすでに起きていることかもしれません。中国では「デザイナーベビー」などが実際にありますし。これをもっと進化させて人では無いものができる可能性もありますね。
  • 天然の人間が人工の人間に立ち上がって、紛争を起こす。
  • 2050年代から2060年代には意識の観点で大きな目覚めがある。今は人間しか高い意識を持っていないと考えられているが、犬、ゴリラ、タコ、植物でさえ全て意識を持っていることが、ようやく分かってくる。
    角:最近「パンサイキズム(汎心論)」という考え方があって、無機物質にも微細な意識が宿ると主張する科学者や哲学者が凄く増えてきているんですよ。2050年にみんながそれ分かるということは、2020~30年くらいから徐々にその流れは始まるんじゃないかと。
  • 抗生物質が効かなくなる。だが抗生物質以外の医療技術は非常に発達し、慢性疾患は姿を消す。
  • 外傷の手当も進化する。骨折などもスプレーで治せる。
    J:これは脱細胞化組織※3のことかもしれません。

未来は変えられる

J:
答えは実は自分たちの中にもあるかもしれないが、それをどうやって見出すかが難しそうですね。解釈といいますか。仮説とか予測を立てることは、標準化インテリジェンスにおいても難しいですし。
角:
そうですよね。でもある種決定論じゃないですけど未来は決まっているということですよね。また、情報をそのまま受け取る人もいれば、別の事象との関連を見出す人、いわゆる勘が働く人はいますよね。
J:
未来は分岐しているという話もあります。だからこそ外れる予測もありますし、そうならなかった未来もどこかには存在するということもありそうです。
角:
もちろんあると思います。ただ、シュワルツ氏が言っていたのは、人口の10%の意識が変わると未来が変わるから、そうなると違う予測になっていくということです。
J:
なるほど。そうすると、悪い未来も変えられる可能性があるということですね。
角:
そうですね。大きな流れを変えられるかは分からないですが。昨日まで上座部仏教※4のワークに参加していたのですが、釈迦の説く宇宙の理論を感覚的に少し理解できた気がしています。
ノーベル物理学賞を受賞された湯川秀樹教授も「(仏教には)今日の物理学の見解との間にある共通性を見いだす」と言っていましたし、アインシュタインも「仏教は、近代科学と両立可能な唯一の宗教」と言っています。特に、量子力学と仏教思想の共通点は注目されています。
J:
湯川教授は中間子を発見しましたが、このときの表現として「予言した」という言葉がよく使われます。つまり、初めからあることは分かっていて、それを後から計算で示したようなところがありますね。
角:
そうだと思います。アインシュタインも相対性理論があると初めから分かっていて、分かっているから計算を始めたと言いますよね。

周期説と規格

角:
予言でもう一つ重要視されているのが80年サイクルで時代が大きく変化するという「歴史の80年周期説」です。これも法則なんですけど、1日24時間、1年365日という「時間」の中で我々は過ごしていますよね?さらに25日周期の体のリズム、つまりサーカディアンリズム※5があって、これは人間だけじゃなく植物も藻類も菌類ももっていて、周期性をもっています。
さらに、生き物だけじゃなく物質的なものでも「フラクタル」という法則がありますよね。これも周期性というか規則性なので、すべてのものは規則で成り立っています。ある種の規格と言えるかもしれませんね。
そう考えていくと、80年周期説はだいたい当たっているので、2025年はやはり危ないと言えると思います。日本で言えば、1700年代宝永大地震・富士山噴火、1780年代浅間山噴火・寛政の改革、1860年代明治維新、1940年代太平洋戦争となります。ですから2025年〜2029年は危険と言えるのではないでしょうか。そんな中で予言も集中している2025年前後は特に要注意だと思います。どれくらいの規模なのかは分かりませんが。
J:
いわゆる「コンドラチェフサイクル」※6とか「モデルスキーサイクル」※7ですね。法則や周期性というのは規格的なものも感じますね。規格自体も、内容が最新となるよう、5年サイクルで定期的な見直しが行われますし。

予言と予測

J:
お話を伺っていると、「予言」と「予測」はそれぞれに言葉の意味は厳密には違っていて、一般的には予測の方が科学的な裏付けがあるもの、と説明されますが、本当はあまり違いがないのではないかと思いました。
角:
そうですよね。予測が当たるのであれば、皆幸せになっていますしね。むしろ予言以上に外れているんじゃないかとも思います(笑)
J:
有名な話で、あるシンクタンクが携帯電話は絶対に普及しないというレポートを過去に出したことがあるのですが、現実は全く逆でした。
角:
それは人間の特性で、頭がパターン化しているから予測が外れるのだと思います。どうしても自分の思考は未来に連続していると考えがちなんですけど実はループしているだけなので、未来を考えることは出来ていないのではないでしょうか。だから未来予測が外れると思うんですよね。ちなみに、アビダルマ仏教(釈迦の死後、百年から数百年の間に、仏教の原始教団から分裂して成立した諸派の仏教)では、時間は未来から現在へ、さらに過去へと流れていると考えられています。
J:
一般的には過去の行いが今に影響している、と考えがちですが、そうではないと。でもその発想の転換は結構難しい気がしますね。
ただ、ビジネスにおいても、いわゆる「バックキャスト思考」ではないですが、未来から現在を考えるというのはよくある考え方だと思います。
角:
似ているかもしれません。
J:
繰り返しですが、答えは自分自身にあるのかもしれませんね。しかも気の持ち方、考え方によって結果(未来)もある程度は変えることができると。
角:
善い行いを重ねていれば、いい結果がついてくると信じたいですよね(笑)。

リスクマネジメントツールとしての予言活用(再)

J:
あらかじめそれを知っておくというのは、当たりはずれあるにせよ、リスクとベネフィットというお話もありましたが、リスクマネジメントに関する規格もあるので、考え方としては非常に大事かなと思いました。起こるかもしれないことを常に想定して組織を運営する、個人として活動することは大事ですね。
角:
標準化インテリジェンスも予言も真意を正しく理解して、機会を捉えたり、脅威を回避したりと将来へのアクションにつなげられるものという意味では同じなのかもしれないですね。
J:
最後に、角さんにとってのスタンダードについて教えて下さい。
角:
先ほどお話したとおり、昨日まで上座部仏教のワークを受けてきたからかもしれないんですが、欲を無くした状態、これを正しいと思えることをスタンダードとしたいですね。
「これを信じたい」とかそういう欲望をもって物事を見てしまうと、見誤るなと感じました。
「この新聞を信じよう」とか、「この説は自分が今まで勉強してきたことだから信じたい」とか、その心の動きを突き詰めていくと、そこには「自分の賢さ」を固持したいとか守りたいというエゴが無意識で働いている可能性があるんですよ。それらのバイアスがかかると、正しいニュースの読み方ができなくなるのではないかと考えます。
J:
標準化インテリジェンスもそうですが、情報に接する態度として、自分をニュートラルなポジションに置くということはとても大切な事だと考えています。
角:
そうですね。でもニュートラルな状況を保つのは非常に難しいことです。さらにいえば、そうありたいと願うことも、そこに「人よりも優位に立ちたい」などのエゴが働いていた場合は、悪い欲望としてバイアスになってしまうんですよね…。複雑です。
J:
なかなか難しいことだとは思いますが、頭の片隅にそのような考え方を置いておけば、何かあってもニュートラルなポジションに自分を引き戻せるのかもしれないですね。
角:
最後に、今の世間の陰謀論バッシングみたいな風潮が本当に嫌で…。主要メディアの報道を全てウソだと決めつけて荒唐無稽なストーリーを創作する盲目的な陰謀論者と懐疑論者は全く違うにもかかわらず、一緒くたに扱われている現状に納得がいきません。懐疑論者は主要メディアも陰謀論もどちらにも疑う姿勢を持ち、より多くのエビデンスを自ら積極的に集める人のことを指すと私は思っています。

※1 DAO:分散型自律組織。Decentralized Autonomous Organization。
※2 スチュアート・ブランド:アメリカの作家、編集者。「Whole Earth Catalogue」の編集で有名。同誌の最終巻に掲載された「Stay hungry. Stay foolish.」はスティーブ・ジョブズのスピーチにも引用された。
※3 脱細胞化組織:動物などから採取した生体組織から、細胞成分を取り除いて残った組織[細胞外マトリクス(ECM)]のこと。パウダー状やゲル化した製品が存在する。
※4 上座部仏教:出家して自身の解脱を目指すことを重視する仏教。日本で普及しているのは大乗仏教であり、こちらは誰でも成仏できると説くことが特徴。
※5 サーカディアンリズム:人間の体温やホルモン分泌などからだの基本的な機能は約24時間のリズムを示すことがわかっており、約24時間周期のリズムをいう。概日リズム。
※6 コンドラチェフサイクル:旧ソビエト連邦の経済学者であるコンドラチェフが提唱した、景気循環のサイクル。50年周期としている。
※7 モデルスキーサイクル:アメリカの政治学者であるジョージ・モデルスキーが提唱した、国家覇権のサイクル。100年周期としている。



角由紀子(すみ ゆきこ)

白夜書房、BABジャパンを経て株式会社サイゾーに入社。2013年にオカルトメディア「TOCANA」を立ち上げ、2022年に独立。フリーの編集・ライターとして活動中。レギュラーTV番組「超ムーの世界R」「すみっこオカルト研究所」「ケンドーコバヤシの絶対に観ない方がいいテレビ」など。ラジオ「角由紀子の明日滅亡するラジオ」。映画『三茶のポルターガイスト』企画・出演。編集本に『東大怪談』(サイゾー)『列島怪談』(宝島社)『日本一の幽霊物件』(幻冬舎)。自身のYouTube番組「角由紀子のヤバい帝国」も更新中!