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『ムー』編集長、三上丈晴氏に聞く「未知なるものをはかるための基準」(前編)

2022/04/19

日本には中堅・中小企業等が開発した優れた技術や製品が多くありますが、この「とがった(優れた)技術」は、その先進性ゆえ、市場に出した際に周囲がその優秀さを適切に判断できない事態が生じることがあります。
ここで必要となるのが、判断基準、つまり「ものさし」としての規格です。

このような規格の開発を支援する仕組みとして、「新市場創造型標準化制度」が創設され、自社の優れた技術等を国内外に売り込む際の市場での信頼性向上や差別化などの有力な手段として、性能の評価方法の標準化など多くの成果が、現在活用されています。

同様のことは「未知なる世界へのアプローチ」についても言えるようです。「未知なるもの」に出会ったとき、その事実を客観的に分析するためにはやはり「基準」が必要となります。
そこで、人気ミステリー雑誌である月刊『ムー』の編集長であり、福島市飯野町の「UFOふれあい館」にある、国際未確認飛行物体研究所所長でもある三上丈晴氏に、判断基準としての規格、標準化とムー的世界の共通点などについてお話を伺いました。

UFOの目撃基準

JSA(以下J):
本日は、我々標準化の世界とムー的な世界との「共通点」をめぐるお話が出来ればと思います。
早速ですが、三上編集長が所長を務められている、「国際未確認飛行物体研究所」において、UFO目撃に関する「評価判定基準」を策定されたと伺いました。
もともと、UFO遭遇に関しては、ハイネック博士による分類基準1)があったかと思いますが、これとの違いや、策定の目的などについて、教えてください。
三上編集長(以下、三):
よろしくお願いいたします。そうですね。ハイネック博士がいわゆる「ユーフォロジー」という学問として、ちゃんと俎上に上げられるぐらいのデータを整理したり、統計的な手法を使おうということを最初に始めたんですよね。それまでは無かったんですよ。
J:
ハイネック博士の方法が、その後、UFO遭遇・目撃のスタンダードとして使われてきたんですね。
三:
はい。ただ、UFO研究家って、自称じゃないですか。ちゃんと研究している人なんてほとんどいないと思うんですよ。UFO愛好家は沢山いますけど。
J:
学問としてのユーフォロジーはまだ確立していないと。
三:
学問としてやるためには、ちゃんとした「ルール」がありますよね。例えば、「論文はこう書きましょう」とか、「引用部分をちゃんと明示して」とか。
そういう研究をしている方も実際にはいるんですけど、まだあまりそういう世界では無いし、そもそも地味なんですよね。

ハイネック博士の分類もざっくりした分類なんですよ。
第1種接近遭遇、第2種接近遭遇…第3種からいわゆる「UFOに乗った」だとか、そういう話になる訳ですが、今はさらに第4種とか、それ以降もどんどん勝手に作られているところがありますね。
目撃に関してはさらにざっくりで、「昼間」、「夜間」などそんな感じです。

研究でやっているところとなると、基本的に本場はアメリカになります。
ジャック・バレー博士という人が中心になって作られた、「MUFON」2)とか。メンバーが皆高齢化しちゃっていますが。
J:
MUFONは有名ですよね。

軍事とUFO

三:
UFOの破片などを科学的に分析してっていうのはアメリカの大学で行われたこともありますね。いわゆる同位体の比率の測定です。それにより、地球の物質か地球外の物質かを判別する訳です。アカデミアはそういう研究をしっかりやりますね。

アメリカは特にUFO関係は軍事問題になるんです。どこまで行っても、UFO問題は、安全保障上の本当に重要な案件になりますから。
「変なモノが飛んでいます、正体は分かりません。」じゃダメですよね。領空侵犯されているかもしれないので。でもこれは昔から当たり前のことなんですよ。
「変なのが飛んできました、戦闘機をスクランブル発進しました、でも身元は分かりませんでした。」では、軍としては、上に申し開きできないんですね。だからみんな秘密にしちゃう。
あとは怪しいものを開発していて、それが墜落などしてしまったときに、「UFOが墜落した」っていう噂を流してしまうとか。
J:
情報を隠すために使うと。
三:
それはもう軍人はやりますよ。退役軍人などを使って。
J:
以前YouTubeで「UFOという言葉は軽々しく使えない言葉なんだ」と仰っていましたよね。
三:
そうそう。UFOっていう言葉はアメリカ軍が作った言葉です。エドワード・ルッペルト大尉が作ったんですが、彼が関与した「プロジェクト・ブルーブック」3)では、最終的に「UFOは国家の安全保障上の脅威にはならない」という結論で終わるんですよね。大体この手のレポートはこういう結論で終わるんだけれども、2021年のアメリカ軍及び政府、議会が承認した正式な報告書の中では「安全保障上の脅威になり得る」という一文が入っているんです。この一文は非常に重要です。
J:
映像も公開されていましたよね。
三:
そうですね。ただ、今ネットなどで流れているUFO映像は、まぁ十中八九ニセモノですよ。CGです。
J:
なるほど(笑)
三:
今は本気でCGを作られてしまったらウソかホントか見分けがつかない時代ではありますが、「出どころがはっきりしていること」、例えば軍が映像だけじゃなく、ちゃんとデータを収集して、映像にしてもカメラ一つだけじゃなく、さらに気温だとか周辺データをきっちり取っているとなると、やっぱり信頼性が違うんですよね。

軍としてみれば、別に異星人を観測するためじゃなくて、本当に敵国の秘密兵器があるのかを知るために行う情報収集ですから、本気ですし、相当力を入れている訳です。
ちなみに収集されているのは映像だけじゃないんです。もちろん公表はしないけれども。
J:
自衛隊もあまりそういう話が出てきませんね。
三:
自衛隊も出さないですよ。でも現場の自衛隊、例えば航空自衛隊のパイロットは見ているんです。
演習をやる際、戦闘機の場合、2機で並んで飛ぶんですが、その真ん中にドラム缶のような金属の大きいものがぐるぐる回ってパッと消えていくとか。
でもそれは必ず撮影しているんですよ。撮影して全部目視もしている。けれどもそれは公表されないんです。軍事上の機密ですから。
J:
そういえば、防衛庁は「宇宙作戦隊」を創設しましたよね。
三:
「宇宙作戦隊」はアメリカのトランプ政権時代にできた、「宇宙軍」に呼応する形でできました。当初は「スペースデブリの掃除」が目的と説明していましたが、アメリカの宇宙軍とのトップ会談後に説明が変わり、「UFO遭遇マニュアル」を作成することになった訳です。

ニセモノの見分け方

J:
さて、UFOの目撃基準に話を戻しまして、今回の基準はどのような区分で評価を行うものなのでしょうか?
三:
大きくは「CLEAR Level」と「MYSTRY Level」の二つに分け、それぞれ4つに細分しています。実際の評価は両者の組み合わせで行う方式を取っています(下記)。
未知なる世界について、誰もが理解できるようにするためには、このような「ものさし」は必要不可欠です。こうした「ものさし」に基づいてエビデンスを評価することは正しい理解にも繋がります。これは、規格の世界でも同じことが言えるのではないでしょうか?
J:
おっしゃるとおりです。以前、『ギネスブック』の公式記録員の方にご寄稿いただいたのですが、新しい記録を認定する際に一番重視しているのが、「再現性」と「標準化」なのだそうです。これにも共通する話かもしれません。

UFO評価判定基準(国際未確認飛行物体研究所HPより作成)

J:
では逆に「ニセモノ」を判断する際の基準なり、方法などはあるのでしょうか?
三:
今は皆さんスマートフォンなどを持っているので、「UFOを撮影した」という機会が増えているんですが、UFOに関しては、圧倒的に「後で気が付く」パターンが多いんですよ。
J:
撮った写真を後で良く見たら映っていた、ということですね。
三:
そうです。では、その中でニセモノを判断する基準ですが、実はごく簡単なことで分かるんですよ。これでふるいにかければニセモノは99%分かります。

図1

こういう画像(図1)ですね。トリミングしないこのような状態の画像があって、上空にUFOらしき光があったとします。
画像を見た瞬間に、UFO以外に強い光体が映っているケースがあるんです。街灯とか。このときすぐ疑われるのが、「レンズゴースト」4)です。

ここで、トリミング無しの状態で対角線を引きます。対角線を2本引くと中心点が出ますよね。これがレンズの中心になる訳ですが、これがレンズゴーストである場合、この光体とUFOらしきものとを対角線で結ぶと、必ずこの中心を通るんです(図2)。
レンズ越しだと上下逆さまに映り込むので、例えば光体が「街頭の光」だとすると、よくよく見ると街灯の傘の部分がうっすら見えたりします。

図2

J:
UFOが飛んでいる状態を撮影するケースは少ないのですね。
三:
ほぼ無いですね。UFOを撮影した、とされる画像は大体が夜です。解像度が低すぎてそもそも画像解析できないんですが、点滅しているとほぼそれは飛行機ですね。あとは人工衛星とか。
怪しい光はいっぱいあって、何か変なものが飛んでいることは間違いないんですが、まずこういうチェックをすればほぼニセモノが弾けます。
J:
いわゆる「誤認」ですね。
三:
本当はレンズゴーストもモニターに映っているんだけれども、撮ろうとする被写体の方に意識が行っちゃうから、認識されないんですよね。

特に構図として、上半分が大体こういう夜で、暗いわけですよ。画面の下半分に明るいものがあると綺麗に夜空とコントラストなります。
こういう撮り方は普段だと意図的に撮らない限り中々しないのですが、例えば東京タワーを撮るとなると見上げる(カメラを上げる)じゃないですか。そうするとこういう構図になるんです。

あと被写体までの距離が遠いと対象が小さいので、解析できない。
逆に大きいものが映ったというケースでは、被写体までの距離が近いということが多いです。虫とか。
J:
素直に考えると、携帯電話の登場によりカメラを持つ人が世界中に増えたので、UFOの目撃例も増えるように思えるのですが。
三:
先ほどお話したとおり、「UFOを撮った」っていう人はいっぱいいますね。でも大体はこういう絵柄(図1)ですよ。
あとは、「ショート・コントレイル」と言って、飛行機雲が途切れ途切れになったりするんですよ。これが夕日に照らされるとすごく光るんですね。これをUFOと誤認することがよくあります。

1)アメリカ空軍UFO研究機関の顧問を務めたジョーゼフ・アレン・ハイネック博士による、主にUFOとの接近遭遇に関する分類。遠距離からの目撃分類もある。
2)Mutual UFO Network。1969年にアメリカで設立された、民間のボランティアで構成されるUFO目撃情報を研究する非営利団体。
3)1952年に開始されたアメリカ空軍が行ったUFO調査プロジェクト
4)カメラのレンズに強い光源が当たった際におきる、レンズ内面での反射でおきる光の漏れ。レンズフレアとも言う。



三上丈晴(みかみ たけはる)

1968年生まれ、青森県弘前市出身。 筑波大学自然学類卒業。
1991年、学習研究社(学研)入社。『歴史群像』編集部に配属されたのち、入社半年目から「ムー」編集部。2005年に5代目編集長就任。CS放送エンタメ~テレ「超ムーの世界R」などメディア出演多数。趣味は翡翠採集と家庭菜園。


【書籍タイトル】オカルト編集王〜月刊「ムー」編集長のあやしい仕事術〜
【価格】¥1,540(本体¥1,400)
【発売日】2022年6月2日(木)
【発売元】学研プラス
【書籍内容】
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