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「燕三条鉄アイス」に見る「社会、地域貢献」としてのものづくり

2021/05/07

2021年4月24日に発売された、「鉄の味」がする話題のアイスである「燕三条鉄アイス」。
当会Twitterでご紹介したところ、大変な反響を巻き起こしました。

商品に関するレビューは各報道機関が既に伝えているところですが、当会では、中小企業にとっての「社会、地域貢献」の在り方や、商品開発のプロセスに焦点を当て、「燕三条鉄アイス」の開発者である株式会社プラスワイズ 常務取締役の芳賀様にインタビューを行いました。

JSA(以下、J):
初めに、株式会社プラスワイズ(以下、プラスワイズ)について教えてください。
芳賀常務(以下、芳):
当社は「日本中・世界中の農家を支える販売サイト」の運営を主とした企業でして、私が担当する食品事業部は2020年秋に出来た部門になります。
J:
燕三条鉄アイス」では学生とのコラボレーションがあったと聞いていますが、学生にはどのようにしてアプローチをされたのでしょうか?
芳:
プラスワイズは社員16名で、平均年齢が36歳ほど、30~40代前半が中心で20代の社員が1名しかいませんでした。
3年前までは中途採用のみだったのですが、採用を通じて社会貢献をしたいという思いもあり、新卒採用を始めました。残念ながら中小企業には有名大学の学生が就職活動に来るというケースはあまりなく、学生の獲得に苦戦を強いられます。そこでプラスワイズでは学生と直接交流を行うことにしたのです。
具体的には、学生と地域貢献をすることを目的とした「新潟ベース」という学生団体とお付き合いをしています。
「新潟ベース」は、言うなればサークルのようなイメージのものですが、新潟大学や新潟県立大学の学生が中心で、非常に優秀な方が多くいます。就活イベントなどもされており、最近では「Gozzo(ゴッツォ)」という生産者の方と繋がることができるグルメオンラインイベントなども開催されています。
J:
インターンの受け入れもされているのですよね。
芳:
はい。新潟ベースとの縁があり、プラスワイズではインターンの受け入れも行っています。インターン活動に外部(新潟ベース)を活用すること自体がPRに繋がる部分もあるため、力を入れています。
J:
インターンの学生はどのような仕事に取り組むのでしょうか?
芳:
当初は企画をやってもらうなど、学生に自由にやらせていましたね。学生は「とりあえずやってみる」という姿勢で何にでも取り組みます。もちろんこれは良い面もあるのですが、失敗もあります。また、学生主導で企画し、ヒット商品を作ることは難しく、しっかりとした出口戦略を立てることの必要性を痛感しました。やはり、受け入れ側である企業がしっかりとハンドリングをしなければいけません。
この経験から、今回の「燕三条鉄アイス」は、私がリードし、インターンの方には試食イベントの手伝いや商品に対する感想の収集などを主に担当いただきました。
また、学生には、まず観光データを分析することをしてもらいました。観光で訪れる方は、新潟市ではお土産として食品を購入されるのですが、三条にくると金物だけを購入されていることがデータとして改めて分かりました。
J:
エビデンスをベースに思考することは学生にとっても良い経験になると思います。
芳:
せっかくインターンに参加いただいているので、学生には何か得るものを渡したいと考えています。これも社会貢献の一環と捉えています。
J:
「燕三条鉄アイス」は学生のアイデアだったのでしょうか?
芳:
いえ、こちらは私のアイデアになります。先ほどのデータのとおり、三条の農家には、「金物のイメージは覆らないから食品はお土産としては売れない」と考える方が多かったので、これを変えたいという想いがありました。
もともとものづくりが好きで、学生時代にもゲームを作ったり、デザインの素材を作ったりしていました。面白いものを考えて作るのが好きで、ものづくりアワード2020では「伝説の剣ペグ」を出品し、特別賞をいただきました。また、私自身が中途入社でして、前職ではお餅を扱う食品会社で企画の仕事をしていました。
J:
アイデアを実際に形にするのはとても難しいことだと思います。
芳:
そうですね。アイデアは企画するまでが楽しく、正直ものを作らない方が楽ではあります。ただ、前職の経験から、アイデアを実際に形にしていく際のコスト面や生産面など、現実的な部分も考え合わせながら、覚悟をもって最後までやり遂げる思考やマインドが身に付きました。様々な要因から企画がボツになってしまうこともありますが、それも恐れてはいません。
J:
「ヒット商品をつくるコツ」や「商品開発における留意点」などがありましたらぜひお聞かせください。
芳:
そうですね…アイデアを人に話したうえで、「面白いね」と言ってもらえたものを作ることでしょうか。
「燕三条鉄アイス」より前にも、新商品は常に開発をしていましたが、商品が良くても、広報が弱いと売れないということが身に染みて分かりました。あとは営業ですね。前職では専門の部署がそれらを行っていましたので、あまり気にすることは無かったのですが。やはり、営業と広報が大切だと感じています。
また、今回はメディアにプレスリリースを出す際も、コンサルの方と戦略を練ったり、地元のキーパーソンに試食をしてもらったり、イベントに出たりなど、「ファン」を育てていくことに力を入れました。もちろんその根底には地元を活性化したい、社会貢献をしたいという想いがあります。今回のケースではプラスワイズ、学生、地域それぞれがwin-winの関係になり、良い循環が生まれ、それが結果的にヒットに繋がったのではないかと考えています。
J:
サービス分野で近年盛んに言われている「共創」を実践された事例と言えますね。お話を伺っていて、プラスワイズが「社会貢献」をとても重視されている企業と分かりました。最後に今後の目標をお聞かせください。
芳:
食品事業部として、農家・地域を応援し、プラスワイズとしても収益を出しながら引き続き地域・社会への貢献を続けることです。企業による社会貢献の意義ついて、今後も様々な形で発信していきたいですね。

※「燕三条鉄アイス」は、JAにいがた南蒲の農産物直売所「ただいまーと」にある「Gelateria COCO」で販売されている。今後はふるさと納税の返礼品やネットでの販売も予定。


芳賀 聡



株式会社プラスワイズ 常務取締役