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レナ(元バニラビーンズ、現アイドル研究家)による、アイドル戦国時代を勝ち抜くリーダー論、組織論(後編)

2020/03/09

前編ではレナさんにアイドルの差別化戦略などついてお話を伺いました。
後編ではアイドルにとってのリーダー、ライバル、セカンドキャリアなどについてお伝えします。

J:バニビは、レナさんがリーダーだったんですよね。

レ:はい。実はリサの前に、別の相方がいたんです。当初はその子をデビューさせるためのグループがバニビでした。なので、私はリーダーどころか、ただの付属品だったんです。でも、彼女がすぐにやめてしまい、リサが加入することになって、私がリーダーになりました。人を引っ張る性格ではないのですが、事務所の社長から、年齢も上だし、加入したのも早かったのだから当然だろう、という感じでしたね。

J:リーダーとしてのご自身の働きをどのように評価していますか。

レ:どうでしょう(笑)。ただ、バニビは二人組でしたが、第三のメンバーとして、マネージャーさんの存在は大きかったですね。特に最初のマネージャーさんはお母さん的な存在でもあり、あれこれとコーチングしていただきました。アイドル活動においては、この三角形はとても重要だったと思います。音楽面でも、レコード会社のアーティスト担当と呼ばれる人がついてくれたので、リサと二人きりという形ではなく、チームとして考えて動くことができました。そのためか、バニビは11年間の活動で一度もケンカしたことがないんですよ。

J:それはすごいですね。

レ:でも、そこは悪い面もあって、話し合いができていない、本音のぶつかり合いがなかったとも言えるんです。昔は事務所からもよく二人で話し合えと言われていました。お互いがお互いの出方を読み合う、大人のグループだったんです。仲が悪いわけではありませんが、良かったわけでもない、という感じですね。実はそもそも私は、二人組のアイドルはあまり良くないと思っているんです。ファンがゼロイチというか、「私はどっち派」となってしまい、もう一人がダメと思われてしまう。二人組ならニコイチにならなければいけないはずなのに、比べられてしまうので。多分、成功した二人組って、Winkさんくらいですよね。

J:そういう視点を持ったことはなかったのですが、とても説得力があるお話しですね。活動期間が11年間もあると、アイドルの横の繋がりも多かったですか。

レ: それは2010年くらいからですね。この年、初めてTOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)が開催されたんですが、そこで初めて「アイドルってこんなに大勢いるんだ」と気づきました。これに出演できたのは大きかったです。今まで手探りでライブしていたのが、目の前で他のグループのパフォーマンスを見られたわけですから。

J:ライバルの存在を間近に感じられたと。

レ:それもありますし、良い影響を受けることもできました。大所帯のグループでリーダーを任されている子なんかは、しっかりと他のメンバーを叱ったりしていて、見習いたいと思いましたね。同時に、自分たちが業界内では年長の方だと気づいて、他のアイドルのお姉さんにならなきゃいけない立場なんだと感じました。

J:ライバル、いわば敵とも言える他のグループに対して、そのような感情を持ったのは、どういう理由なんでしょう。

レ:自分たちだけが目立って売れるのではなく、アイドル業界全体が盛り上がらなければ、未来は明るくないと思ったんです。それ以来、ライバルというか、他のアイドルの子たちと積極的にコミュニケーションを取るようになりました。

J:それはオープンイノベーション的な思考を持つ企業によく見られる動きと近いですね。つまり、シーンを活性化していくためには真似られることを許容する。自社のコアとなる部分を開放しても構わないという考え方です。急にビジネスに話を振ってしまったのですが、アイドルの数字への意識というのはどんな感じですか。具体的にはCDセールスなどのことですが。

レ:バニビは途中でマネージャーさんが変わったのですが、後半の方は全て数字で説明してくれる、しっかりとしたビジネスマンでした。その分正直、色々と辛かったですね。だから、SNSで「チケットがあまり売れてない。どうしよう」なんていう泣き言を呟いてしまい、社長に怒られたりもしました。個人的には、アイドルに数字は似合わないと思うんです。目の前のことに専念しろ、と言われた方が良い結果を出せる気がします。

J:レナさんの感想は、従来型の「達成型組織」に対する否定感とも取れますね。そのような組織に課せられるのは「自分たちが動かなければ組織が滅ぶ」というプレッシャーであって、もっと言えば「恐怖をベースとしたマネジメント」とも言うことができると思います。アイドルの場合、設定という枠組みの中にいながらも独自性を求められるお仕事ですので、「直接的動機」に基づいた活動の方が適しているのかもしれませんね。さて、現在はアイドル研究家としても活躍されているレナさんですが、もし自分がアイドルグループをプロデュースするとしたら、どんなことを考えますか。

レ:先ほどお話しした通り、二人組は良くないと思っていますので、三人以上の“奇数”でグループを作りたいですね。そして、若いファンをいかにして取り込めるかを考えます。従来のアイドルファンをターゲティングすると、どうしてもパイが限られてしまうんです。一定数はいるものの、それほど多くないファンの方たちが、どの子を「推し」にしようか探しているような状況なので。

J:若いアイドルファンはあまり多くないのですか。

レ:相対的には多くないと思います。というのも、現代の若い人たちはインターネットから得る情報量が多いので、目も耳も肥えているんです。その意味では、アイドル無法地帯と言えるような時代はそろそろ終わりかもしれませんね。今後はこれまでの反動で、アイドルにも一流の歌と踊りが求められると思います。自分がプロデュースするなら、実力派を育てたいですね。

J:そんな実力派のアイドルを目指す方には、どんなアドバイスを送りますか。

レ:アイドルというのは、ファンの方の人生全てではなく、ある一瞬を満たすための存在だと思っています。それはアイドル自身も一緒です。松田聖子さんみたいに一生アイドルでいられる人はほとんどいません。今という一瞬一瞬を楽しんで、特に女の子は器用に生きてほしいです。アイドルの後の人生の方が長いですから。

J:ここ最近も、大人数アイドルグループからのメンバー卒業が続き、話題になっていますね。セカンドキャリアを成功させる人とそうでない人の違いというのは、何かあるのでしょうか。

レ:一概には言えませんが、大所帯であれば、グループの端っこにいる子の方が成功するケースが多いですよね。一つにはトップアイドルほど、「元○○」という肩書に縛られてしまうからだと思います。良くも悪くも、元アイドルという言葉の持つ力は大きいんです。例えば、女優に転身したとして、演技が上手ければ「元アイドルなのにすごい」となりますし、逆に下手なら「元アイドルだから、期待する方が間違い」となりますよね。

J:有名グループほど「元」の肩書は、良くも悪くも、強い反動が来る、と。一般の会社でも、有名企業の元役員なんかは期待されるハードルが上がってしまうので、同じことですね。

レ:それに、グループの端っこにいる子は、末っ子気質に近いものがあって、要領が良くなると思うんです。グループ全体を客観的に眺めることができるので。あと、何でも器用にできるマルチアイドルは、セカンドキャリアで成功しづらいですね。笑いのセンスだったり、毒舌だったり、どこか突き出た部分がある人の方が残るように思います。結局、グループの肩書が外れたら、その人自身で勝負するしかないですからね。

J:このページの読者にアイドル志望の若い女の子は少ないと思いますが、その親御さんは大勢いるような気がします。最後にメッセージをお願いできますか。

レ:はい。人は何か集まるきっかけがほしいんです。そのきっかけを作るのもアイドルの重要な機能だと思っていますので、ぜひ応援してあげて下さい。

J:今日はどうもありがとうございました。今後の活躍も応援しています。

レナさんの「CDの売上など、数値的なKPIを立てられていくより、目の前のことに専念したかった」というそれお話は、昨今話題の「ティール型組織」を彷彿させます。ジャック・アタリではないのですが、日本のアイドルを巡る一連の動向は「来たるべき時代を告知」しているようにも思えます。今回のインタビューが皆さまの仕事や組織にとってのヒントとなれば幸いです。

おまけ
バニビにわかファンの編集部職員が選ぶオススメ曲(全てYouTubeでPV視聴が可能です)

  • ノンセクション
    「しょせんアイドルでしょ」の声を一蹴する極上の失恋ロックチューン。前向きな歌詞にもグッときました。
  • チョコミントフレーバータイム
    勝手に身体が踊り出します。気分が沈んだときにピッタリ。バニビさんから元気をもらえますよ。
  • プリーズミー・ダーリン
    キュンキュンしたければ、これです。王道のアイドルソング。


レナ
タレント、女優、アイドル研究家


アイドルユニット「バニラビーンズ」の一員として2007年にデビュー。
「実験型次世代アイドル」として注目を集め、2人組アイドルの系譜を継ぐ存在として活躍。
2018年10月新宿ReNY「T-Palette Records Presents バニラビーンズに感謝祭 ~Final Innocence~」のLIVEを最後に惜しまれつつも解散。
アイドルとしての活動の他、タレント、女優、番組MCなど幅広く活動中。

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