
コラム 知財人材のニーズ増加
2019/05/01
知的財産戦略の第一人者として国家資格化されている「知的財産管理技能士」の検定合格者が、9万人を突破した。2008年の第1回試験実施以来、資格取得希望者は着実に増え、合格者10万人の大台が目前に迫る。標準化と知財を組み合わせた〝オープン&クローズ型ビジネス〟の存在感がグローバルで増す中、基盤となる人材を育てる仕組みとして、さらなる利用が期待される。また、資格取得者が今後どんな活躍をするかも、注目される。
知的財産管理技能士は特許、意匠、商標、メディアコンテンツといった企業・団体の知財を適切に管理・活用するための能力を認める国家資格として、2008年に創設された。能力水準は1級から3級の3階層に分かれ、また1級は「特許」「コンテンツ」「ブランド」の3区分ごとに試験が実施されるのも特徴である。経済産業省が知財人材のスキルを明確化すべく2007年に定めた「知財人材スキル標準」が、この資格の骨格を成す。
資格利用者の増加は、知財に対する関心の高まりの表れと言えよう。昨今は標準化で社外と連携し市場を広げつつ(オープン)、社内に持つ知財で差別化(クローズ)する2本立てのオープン&クローズ型ビジネスが一般化。グローバル競争で優位に立つには、戦略性のある知財管理・活用が不可欠となり、担い手となる知財人材の重要度が増している。
資格取得者数の内訳を見ると、前述した3区分の専門職を対象とする1級は2000人強、管理業務従事者向けの2級と3級はそれぞれ約3万2000人、約5万8000人。知財利用の高度化に伴い、1級に相当する〝スペシャリスト〟の活躍の場は、さらに増えると見られる。
また受験者数の職種では、全体の約18%を占める知財・法務関連がやはり多く、同じく約18%の学生がこれに並ぶ(2013年11月試験~2015年7月試験の任意アンケートより、知的財産教育協会)。業種別ではトップの製造業が約37%で2番手の情報通信業は約14%(同)。特許の利用機会が広がっていることを考えると、今後は受験者の顔ぶれもさらに多様化しそうである。
一般財団法人日本規格協会
標準化総括・支援ユニット 標準化企画調査課長
プロフィール
JIS、国際規格等の開発に13年以上従事。
現在は「新市場創造型標準化制度」に基づく規格の開発・管理を行っている。