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ISO/TC 312(サービスエクセレンス)第11回国際会議(北京)レポート

2024/03/05

サービスエクセレンスの国際規格を開発するISOの専門委員会TC 312(サービスエクセレンス)の 第11回国際会議が2024年2月26日~29日の4日間,北京で開催された。 会議は,CNIS(中国標準化研究院)のホストで行われ,この会議には, 幹事国であるドイツ,中国,日本,インド,バルバドス,キプロス,スペイン,ロシアから約30名が参加した。

今回の会議では,新たな提案であるサービスエクセレンスの実装をサポートする ISO/AWI TS 19380(実装アプローチ)や組織の現在地を確認するためのISO/AWI TS 19387 (成熟度モデル), ISO/AWI 19384(サービスエクセレンスを達成するためのデジタルアプローチ適用のガイドライン)などの新たなプロジェクトの議論が行われた。


主な決議事項は以下のとおり。

・ISO/AWI TS 19380(実装アプローチ)について,TCレベルで意見照会を開始する
・ISO/AWI TS 19387 (成熟度モデル) について,TCレベルで意見照会を開始する
・新たに設置されたWG 5 (デジタルサービスサービスエクセレンス) について,エキスパートの募集を行う
・次回のISO/TC312総会を2024年2月にバルバドスでの開催する方向で調整する

ISO/TC 312会議期間中には,CNIS主催によるサービスエクセレンスカンファレンスが開催され, ISO/TC 312のマティアス ゴッチェ議長,水流WG 2コンビーナらが登壇, また会議終了後の最終日には,テクニカルビジットとして,バイドゥ本社を訪問した。

■北京総会に出席して

このTCからは,既に3つの規格,ISO 23592(原則とモデル), ISO/TS 24082 (卓越した顧客体験のための設計活動), ISO/TS 23686(サービスエクセレンスの運用にかかる計測)と1つの事例集, ISO/TR 7179(サービスエクセレンス実現のための事例集)が公開されています。 前者のISO 23592とISO/TS 24082 は,JISが,ISO/TS23686とISO/TR 7179は, 翻訳版が発行されており,日本の皆様の利用を支援しています。 ISO/TC 312には,規格開発を行うための4つのWGが設置されており, 今回から新たにWG 5(デジタルサービスエクセレンス)の議論が開始しました。

今回の会議のホストであるCNIS(国家標準化研究院)は, ISO/TC 312会議期間中に“サービスエクセレンスカンファレンス”を開催しました。 中国のサービス研究者・企業経営者からの発表に加え, ISO/TC 312からはゴッチェ議長(ISO/TC 312及びISO 23592:サービスエクセレンスの原則とモデルについて)と 水流(ISO/TS 24082:エクセレントサービスの設計活動について)が講演を行い, サービスエクセレンス及びエクセレントサービスの設計に関する学習の場が提供されました。 現地会場には100のスクール形式の座席があり満席であり,オンラインから17000名が参加する,大規模なカンファレンスとなりました。



また最終日の午後には,北京市内の百度(バイドゥ)の見学があり, 同社の歩みや最新のICT/AIの紹介があったほか,自動運転乗車などを体験することができました。 中国という国の積極性と学習環境の提供速度と規模に対して,日本は学ぶべき点があると感じさせられました。

今回の会議を通して,ISO/TS 19387(成熟度モデル)とISO/TS 19390(実装のためのアプローチ)が2025年の発行を目指して, 議論を進めております。これらの規格群と事例集が揃うことで, 日本の企業や組織の皆様が顧客毎の価値を実現する優れたサービスを提供できる組織能力や設計の仕組みを 構築していくことを強力に支援できるようになると考えております。 国際的競争力を向上させ,国内産業の活性化のために,ぜひこれらの国際規格を活用していただけますと幸いです。

[ジュネーブ事務所]



水流 聡子
TSURU SATOKO

東京大学 特任教授

《現所属》
 ISO/TC 312国内委員会委員長
 ISO/TC 312/WG 2(サービスの設計)コンビーナ