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JIS Y 17100発行! 翻訳サービスの標準化

2021/07/28

翻訳サービスの国際基準

翻訳業界の現状
 グローバル化により日本国内の翻訳市場は堅実に拡大してきましたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、業界によっては翻訳の発注者であるクライアント企業の業績を悪化させているケースも多く、その影響は発注減という形で翻訳業界にも及んでいます。しかし、翻訳需要そのものが無くなっているわけではありません。従来型のB to Bの翻訳だけではなく、インターネットに投稿されるコンテンツ「User Generated Contents(UGC)」への対応をはじめとした潜在的な翻訳ニーズは拡大しており、いずれ市場は回復すると考えられます。

機械翻訳の進展
 ここ数年、AIの発展もあり機械翻訳の精度は向上していますが、文脈の考慮や適切な意訳など、まだプロの翻訳者のレベルには達していません。一方で、クライアントからは機械翻訳された訳文の修正、すなわち“ポストエディット”の依頼が増加しているという現実もあります。機械翻訳の進展により、翻訳者にはポストエディットに対応した「スピード」や「コスト」、さらにはツールを使いこなす「スキル」も求められる時代になりました。しかしながら、そのような潮流にあっても、訳文の「品質」が重要であることは変わりません。

ISO17100認証(翻訳サービス提供者認証)とは

翻訳サービス提供者認証とは?
 「翻訳サービス提供者認証」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?この制度は、認証機関が、翻訳サービスの質を審査し、登録・公表する制度です。認証を取得することで、組織は国際的な品質基準を満たしたサービスを提供していることを証明できます。ISO 17100はこの「翻訳サービス」の要求事項を定めた国際規格です。


 図:ISO 17100認証制度のイメージ

 本規格では、人的資源(翻訳者、チェック者、プロジェクトマネージャーなど)、技術的資源、および業務プロセス(準備段階、制作段階、制作後)に対する要求事項が規定されています。認証制度では、翻訳サービス提供者の翻訳プロジェクトがこれらの要求事項を満たしているかを定期的な審査で確認します。

 図:ISO 17100翻訳ワークフロー図
   審査では図に示した各工程の文書や記録を確認する。

翻訳サービス提供者認証の必要性
 なぜこのような認証が必要なのでしょうか?顧客が求める品質の高い翻訳サービスには、翻訳実務者の力量管理や、セキュリティの確保、および業務プロセスの管理が適切であることが求められます。
 翻訳サービス提供者認証の取得により、ISO17100(JIS Y 17100)という国際規格を満たす翻訳サービスを提供できることを証明できます。

ISO17100認証を取得するメリット
 ISO17100認証取得のメリットは社外へのアピールだけにとどまりません。
 ISO 17100 (JIS Y 17100)を取り入れることで、組織内の仕事の仕組みを見直すきっかけとなります。審査準備段階でISO17100 (JIS Y 17100)への適合性を確保するため、場合によっては既存の業務プロセスの見直しが必要となります。従来の業務プロセスをISOという国際規格と照らし合わせて見直すことで、よりよい仕組みを構築するきっかけとなります。さらに定期的に審査を受けることで、業務プロセスの適切性、有効性を維持できていることを確認する機会を持つことができます。

JIS Y 17100:2021制定

 翻訳サービスの国際規格であるISO17100は2015年に制定され、2017年に追補が発行されました。一方、日本国内で標準化活動の基盤となっていた工業標準化法は、2019年7月にデータ、サービス等への標準化の対象拡大等を目的とした、産業標準化法に改定されました。
 この産業標準化法の規定に基づいて、一般社団法人情報科学技術協会(INFOSTA)および一般財団法人日本規格協会(JSA)は、ISO17100:2015とAmd.1:2017を統合した翻訳サービスの規格化を申し出ました。その結果、2021年3月、ISO17100は日本産業標準調査会の審議を経て経済産業大臣が制定した日本産業規格(JIS Y 17100:2021)となりました。我が国のサービス標準化政策推進のモデルケースの1つとなるものです。

ISO 17100の現状と今後

 現在日本国内でISO 17100の審査・登録を行っていることを公表している認証機関は日本規格協会ソリューションズ株式会社だけです。2021年4月時点で登録件数は50件を超えており、登録組織様は会社全体、部署単位、個人でのご登録など多様です。対象言語も英語だけではなく、多言語に対応しています。
 2021年3月にJIS Y 17100が発行されましたが、JISという日本の国家規格となったことで、今後国内の認知度は高まっていくことが期待されます。様々な業界で、この認証は品質の高い翻訳サービスを提供できる証明となるという認識が広まれば、ISO 17100の認証取得を目指す翻訳サービス提供者が増加するでしょう。ISO 17100の認証を取得した翻訳サービス提供者が増えれば、翻訳業界全体の信頼性向上につながります。

翻訳に関する国際規格

 翻訳に関連した国際規格は、ISO 17100 (JIS Y 17100)の他にもあります。

ISO18587(機械翻訳)
 ISO 18587:2017『翻訳サービス-機械翻訳の出力のポストエディット-要求事項(Translation services -- Post-editing of machine translation output – Requirements)』は、ISO 17100 (JIS Y 17100)で対象外とされている機械翻訳のポストエディットについて定められた規格です。翻訳サービス提供者、クライアント、ポストエディターに求められます。
 なお、本規格はフルポストエディット「人による翻訳によって得られる製品に匹敵する製品を制作するためのポストエディットのプロセス」を対象としており、ライトポストエディット「人による翻訳によって得られる製品に匹敵する製品を制作しようとすることなしに、単に理解可能なテキストを得るためのポストエディットのプロセス」は対象外です。

ISO11669(翻訳プロジェクト)
 ISO/TS 11669:2012『翻訳プロジェクト-一般指針(Translation projects -- General guidance)』は、翻訳サービスを依頼する人、翻訳サービス提供者、翻訳サービスを利用する人、翻訳プロジェクトに関わる全ての人を対象とした規格です。プロジェクト関係者間のコミュニケーションを促進することを目的としており、翻訳サービスに一貫して関わる指針を規定しています。

ISO20771(法的翻訳)
 ISO 20771:2020『法的翻訳-要求事項(Legal translation -- Requirements)』は、法的翻訳サービスの品質について規定された規格です。法的翻訳は専門性の高い内容を扱う分野であり、時に法的な影響を考慮する必要があります。公的な文書や機密性の高い文書を対象とするため、プロジェクト関係者の専門性、機密保持能力、倫理性、さらには情報セキュリティについて高い基準が求められることがあります。
 本規格は法的翻訳者の専門的な力量の維持・更新、チェック者の資格・力量、法的翻訳プロセスの管理について定められています。ISO 17100 (JIS Y 17100)と同様にポストエディットは対象ではありません。

ISO 17100認証について詳しくお知りになりたい方は審査登録事業部サイトまで。

関連情報

『JIS Y 17100:2021
翻訳サービス―翻訳サービスの要求事項』
Translation services -- Requirements for translation services

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