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製造ライン上の自動全数検査を支える受入検査の標準化(JIS B 7446-1:2026 産業用ロボットを用いた非接触座標測定システム-受入検査-第1部:置換測定法)

製造ライン上の自動全数検査を支える受入検査の標準化(JIS B 7446-1:2026 産業用ロボットを用いた非接触座標測定システム-受入検査-第1部:置換測定法)

2026/07/02

 一般財団法人 日本規格協会(本部所在地:東京都港区、理事長:朝日弘)は、産業用ロボットに非接触センサを取り付けて製品の三次元形状・寸法を測定する「非接触座標測定システム」の受入検査方法を定めた新しい日本産業規格 JIS B 7446-1:2026「産業用ロボットを用いた非接触座標測定システム-受入検査-第1部:置換測定法」(Optical coordinate measuring system using industrial robot-Acceptance tests-Part 1: Substitution measurement)を、2026年2月20日に発行しました。本規格は、リンクウィズ株式会社が提案者となり、新市場創造型標準化制度を活用して制定されたもので、製造ライン上での非接触三次元座標測定による全数自動検査の信頼性確保と普及を後押しすることが期待されます。

製造ラインの産業用ロボットの先端に非接触センサを取り付け、製品形状を測定する様子

制定の背景

 産業用ロボットは、自動車部品をはじめとする製造設備として広く導入されてきました。その用途はこれまで「ものを造る」工程が中心でしたが、近年は「ものを測る・検査する」工程にも活用が広がっています。

従来、製造工程での寸法検査は、検査員が治具(ゲージ)を使って行う全数検査や、ロットからサンプルを抜き取る抜取検査が主流でした。しかし、これらの方式には、以下のような課題がありました。

  • 検査員の技能・経験に依存し、品質のばらつきや属人化が避けにくい
  • 検査室への搬出入や治具の段取り替えに時間とコストがかかる
  • 抜取検査では不良の見逃しリスクが残る
  • 検査データの蓄積・分析が手作業で煩雑になりがち

 これに対して、上記の画像に示すように、製造ラインの産業用ロボットの先端にレーザー照射式などの非接触センサ(2Dレーザープロファイラー)を取り付け、製品形状・寸法を効率的に測定する方法が新たに実用化され、普及しつつあります。製品検査室を経由せずにライン上で全数検査を行い、検査数・不良数・寸法値などのデータを自動で記録・蓄積することで、品質管理を大きく高度化できる手法です。

一方、こうしたシステムを導入する側にとっては、「現場に置かれたロボット+非接触センサの組合せが、本当にカタログどおりの精度で測れるのか」を確認する手段が標準化されておらず、システムの信頼性を客観的に検証することが難しいという課題がありました。受入時にどの基準器を、どの位置で、どのように測れば性能を評価できるのか――そのよりどころとなる共通ルールが必要でした。

JIS B 7446-1 は、まさにこの「導入時の性能検証方法」を標準化するために制定された規格です。

制定の経緯

 本規格の制定は、特定企業が保有する先端技術を、業界横断の標準として広めるための「新市場創造型標準化制度」を活用して進められました。提案者であるリンクウィズ株式会社は、3D形状処理エンジンを基盤として、産業用ロボット向けの自律制御ソフトウェアを開発・提供してきた企業であり、製造ラインにおける非接触自動計測の現場知見を強みとしています。同社の提案を受けて、日本規格協会(JSA)が原案作成団体としてJIS化のとりまとめを担い、関係する有識者・業界の議論を経て、2026年2月20日付で制定が公示されました。

 規格化の過程では、ISO等の国際規格における座標測定機(CMM)受入検査の考え方(例:ISO 10360シリーズ)を参照しつつ、産業用ロボット+非接触センサという構成に固有の特性――姿勢変化、センサの視野・角度依存性、ロボットの位置決め誤差――を踏まえた評価フレームの設計が課題となりました。これらを実用的な手順に落とし込んだ点が、本規格の特徴です。

規格の概要:置換測定法とは

 第1部にあたる JIS B 7446-1 は、置換測定法(Substitution measurement)に基づく受入検査の手順を規定しています。置換測定法とは、計測対象物と、校正値が既知の基準器(リファレンス・スタンダード)を、同一の測定システムで同条件のもとに測定し、両者の差から測定誤差を求めて、対象物の測定値を補正する考え方です。

この方式には、産業用ロボット+非接触センサというシステムを評価するうえで、次のような利点があります。

  • システム全体としての性能を評価できる:
    ロボット本体・コントローラ・非接触センサ・治具・ソフトウェアまでを含めた「実運用に近い構成」のまま性能を評価できます。要素ごとの仕様値を積み上げて精度を見積もるのではなく、現場の組合せそのものに対する確からしさを示せる点は、ユーザーにとって大きな安心材料となります。
  • 計測のトレーサビリティを確保しやすい:
    校正済みの基準器との比較によって測定誤差を導出するため、上位の長さ標準とのトレーサビリティの連鎖を保ちやすく、測定値の信頼性を客観的に示すことができます。
  • 受入時に再現性のある手順で評価できる:
    基準器の選定、配置、姿勢、繰返し回数などを規格として定めることで、メーカーやインテグレーター、エンドユーザーの間で共通の物差しを使った受入検査が可能になります。これにより、「うちの現場だけたまたま精度が出ていない」といった水掛け論を防ぎ、トラブル時の原因切り分けにも役立ちます。

期待される効果

 JIS B 7446-1 の制定によって、現場では次のような変化が見込まれます。

  • 信頼性の担保:
    受入検査の手順が標準化されることで、産業用ロボットを用いた非接触座標測定システムの性能を、ユーザーが客観的かつ再現性高く評価できるようになります。
  • 導入のハードル低下:
    「導入してから期待した精度が出ない」というリスクをあらかじめ抑えられるため、ものづくり現場における認知度向上と導入加速が期待できます。
  • 品質管理の高度化:
    ライン上での全数検査と検査データの自動蓄積が広がることで、不良の早期検出や工程能力指数の継続的な把握が可能になり、品質管理は「事後の検査」から「設計と製造の改善ループ」へとシフトしていきます。
  • 省人化と人手不足対策:
    検査員による全数目視・治具計測の負荷を大きく減らし、慢性的な検査要員不足に直面する製造業の現場を支援します。
  • 製造業DXの推進:
    計測データが自動でデジタル化・蓄積されることで、IoT、品質トレーサビリティ、予防保全といった製造業DXの取組みとも自然につながります。

シリーズとしての展望

 今回発行された第1部は「置換測定法」に焦点を当てたものですが、産業用ロボットを用いた非接触座標測定システムには、他にも検証すべき性能指標や運用シナリオが存在します。今後、関連するパートやガイドライン規格の検討が進めれば、対象範囲はさらに広がっていくと考えられます。SQ オンラインでも、続報や関連解説を順次取り上げていく予定です。

非接触での三次元座標測定を、製造ラインの自然な一部として組み込んでいく流れは、いまや「研究段階の応用」ではなく「製造業の競争力を左右する基盤技術」になりつつあります。JIS B 7446-1 が、その地盤を支えるルールとして、現場で活用されていくことを期待します。

参考リンク

執筆者:吹野 剛(Go Fukino)

リンクウィズ株式会社所属。3D形状処理エンジンを核に、産業用ロボットによる自律的な計測・補正・検査システムの企画開発に従事。本JIS B 7446-1 の規格提案・原案作成に企画段階から参画し、製造現場での非接触全数検査の社会実装を推進している。

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