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世界に広がる!日本の温水便座たち - JIS A 4422及びJIS A 4424の改正・制定について

2024/05/21

■ 世界に誇る日本の温水洗浄便座【規格開発の経緯】

世界に誇る日本の技術である温水洗浄便座は、昨今、世界的に普及が進んでいます。とりわけ日本においては、少ないお湯で快適に洗浄できる技術や、便座を瞬間的に温める技術など、世界の一歩先を行く環境負荷低減・省エネ技術を取り入れた製品の普及が進んでおり、今後、日本製の温水洗浄便座の海外への輸出増加が期待されています。

しかしその一方で、海外製の温水洗浄便座の我が国への輸入も予想されています。海外製の温水洗浄便座は、これまで各国の独自の試験方法によって性能を評価していましたが、それでは、温水洗浄便座として使用者が期待する十分な品質を要しているかを適正に評価することはできません。

このような状況を踏まえ、日本の温水洗浄便座の技術の適正な評価に繋げることを目的に、JIS A 4422(温水洗浄便座)の改正が行われました。また、これに加えて、温水洗浄便座の性能について国際的に標準化した適正な試験方法を普及することを目的に、温水洗浄便座の試験方法について定めた国際規格IEC 62947(Electrically operated spray seat for household and similar use - Methods for measuring the performance - General test methods of spray seats)の開発を日本提案で進めるとともに、これを対応国際規格としたJIS A 4424(家庭用及びこれに類する温水洗浄便座-性能測定方法-温水洗浄便座の一般的試験方法)の開発もおこなわれました。

■ 同じ温水洗浄便座でも!!海外と日本の性能の違い

海外と日本では、温水洗浄便座の性能だけではなく、そもそも各性能に対して求める品質にも隔たりがあります。例えば、海外製の温水洗浄便座には自動的に洗浄が停止するものや、貯湯式(温水発生装置の内蔵タンク内で洗浄水を加温し、保温貯湯するもの)の洗浄便座においては、洗浄機能の使用中に洗浄水温度が低下しはじめるものもあります。また便座も温度ムラが大きく、冷たい箇所や熱い箇所があります。また日本では快適な洗い心地が重視される一方で、海外では汚れがよく落ちることが重視されます。

 さらに、欧州と日本では、冬の屋内の温度や屋内への給水温度にも違いがあります。例えばドイツの場合だと、冬がより寒冷で、中央暖房システムが広く利用されており、建物の断熱性が高いため、日本と比較して屋内温度が高いことが一般的です。また、屋内への給水温度に関しても、水管が凍結することを防ぐために、地中での水管の埋設深さが深く、断熱性能が高い建材や技術が使用されることが多いため、建物内の配管を通る水の温度が下がりにくくなっています。一方で、日本は四季の変化が激しく、特に夏の暑さ対策に多くのエネルギーが割かれるため、地域によって、冬の屋内の温度や給水温度に対する考慮が相対的に少なく、トイレの環境温度や給水温度が低いトイレがあります。

■ さらなる品質向上のために 【今回の制定・改正の概要】

今回の規格の制定・改正によって、日本製の温水洗浄便座の環境負荷低減・省エネ技術の適正な評価につながるとともに、粗悪品の排除や日本の高品質な温水洗浄便座の国際市場での優位性を確保することが期待されます。

■ JIS A 4422の改正点

1:洗浄用水の温め方について、使用時に洗浄用水を加温する「洗浄用水瞬間方式」に節湯形か否かのクラス分けを追加。
2:便座の温め方について、便座表面をあらかじめ加温し、保温するものを「便座保温方式」、人が使うことを検知したときに短時間に温めるものを「便座瞬間方式」として区分。
3:操作パネルに用いる便器・温水洗浄便座に関連する図記号(ピクトグラム)は、JIS S 0103(消費者用図記号)によることを規定。

■ JIS A 4424の制定について

1:洗浄機能の品質評価
海外製の温水洗浄便座には自動的に洗浄が停止するもの、また貯湯式洗浄便座においては、洗浄機能を使用中に洗浄水温度が低下しはじめるものがあったため、JIS A 4422: 2011を基にした洗浄水温度の試験方法を規定、さらに安定性、立ち上がり時間、及び温水持続時間の試験方法を追加することで、使用者が快適に洗浄機能を利用できる品質を評価できるようにした。

2:便座の温度ムラ
海外製の温水洗浄便座には、冷たい箇所と熱い箇所で、温度ムラが大きいものがあったため、JIS A 4422: 2011を基にした便座温度の試験方法を規定、さらに、温度ムラ、及び立ち上がり時間の試験方法を追加することで、十分に温かいか、温度ムラなく温まるか、即座に温まるかを評価できるようにした。

3:実使用を想定した性能測定方法
日本では快適な洗い心地が重視される一方で、海外ではよく落ちることが重視されるなど、海外と日本とでは、要求される品質に隔たりがあったので、国際的に標準化された性能測定方法に加えて、日本における実使用を想定した性能測定方法も規定した。

4:日本での冬場の使用を見据えた試験条件
欧州と日本とでは、冬の屋内の温度や屋内への給水温度に違いがあったため、試験条件について、日本での冬場の使用を見据えた環境温度、給水温度に見直しをおこない、環境温度が低いトイレでも快適に洗浄できるようにした。

■ 分科会主査・TOTO株式会社 ウォシュレット品質保証部 主席技師 寺田義郎氏のコメント

JIS規格を制定・改正するにあたって、特に苦労したことが3点あります。
一つ目は、日本から提案した国際規格であるIEC 62947を、どのようにJIS化するのが良いかという点です。かねてより日本では、温水洗浄便座の製品規格であるJIS A 4422に規定されていた試験方法が活用されていました。そのため、IEC 62947のJIS化にあたっては、まず、JIS A 4422との関係をどうすれば良いかという点が課題でした。当初、JIS A 4422の中にIEC 62947の内容を含めることも考えたのですが、IEC 62947を引き続き我が国主導で発展させるうえで、技術的な内容をできる限り変更することなくJIS化したかったこと、またIEC の改訂提案に迅速、かつ柔軟に対応できるようにしたかったので、新たにJIS A 4424(家庭用及びこれに類する温水洗浄便座-性能測定方法-温水洗浄便座の一般的試験方法)の開発を行うとともに、JIS A 4422からは具体的な試験方法の規定を削除し、JIS A 4424を引用するように、二つの規格開発を同時並行で進めることにしました。

また規格利用者にとってより分かりやすい内容にするということが二つ目に苦慮した点です。従来のJIS A 4422(温水洗浄便座)は主に生産者が利用していたため、詳細な試験方法を規定する必要はなかったのですが、IEC 62947は生産者だけではなく、第三者機関(試験所)も利用することが想定される規格でしたので、試験方法が詳細に規定されています。IEC 69247のJIS化にあたっては、できる限り技術的内容を変更することなく翻訳したかったことに加えて、原文の内容を日本の規格利用者にとっても分かりやすい内容にまとめるという点には苦労をしました。

最後に三つ目は、日本市場と欧州市場との間の要求性能の隔たりに対して、どのように対応するかという点に苦労しました。IEC 62947は日本提案で開発した国際規格ではありますが、開発過程で日本の意見が受け入れられなかった点もあります。そのため、それらもそのままJISにしてしまうと、一部の試験方法では日本市場向け製品の性能が適正に評価されないおそれがあることから、それらについては、我が国での実使用に応じた試験方法を新たに追加しました。特にJIS A 4424の「5.4洗浄範囲」及び「5.5洗浄効果」では、欧州の大流量の洗浄製品が優位に見えてしまいます。そこで、「洗浄能力=大流量優位」の構図にならないよう、

① 必要十分な汚れ落ち性能が測れる洗浄範囲の見直し
② 冬場の使用を見据えた洗浄水温度の給水条件の見直し
③ 洗浄流量のクラス分けの追加

など、日本製品の性能が適正に評価されるように工夫しました。今回制定・改正したJISは、各国の規格や指標への要件追加へ提案するための足がかりとして醸成していきたいと考えています。

今回、IEC 62947として温水洗浄便座の試験方法の世界的なものさしをつくり、それをJIS化することは、国際整合化の観点からも、日本で健全に本来の温水洗浄便座を成長させるためにも重要な取組みでした。一方で、上述の課題や、JIS A 4422については前回改正(2011年)から10年以上が経過しているということもあったので、JIS原案作成委員会メンバーである委員長、所轄官庁、関係団体、使用者などのステークホルダーへ、個別に対面で業界案を説明し、ご質問やご意見に対しては一つ一つ丁寧に対応いたしました。その結果もあって、通常のJIS開発の期間より早く公示に至ることができ、温水洗浄便座の製品規格と新たな試験方法のルールをつくることができました。

▼ 温水便座についてもっと知りたい方は こちら(一般社団法人 日本レストルーム工業会公式サイト)




■ おまけ:トイレにまつわるいろいろな規格(カッコ内は原案作成団体)



▼ 一般的なトイレに関連する規格
JIS A 4422 温水洗浄便座(一般社団法人日本レストルーム工業会、一般財団法人日本規格協会 )
JIS A 5207 衛生器具―便器・洗面器類(一般社団法人日本レストルーム工業会、一般財団法人日本規格協会)
JIS C 9335-2-84 家庭用及びこれに類する電気機器の安全性-第2-84部:
トイレ機器の個別要求事項(一般社団法人日本レストルーム工業会、一般財団法人日本規格協会)

JIS P 4501 トイレットペーパー(トイレットペーパーJIS普及会)




▼ トイレにある記号や道具などに関連する規格
JIS S 0103 消費者用図記号(一般財団法人日本規格協会)



JIS Z 8210 案内用図記号(一般財団法人日本規格協会)




▼ 公共トイレに関する規格
JIS S 0026 高齢者・障害者配慮設計指針-公共トイレにおける
便房内操作部(便器洗浄ボタン及び呼出ボタン)の形状、色、配置及び器具の配置(公益財団法人共用品推進機構)



▼ 試験方法に関する規格
JIS A 4423 電気便座の省エネルギー基準達成率の算出方法及び表示方法(一般財団法人省エネルギーセンター)
JIS A 4424 家庭用及びこれに類する温水洗浄便座-性能測定方法-
温水洗浄便座の一般的試験方法(一般社団法人日本レストルーム工業会、一般財団法人日本規格協会)



[日本規格協会]