
【注目JIS】レーザ製品の安全についてのJISを発行しました(JIS C 6802)
2025/08/25
一般財団法人日本規格協会(本部:東京都港区、理事長:朝日弘)は、2025年8月20日にJIS C 6802:2025(レーザ製品の安全-クラス分け及び要求事項)を発行いたしました。改正に至った背景や、改正に伴い期待されることをご紹介します。
JIS C 6802:2025
レーザ製品の安全-クラス分け及び要求事項
Safety of laser products-Equipment classification and requirements
■JIS C 6802はなぜ改正されたのか?
この規格は、波長範囲180nm~1mmのレーザ放射を放出するレーザ製品の安全基準について規定するものです。
この規格の附属書JA“使用者への指針”は、2005年改正時では、対応国際規格(IEC 60825-1:2001 ED1.2)に基づき3章“使用者への指針”(“安全予防策”、“レーザ運転に付随する危険性”、“危機管理の手順”を規定)に規定していた内容です。このJISは、厚生労働省の基発第0325002号(平成17年3月25日)で引用されており、IEC 60825-1では2007年改訂で“使用者への指針”は削除されたが、この重要性から、JIS C 6802の2011年改正では、参考の附属書としてそのまま附属書JAとして記載していました。
この間、IEC 60825-1で削除された“使用者への指針”は、IEC TR 60825-14(Safety of laser products - Part 14: A user’s guide)に移行し2004年に第1版として発行されました。JIS C 6802の2014年改正では、利用者の便宜を図るため、JIS C 6802:2005に記載していた“使用者への指針”をJIS C 6802:2014のクラス分け規定との食い違いがないようにだけ修正して、JIS独自の附属書として記載した。IEC TR 60825-14:2004の反映は、当時のJIS C 6802:2014と整合がとれていなかったため、IEC TRの改訂作業を待つこととしていました。
その後、IEC TR 60825-14の改訂作業が進み、作業場の安全性向上のための訓練及びレーザ安全管理者の指名等の加筆、リスク評価方法の更新等を行い、2022年にED2として発行されました。これを受け、産業界だけでなく消費者にもレーザ製品が安全に使用されるよう、実態に即した内容にJISを改正する必要があります。
■JIS C 6802の改正に期待されること
レーザ製品の“使用者への指針”の最新の国際標準であるIEC TR 60825-14:2022をJISに取り入れることで、厚生労働省の基発における引用を容易に行うことができ、業界の混乱を避けることが期待できます。さらに、最新のクラス分け規定に基づいた計算例を充実させることによって、規格利用者の理解が促進し、商取引が加速して市場のさらなる拡大が期待できます。
主な改正点は、次のとおりです。
①作業場の安全性向上のための訓練及びレーザ安全管理者の指名等を追加する。
②リスク評価方法(事故管理のガイダンス、レーザ従事者のための医学的監視のガイダンス等)を更新する。
③レーザ管理区域用インタロックシステムの例を、参考として追加する。
④使用者のための最大許容露光量(MPE)を中心とした計算例を、参考として追加する。
これらを踏まえ、“使用者への指針”の記載内容を次の構成に改める。
・一般事項
・運営方針
・レーザ放射の危険性
・最大許容露光量の特定
・付随する危険性
・リスクの評価
・管理対策
・安全な運転の維持
・緊急事態対応計画
・インシデント報告及び事故調査
・医学的監視