
【JIS改正】強い、軽い、燃えにくい!建築物になくてはならないALCパネル:JIS A 5416 改正のポイント
2025/06/04
建築物の外壁や床材として広く普及している軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)の日本産業規格(JIS A 5416)が、この度改正されました。本記事では、ALCパネルとは何か、なぜ今回の改正が必要だったのか、改正によって期待される効果について解説します。さらに、本規格の原案作成を担ったALC協会様の活動や、標準化にかける思いについてもご紹介します。
もくじ
■【ALCパネルとは?その特長と建築物における役割】
■【なぜ今、JIS A 5416は改正されたのか?】
■【JIS A 5416 改正のポイント:品質評価と試験方法の変更】
■【改正されたJIS A 5416に期待される効果】
■【標準化を支える力:ALC協会とは -60周年を迎えて-】
規格情報
■【ALCパネルとは?その特長と建築物における役割】
石灰質原料及びけい酸質原料を主原料とし、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリートに鉄筋などの補強材を埋め込んだ、主に建築物に用いられるパネルのことです。軽さと強度、断熱性をあわせ持ち、現代建築に欠かせない建材として位置づけられています。
例えば、軽量性や耐震性は高層マンション、耐火性は物流倉庫で特長を発揮し、万が一、地震や火事などの災害が発生した際には、その重要性を再確認できるでしょう。

ALCパネル内部のイメージ画像(左:厚型パネル 右:薄型パネル)
(画像提供:一般社団法人 ALC協会様)
■【なぜ今、JIS A 5416は改正されたのか?】
断熱性能試験に関して、高価かつ熟練を必要とすることから、現在規定されている方法と相関性のある合理的な試験方法に改正する必要がありました。また、最近のパネルに対する意匠的なニーズの高まりから、測定法の改正が必要となっていました。
■【JIS A 5416 改正のポイント:品質評価と試験方法の変更】
主な改正点は、次のとおりです。
- 断熱性能において、見掛けの熱伝導率に改正し、その試験方法を従来の方法は熟練を要することから、JIS A1412-1(GHP法)及びA1414-2(HFM法)を採用する。なお、従来からの方法も附属書Aにおいて見掛けの熱伝導率を求められるよう措置する【5.2.4,9.4.4及び附属書A】。
- 最近の使用実態にあわせ、厚形パネルの用途を一部改正する【4.1】。
- 最近の製造実態にあわせ、意匠パネルの種類にエンボス模様を追加し、新たに厚さの測定方法(有効厚さ)を規定する【6.1,6.1,6.2,9.8】。
- 埋設部品の引き抜き試験装置のA法及びB法について、その結果は同様に使用できることを規定する【附属書B】。
■【改正されたJIS A 5416に期待される効果】
今回の改正によって、品質の明確化、生産・品質管理及び使用の合理化に寄与することが期待できます。具体的には、新しい評価方法や測定方法により、ALCパネルの性能や仕様がより客観的かつ正確に評価できるようになり、それは製造現場の効率化やコスト削減にも繋がります。
また、不定型デザインの標準化が可能になったことは、設計者にとってALCパネルの意匠パターンを増やすきっかけとなります。それにより、ユーザーは様々なALCパネルの中から、より意匠を考慮した製品選択が可能となります。


共同住宅のALCパネル施工事例(左:共同住宅 右:割石調のALCパネル拡大)
(画像提供:一般社団法人 ALC協会様)
■【標準化を支える力:ALC協会とは -60周年を迎えて-】
一般社団法人ALC協会は、「ALC製品」の生産、販売及びその関連事業の健全なる発展と施工スキル及びマネジメント能力の増進を図り、わが国の産業の発展に寄与することを目的として活動している団体です。JISの原案作成団体として、製品の標準化にも取り組んでいます。ALC協会様はこのたび設立60周年を迎えるということで、お話を伺いました。
JSA:
今回のJIS改正において、原案作成機関として特に意識された点は何ですか?
ALC協会:
ALC製品の根本はこの規格なので、古いままではなく、時代に合わせて規格を新しくすることで、ALC製品を発展させるという意識で改正作業にあたりました。
また、意匠という、不定形の扱いを探っていくところに苦労がありましたが、様々な利害関係者と協力し、時間をかけて対応しました。
JSA:
ALC協会様が日本の建築業界において果たしている役割について教えてください。
ALC協会:
JIS A 5416の原案作成を担いALC製品の標準化活動に取り組むほかに、メーカー各社とともに取付け構法の開発・標準化に取り組んでいます。JASS(建築工事標準仕様書)をはじめとしたALCパネル取付け工事の標準化にも関わっています。
また、登録ALC基幹技能者の講習実施機関として国交省に登録されており、キャリアアップを目指す建設技能者を支援しています。
JSA:
60周年を迎えたALC協会様が今後、持続可能な建築社会の実現のために描くビジョンは、どのようなものですか?
ALC協会:
ALC協会として、今後70、80年経ってもALC製品を選択していただけるように、社会環境や経済情勢の動向に合わせて対応できる仕組みづくりに取り組む必要があると感じています。エネルギー問題やカーボンニュートラルへの対応は、会員個社の取り組みにはなりますが、国交省や経産省の方針を聞きながら、業界の取り組みをとりまとめ、啓蒙していきます。また、建設業に限りませんが、人材不足・人の育成にも対応しなければなりません。
ALCパネルは60年以上、継続して使われている製品です。建材などは50年経つと衰退し、新しいものに変わっていきますが、これだけ長い年月続いているということは、ALC製品に良いところがあり、理解されているということだと思っています。だからこそ、これを絶やさないよう、時代に合わせてアップデートをし続け、今後も取り組んでまいります。
規格情報
JIS A 5416:2025
軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)
Autoclaved lightweight aerated concrete panels
税込価格:4,840円 A4判 62頁
※規格類は価格が変更される場合がございます。ご了承ください。
(担当部門:日本規格協会 産業系規格開発ユニット 土木・建築・機械系規格チーム)