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第1回JIS Y 2001の概要

JIS Y 2001(貸出福祉用具のメンテナンス工程の管理に関する一般要求事項)制定にあたって

第1回
JIS Y 2001の概要

1. はじめに

 福祉用具は、とっさの対応が難しい、筋力や体幹バランス的に弱いとされる高齢者や、身体障害者が使用する用具であるがゆえに、健常者が使用する機器に増して、安全性の確保について重要性が高いことは言うまでもない。

 福祉用具に関する事故情報は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が公表している事故情報で確認することができるが、その事故原因にメンテナンスに関する内容が増えてきているように見える。
 福祉用具に関する事故要因については、使用方法などに起因するヒューマンエラーが大半であり、次いで製品自体に起因するマシンエラーが主流であったが、近年不適切な部品交換やメンテナンスを実施する者の力量不足としか考えられない内容が増えてきている。

 福祉用具使用者が、身体障害者が主であった時代は、メンテナンスの対象となる福祉用具は、使用者自身の身体状況や寸法に合わせたオーダーメイドであったことから、メンテナンスに関しては製造業者が行ってきたという歴史がある。しかし、介護保険制度による福祉用具貸与という仕組みができたことによって、大きな市場に対する多くの企業参入により、「オーダーメイドを製造業者がメンテナンス」という流通ルートから、「既製品を製造業者以外がメンテナンス」という流通ルートが、一気に加速した。

 メンテナンスに関する事故要因には、製造業者以外の手によって、メンテナンスが施されることによって、製造業者が想定する安全性に満たない状態で、出荷及び使用されていることがあげられる。

本規格(JIS Y 2001)は、福祉用具流通の大きな市場となっている、レンタルという流通形態において、流通総量に対応できない製造業者への規制ではなく、 メンテナンスを行い、貸し出しを行っている事業者が、使用する上で安全性に問題がない福祉用具を貸し出すために必要な要件を、要求事項としてまとめたものである。


図1:貸出福祉用具の流通体系

2. 貸し出される福祉用具の安全は、何をもって担保されるか

 そもそも、福祉用具は工業製品である以上、強度や安定性や耐久性などが必要である。これは、それぞれの福祉用具で、JIS T 9201(手動車椅子)のように、品質基準とその試験方法が定められた規格が存在するため、この規格による試験を実施し、要求事項に適合していれば、工業製品としての安全性が担保できているということができる。
 しかし、福祉用具は、健常者が使用する用具ではないことを踏まえると、人体寸法や使用環境との適合が不可欠の用具であり、この適合判断が必要となるが、これに対しては、福祉用具専門相談員などの専門的知識を持った職種がその判断を担っている。
 最後に、福祉用具が貸し出されるという流通体形において、新品を使用するとは限らず、むしろある程度の経年劣化や消耗備品の摩耗などが起こっている状態が一般的であることを踏まえると、継続使用の安全性の可否判断や、消耗部材の交換などのメンテナンスに関する安全性が重要となるが、本規格の制定までは、この部分についての指標が存在しなかった。

 JIS Y 2001は、製造業者以外の手によって行われるメンテナンスの工程について、安全であるために必要と考えられる様々な要求事項をまとめた。貸出福祉用具の流通市場において、企業の新規参入を含め、事業者が指標とすることで、「貸し出される福祉用具が安全に使用できる社会」に寄与するものとして、有効活用できる内容となっている。


図2:メンテナンス作業工程の管理のJIS化

3. 貸出福祉用具やメンテナンス事業者の定義について

 オーダーメイドの福祉用具の場合も、当然ながら、継続した使用においてはメンテナンスが必要だが、使用する個人に適合させることに特化した形状や構造であることを踏まえると、このメンテナンスに関しては、マニュアルに従ったメンテナンス工程で対応できることが少ないと考えられる。また、複数の異なる使用者にわたることも基本的にはあり得ないため、この規格で対象とする福祉用具にはオーダーメイドの福祉用具は含まないこととした。

 また、「メンテナンス事業者」という言い方は、メンテナンス作業を対価を得て事業として行っている組織だけに限定した受け取り方にしてしまう可能性がある。そのため、実際の使用環境である施設や病院、公共機関の備品など、貸し出すこと自体を無償で行っている組織が対象外であるような受取られ方をしないようにするため、「メンテナンスを行う組織」という表現を使用することとした。

 その他、メンテナンス実務者やメンテナンスマニュアルなど、本規格を活用するために使用している特有の語句があるため、用語及び定義を熟読してもらいたい。

【執筆者】
西山輝之(にしやまてるゆき)
1970年大阪府生まれ、龍谷大学法学部卒。一般社団法人 日本福祉用具評価センター(JASPEC)事業部部長。
介護保険制度施行以前より、福祉用具専門相談員として従事。福祉用具貸与事業所管理者、福祉用具卸(販売・貸与・メンテナンス)業の関西支社長職を経て、現在、JASPECの研修事業並びに臨床評価事業に従事。
・車いす安全整備士養成講座運営主幹、座学実技講師
・経産省受託事業:ロボット介護機器コンソーシアム安全ワーキング参加、人体型ダミー開発、ロボット介護機器評価表作成
・文科省受託事業:リカレント教育プログラムの開発「介護における車椅子シーティングに関する技術習得のための分野横断型リカレント教育プログラムの開発」委員参加及びメンテナンステキスト作成
・JIS Y2001原案作成委員会事務局主担当

福祉用具関連規格・書籍
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