project story
AIリスク研究会プロジェクト

ルールなきAI時代に
信頼できる標準をつくりだす

急速に進化するAI技術のリスクと倫理に挑む、
日本規格協会の「AIリスク研究会」。
ルールが未整備の不確実な時代において、
なぜこの挑戦が可能だったのでしょうか。
未来を切り拓く3名のメンバーが、
その舞台裏と日本規格協会ならではのロマンを語り合います。

members

AIリスク研究会プロジェクト
K.I
研修事業部 研修チーム 課長

2005年 新卒入職

AIリスク研究会プロジェクト
T.Y
研修事業部 研修チーム

2024年 新卒入職

AIリスク研究会プロジェクト
T.N
研修事業部 研修チーム

2026年 新卒入職

AIリスク研究会プロジェクト

STORY 01

日本企業のために、
不確実な領域に挑む

T.N
今私たちが取り組んでいる、「AIリスク研究会」はどのようにしてはじまったのですか?
T.Y
数々のAIツールの登場以降、AI技術は急速に進化し、各社で利用される時代になりましたよね。ですが、非常に有用な一方で、多くのリスクも潜んでいることから、AIを使いたくてもそのリスクがよく分からず利用できないという企業様の声が増えてきたと聞きました。
K.I
そうですね。世界中で予期せぬトラブルが起こっていますし、日本の多くの企業が、AIを業務に導入したいけれどリスクにどう対応すべきか具体的な方法が分からず、利活用に踏み切れない課題を抱えていらっしゃいました。技術の進化が早すぎて、世界各国でも法的な規制やガイドラインの整備が追いついていないのが実情です。
T.Y
そこでまず、AI周りのルールを把握して周知する説明会を企画し実施しました。
K.I
その際には、内閣官房 内閣審議官・イノベーション推進事務局の方をお招きし、また、国立研究開発法人産業技術総合研究所の方に加え、AIマネジメントシステムの認証を開始するにあたり認定を行う一般財団法人日本情報経済社会推進協会の方、大阪大学社会技術共創研究センターの方、事例紹介としてNECの方などをお迎えしました。
T.N
そうそうたる方々に登壇いただきながら、企業様に向けての説明会を実施されたのですね。
T.Y
その説明会に参加された企業の方々の反応がよく、そこからAIに対する課題を解決するためにはどうすればよいかということで、研究会が本格的にスタートしました。
AIリスク研究会プロジェクト

STORY 02

前例なき「人文科学の産学連携」で
ハブとしての役割

T.N
AIリスクを正しく理解し排除できれば、積極的な利活用につなげられる。そうした活動を後押しすることが、社会的にも強く必要とされていたのですね。お二人がこのプロジェクトに関わることになったきっかけは何だったのですか?
K.I
私たちの研修事業部は当協会の中でも特にお客様との距離が近く、抱えるお困りごとを直接お聴きできる立場にいます。お客様がAI利用について困っていらっしゃる声を聞き、まずは世界的な規制動向や国際規格を解説する説明会を自主的にプランニングしたのがはじまりでした。AIが当たり前になる世界で、日本の産業競争力を高め、企業が世界で戦っていくために我々ができることは何か、という強い想いがありました。
T.Y
私は2024年に入職したのですが、この研究会を本格的に動かしていくタイミングで声をかけていただきました。入職してすぐにこのような最先端で社会的インパクトの大きいプロジェクトのスタートラインに関われたことに、とてもワクワクしたことを覚えています。
T.N
私は当協会が持つ強力なネットワークや人脈に惹かれて入職したので、配属後すぐに様々なプロフェッショナルな方々が集う議論の場に同席できたのは本当に嬉しかったですし、仕事のロマンを感じるきっかけになりました。研究会を進めていく上で、特に難しかったことなどはありますか?
T.Y
私たちの主な役割は、何と言っても「研究会事務局」として、関係する多くの方々をつなぐ「ハブ機能」を担うことでした。AIリスクについては、AIを開発する立場、提供する立場、あるいは利用する立場で、それぞれ捉えるべき課題やリスクの側面がまったく異なります。だからこそ「誰のための研究なのか」という活動の方針が常にブレないよう、全体をマネジメントすることに注力していました。
K.I
その中で、今回のプロジェクトにおける大きなハードルは、やはりこの研究会が「人文科学分野の産学連携」という、他に類を見ない極めて先進的な取り組みだったことです。しかも、AIという人類がまだ経験したことのない新しい技術を扱うため、「そもそもどのようなことからはじめるのがよいか」という議論のスタートラインを揃えること自体が、最初の壁でした。
T.Y
本当にそうでしたね。研究会にはIT分野のリーディングカンパニーをはじめ13の企業に参加していただきました。日本を代表するような様々な業種のトップランナーの方ばかりで、それぞれに異なるバックグラウンドを持つからこそ、出てくるご意見はどれも非常に示唆に富んでいました。それゆえに「研究の対象をどこにするか」「どのレベル感で議論を進めるか」については、当初、意見が分かれることもありました。
T.N
それほど多種多様なプロフェッショナルの方々が持つ意見を、一つの方向にまとめるのは並大抵のことではないと思います。どのように乗り越えたのですか?
T.Y
研究会を本格的にはじめる前に、あらかじめ「運営委員会」という骨組みをつくり、参加いただくメンバーの方々から事前に意見を細かくヒアリングしました。その事前調整を行った上で、それぞれの会員同士が直接しっかりと議論できる時間と場を必ず確保するよう心がけました。
K.I
また、議論が分かれた際にも、「日本の企業で、実際にいま一番困っている具体的な課題を取り上げよう」と全員で原点に立ち返ることで、目線を揃えることができました。「日本の産業のために、自分たちの手で新しい信頼のルールをつくっていくんだ」という共通の志を醸成できたことが、最大のブレイクスルーだったと思います。
T.N
当協会が中立的な立場で議論の土台を整えながらも、主体性をもって、全員が共通の志で議論できる場を成立させていったのですね。
AIリスク研究会プロジェクト

STORY 03

業界のトップたちが紡ぐ熱意と、
信頼が生んだコミュニティの力

T.N
この一大プロジェクトを進める中で、お二人が「特に印象に残っているエピソード」があれば教えていただけますか?
K.I
私は、プロジェクトの起点となった最初の説明会も含めて、信じられないほど豪華な有識者の方々をお招きできたことです。これは日本規格協会が長年の活動を通じて築いてきた信頼や、官公庁との深いコネクションがあったからこそ実現したものだと確信しています。
T.Y
これだけの権威ある方々を最初からお呼びできたのは、まさに日本規格協会ならではの強みですよね。
K.I
研究会の後に毎回開催した「懇親会」も忘れられませんね。参加された方々が、それぞれのリアルな悩みや課題をざっくばらんに共有し合えたことで、非常に有効なコミュニティとして機能しました。
T.Y
私が印象に残っていることは、AIガバナンスや倫理の第一人者の方々と共に議論を進められたことです。最新技術で価値を創造しつづけるITリーディングカンパニーから、慎重なガバナンスが求められる公的メディアまで、性質の異なる組織の専門家たちが、同じテーブルを囲んでそれぞれの課題感を共有し合いました。これまで世の中に答えがなかった「AI×リスク×倫理」という未踏のテーマに対して、第一人者の方々と共に議論を重ね、方向性を形づくっていったプロセスそのものが、私にとって大切な財産となりました。
T.N
私もやはり、同席させていただいたときの光景が脳裏に焼き付いています。各企業のリーダーたちが自社の利益の枠を超えて、日本の産業全体がAIを安全に使えるようにするために、もがきながらリスクを洗い出そうとディスカッションをしておられました。そのプロとしての真摯な背中を目の当たりにした瞬間、言葉にできない衝撃を受けました。「これほど社会的に大きな影響を持つ仕事が、日本規格協会にはあるんだ」と、圧倒されたのを覚えています。
AIリスク研究会プロジェクト

STORY 04

AIの可能性を企業の力にしていく

T.N
今回の研究会によって、社会やAIを利用する企業には、どのような価値が生まれたのでしょうか?
T.Y
一番の成果は、AIを提供する企業が事前にリスクを抽出し、倫理観を持って評価できる実践的な「フレームワーク」のプロトタイプを提案できたことです。
K.I
AIリスクを単なる「ブレーキ」として捉えるのではなく、事業をより安全で快適に進めるための「ハンドル」や「アクセル」に変える道標をつくれたことは、社会にとっても非常に大きな価値があるはずです。
T.N
なるほど。では、なぜ日本規格協会だからこそ、この前例のないプロジェクトをやりきることができたのでしょうか?
K.I
それは、当協会が特定の業界に偏らない「中立な立場」だからです。競合関係になり得る企業や官公庁、大学の第一人者を同じテーブルに集められる「信頼のハブ」として機能できると自負しています。多様な知見を自由に組み合わせて、社会に真に必要な価値を生み出しています。
T.Y
そこに「規格に関わる仕事」ならではの魅力もありますよね。規格は使っていただいてはじめて本当の価値が生まれます。こういった研究会をきっかけに、規格やマネジメントシステムが日本中の企業に浸透し、企業の成長や変革につながっていく。「品質」に本気で向き合うビジネスパーソンの方々と伴走できることが、この仕事の最大のやりがいです。
T.N
私も一流のプロフェッショナルの方々と共に活動する中で、自分自身を内面から成長させてくれる環境だと感じました。
K.I
当協会は80年以上にわたり、「標準化」と「品質管理」を通じて日本の産業を支え続けてきました。私たちが手がけるこの2つの領域は、常に時代の先手を打つ、非常にアクティブな活動です。だからこそ、科学・技術全般への旺盛な好奇心と、失敗を恐れず新たな一歩を踏み出す挑戦心を持った人が輝ける職場です。
AIリスク研究会プロジェクト